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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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シルバーメタリックドラゴンの悟り修行

クローバー代理人は画面向こうの青年、クローバーに視線を向ける。

そんなにヒントを与えて良いのか、という懸念を含めた視線だ。

しかしクローバーは画面向こうで穏やかな笑みで、これから起こる激動に呼吸を整える。


『僕の正体より大事な物が目の前にあるんだ。これくらい安い物さ』


そういうものかと代理人は改めてパソコンへ向かう。

玄武明良に必要な物揃えるように園内放送して欲しいと頼む。

その間に必要なプログラムと計算式を用意していく。

代理人は全部救えるとは信じていない。間に合わない可能性の方が大きいだろうと冷静に物事を見つめている。

しかし必死に動く子供達や協力する大人達の言葉が無駄だとは思わない。

救えないから何もしないのと、救えなくても全力で取り組むこと。

そんな基本的な違いくらいは理解しているからだ。

生きることは無駄の塊だということすら愛おしいと代理人は考えるだけで言葉にはしない。

今最優先で行うべきことは口を動かすことではなく、手を動かすことだと理解しているから。




マスターが背後にいる青頭千里に目も向けず、キーボードを叩いていく。

しかし作業を続ける背中は不満を零すような不穏な空気を漂わせる。

馬鹿にして勝てたと思った矢先の小者な悪意による些細な作戦勝ちを突きつけられた。

それはプライドという、マスターからしてみれば強化ガラスのようなものにひびを入れた。

確固たるそれにひびを入れられたマスターはずっと不機嫌なまま青頭千里には目を向けない。

青頭千里からすれば臍を曲げられた猫を相手にしているようで、仕方ないからご機嫌取るかと手を打つ。

スーツのポケットから手の平に収まる筒状の発信機を取り出す。ボタンが十二あるそれの内、上から一番目のボタンを押す。

するとジョージ・ブルースと通信していた機械から激痛で飛び跳ねるような音と声にならない絶叫が迸る。

目を丸くして作業の手を止めたマスターは、やっと青頭千里を振り返る。


「僕は青い血の長だよ?全員を掌握できる秘策は持っているつもりさ」


ウィンクをして筒状の発信器を改めてポケットに戻す。何度も使えないけどねと一言添える。

暴れる音の後、ジョージ・ブルースのパソコンと繋がっていた通信が力任せに切られる。

おそらく配線かなにかを物理的に切って使えないようにしたのだろうと推測できる。

非難を込めた目でマスターは青頭千里を睨む。


「もっと早く使えよ、人外」

「これも使いどころが難しくてね。相手が完璧に油断してないと無理…勝利に酔いしれてない限りね」


合戦中はジョージ・ブルースも気を張り巡らせて卑劣な作戦を立てていた。

もちろんその間は邪魔されないように警戒もしていた。

その間は使えないと青頭千里は適当に説明をつける。

本当かどうか判断を決めあぐねるマスターはあとで追及してやると心に決めて、作業を再開する。

ジョージ・ブルースは数時間は動けないと、青頭千里は説明を付け加えながら言う。


「だから早く全部救って見せてよ。僕は君達のその意思に勝利を賭けたんだから」






玄武明良は園内放送で四体のロボットを集めるように指示。

また龍ロボット体内に収納されているであろう棺桶摘出のために、解体作業を同時進行しろと伝える。

キッキが顔面蒼白になりドリル片手に龍のロボットへと向かっていく。

その後を頭痛がおさまった子供達、電車内に避難していた子供達の順で追いかけはじめる。

ゴーレムロボットのレムは花の妖精のような姿だったフローゼを姫抱っこして追いかける。

竜宮健斗は慌てて走ってきたキッドの話を聞いて、セイロンを急いで探し出して確保する。

そして相川聡史と一緒に走り出す。目指すは動きを止めたメタリックシルバーの龍。





龍のロボット、元はピエロだったロボットは緊急停止によりCPUは動きを止めていた。

CPUはロボットからすれば人間の脳と同じである。だから停止している今は思考できるはずがない。

また思考できたとしてもその内容はAliceに上書きされた破壊衝動のみ。

どうにもならないほど記憶も記録もデータも改竄されたはずだった。




一つのファイルが自動展開し、改竄されたデータをさらに上書きしていく。



上書きしていくデータはピエロが持っていたデータそのものだった。

造り上げられた日から遊園地を運営するため働き続けた日々。

お客様への対応や同じ職場で働くロボット達とのコミニュケーション。

ルールに縛られて何が間違いか分からなくなるキッキに何も言えない自分。

全部消えたと思っていたデータが復元されていく。

その横でピエロの知らないデータも混じっていく。


夕闇混じる空がマジックアワーということ。

電車の中で窓向こうからそれを眺めてはしゃぐ幼いキッキの姿。

蜜柑を渡してくれた老婆の笑顔。

光溢れる夜の遊園地、手を繋ぐ体温の高さ。

はぐれたキッキを必死に探して周囲を見回す。

スタッフに案内されて指定された場所に向かえば泣いて抱きついてくるキッキ。

今度はさらに強く手を繋いで出口へ向かう。


そうか遊園地には出口があるんだと、ピエロは今の歪んた遊園地を思い出す。

出口はなくて入ってきた子供達が永遠に遊園地に住めるように改造してきた。

夢のような場所なんだから、覚めなくてもいいじゃないかと言わんばかりの姿。

しかしピエロは少しずつ稼働していくCPUを感じながら、こう思考する。


覚めない夢なんて死んでると同じじゃないか。だから起きたい、動きたい、例えどんなに酷い現実が待っていてもいい。

その現実にしか手に入らない物があるんだって大切なオーナーであるキッキに伝えたい。










<k…i、oー、ナー…キッキオーナー?>








まず視覚情報を得る機器から受け取った情報を認識。

いつもより視界が高い情報を得る。というか高すぎると次に驚愕する。

体を動かそうとすると下から制止する小さな声が聞こえた。

その声はずっと聞きたかった人物の声で、軽く首だけを動かそうとした。


<キッキオーナー?私は一体…>

「その機械音声はぴ、ピエロ!?ああ、待って動ないで!!今の君は少し動くだけで何でも踏みつぶせちゃうんだ!!!」


耳の良いキッキは機械音声だけで龍のロボットをピエロと判断できた。

しかし周囲にいた子供達はこの巨大なロボットがあの陽気なピエロのロボットとはすぐに結び付けられなかった。

またピエロのロボット自体もまさか自分が龍という馬鹿でかい体になっているとは知らず、体を動かそうとする。

それを見てキッキがモグラロボットのモグリに頼んで、近くにいすぎる子供を避難させるように指示する。


<ピエロ…その、大変言いにくいんだけど…今の貴方はいつもの体じゃないのよ>

<なんていうか…遊園地破壊するための龍のロボットになってて…>


レムとフローゼの通信を受け取り、その内容に思考稼働が一瞬止まったのではないかと錯覚する。

しかしそれなら今の高すぎる視界や先程のキッキの言葉にも納得がいく。

いつの間にそんな風になったのかと思い出そうとするが、ある瞬間からデータが途切れている。

管理室の映像データを確認しようと通信した瞬間から、データが多大に消えている。

一体なんなんだと混乱するピエロだが、動くと危ないことが理解できたので体の動きを止める。


「し、しかしこれだけ巨大だと…下手に解体したらバランス崩して倒れるよ…」

<か、解体!?ちょ、動けないところに不吉な単語が聞こえてきたんですけど!?>

<てやんでぇ…ピエロさん、あんたのこと忘れやせんぜ…>

<その口調はモグリだな!?なにお客様の前でその口調を…というか不吉を上乗せするな!!>


動けないことは理解できても、聞こえてくる会話の内容に動揺は隠せない。

ピエロは誰かこの状況を説明して欲しいと通信を不特定多数に送るがかんばしい答えは返ってこない。

しかもなぜか通信先が増えていて、帽子屋やチェシャ猫とかふざけてんのかと何故か怒りが湧いてくる。

その間にも体の触覚センサーが巨大な体に触れる手を感知する。

手の動きからすると探っているようで、本当に解体されるのかとロボットの体なのに冷や汗が出そうだと思ってしまう。

精密な人工知能も考え物だと思考が彼方に逃避しかけているピエロは、ただただ動かないように静止しているしかなかった。


「おにいちゃん、あのロボットさんこわされちゃうの?」

「ま、万結ちゃん!本人の前では本当のことでもそういうことは言っちゃ駄目だよ!!」

<…あのー、誰でもいいから説明をぉおおおおおおお!!>


ピエロは渾身の叫びを放った。

しかしその声は遊園地中に響き渡り振動となる。

その振動で天井が揺れてビーム砲で壊された壁の一部が剥がれ落ちる。


「………とりあえず今の君は危ないことを理解して欲しいかな。あとでちゃんと説明するから」

<す、すいません…>


破壊音が聞こえ、自分の声の大きさを確認したピエロはあまり深く考えないように悟りを開こうとしていた。






玄武明良はパソコン片手に管理室から飛び出る。

その後を扇動美鈴は追う。もう現場で動いた方が効率的だと判断したからだ。

大体の説明はクローバー代理人から聞いており、多くは信じられない話だった。

だがアニマルデータから始まった事件の数々で突飛なことに対応できるようになった。

信じられないからと理解を拒否すれば、手遅れになることがたくさんあった。

全部救うと決めたなら、それは全部信じると言ってもいいはずだと自分に言い聞かせる。

スタッフルーム通用口から飛び出てすぐに投網とトリモチで動けないドラム缶型のロボットがいた。

しかし今はそれどころではないと無視して横を通り過ぎる。

運動は苦手なのであまり速度は出ないが、息を荒げながらも全速力で走る。

走っている間は思考が上手く働かないので、少しでも早く現場に辿り着くことだけを念頭に走る。



ドードー鳥は絵心太夫と時永悠真、チェシャ猫は竜宮健斗と相川聡史を迎えに移動した。

帽子屋はなぜか崋山優香の傍でまた飲めないお茶を飲む動作して零しまくっていた。

緊張と恐怖で精神を削られまくった崋山優香にはそれに対するツッコミができない。

おぼつかない足取りでキッキ達がいる方向へ向かう。竜の体を沿うように行けばすぐにたどり着けるであろう。


「こ、今後一切貴方の作戦なんか聞かないわ…」

<作戦でなければ聞いていただけるのですね、わかります>

「…揚げ足どりしないで…」

<ぶっふぅ!!私の足は揚げてないですし、貴方の足も揚げてないのに揚げ足とかっはははははははは!!>


もうこのロボット嫌だと思いながら歩いている最中、視界の端に違和感を感じ取る。

立ち止まって龍の胴体、歩行のために地面に接近するいわゆる腹の部分。

ある一部分だけがシルバーではなくガラスのように透き通っているのだ。

気になって体を屈めて僅かに浮いている腹の下を四つん這いで進む。

すると確かにガラスの部分があり、人が一人入れるケースのような部分があった。

ケースには見覚えがあり、それはガラスの棺桶で中には眠っているキッキによく似た少年。

ベルトで固定されて龍の体が動いても棺桶の中で眠っている体が動かないように固定されてはいる。

しかし元から白い肌がさらに白く、いやむしろ青白く生気のない色になっている。

崋山優香は把握してすぐさま甲高い叫び声を上げた。


その声を聞いて悟りを開きかけているピエロは、天上にあるといわれる黄金の光を垣間見えた気がした。

何事にも動じない悟りを開きかけているロボットをよそに、キッキ達は声がした方向へと走りだす。

竜宮健斗達も声の方に目標を変え、走り続けて震える足を叱咤して更に速く走る。

全部救うの最終段階、最後の対象であるキッキの兄が眠るガラスの棺桶に全てが集まり始める。


しかし少年は一向に目を覚ます気配はない。意識すらその体の中にはない。

体から切り離された意識はデータとなってAliceの中に混じり込んでしまっている。

混じった意識の中で少年は少しずつ自己を無くし始める。もうAliceか少年か境目すらなくなっている。

それでも混じったデータの中で少年は軌跡を残した。その軌跡は確かにキッキ達を助けた。

一緒に戦ってくれていたことを、今はまだ誰も知らない。本人だって自覚があるかどうかすら分かっていない。


それでも弟を守りたいという心が、どこかで息づいていた。

対照的に体の呼吸自体は弱まりつづけていた。もう手遅れなほどに。


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