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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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ドードー鳥重力疾走

鞍馬蓮実とレムがまさに腕相撲を始めている最中の別の場所。

博物館のその前、丸いカプセル薬を半分にしたようなガラスケース。

その中に旗があり、ケースの上には卵を守るようなドードー鳥と思われるロボット。

思われると言うのはドードー鳥というのは決して鷹には似ていなかったはずなのである。

なのに守るように鎮座しているドードー鳥は猛禽のような鋭い目に嘴、そして大きな体をしているのだ。

無駄に精巧なその作りに、ロボット言われなければ怪鳥として信じてしまいそうな程である。

明らかに攻撃的な体に、完璧に守護すると言わんばかりのカプセル。

それを物陰から見ていた時永悠真は溜息をついて、思わずに額に手をやる。


「これは予感してなかった…一番の最悪くじ当てたんじゃない?」

「なにを言う!最悪とは大当たりという意味だぞ!?まさにヒーローとして、いや主人公として最高のシチュエーションだ!!」


項垂れる時永悠真とは反対に生き生きし始める絵心太夫。

それにつられて鹿のアンドールであるタイラノが見せ場と書いて逆転劇という。

しかしすぐに梟のアンドールであるロロがお馴染の却下を繰り出す。

絵心太夫はゴーグルを首から顔に移動させ、眼鏡をかけるように自然に装着する。

それは気合を入れたようで両腕をぶん回しながら、準備体操らしき行動をする。


「悠真、タイラノとルルで旗を取ってくれ。俺はあの鳥を相手にする」

「はぁ?ちょ、いきなりそんなこと言われても作戦とか嫌な予感しかしないとか…」

「では行ってくる!!主人公の活躍をその目で見届けるがよい!!!」


話を最後まで聞かずに絵心太夫は旗に向かって走り出す。

正確には旗を待っているカプセルの上に鎮座しているドードー鳥に向かってだ。

なぜか嬉しそうに走ってくる絵心太夫に警戒のような超音波に近い鳴き声を出して威嚇する。

しかし絵心太夫は一歩も止まらずに踏み出し、飛びつくようにジャンプしてドードー鳥の足を掴む。

物陰で超音波から耳を守っていた時永悠真は、なんて無茶をするんだと呆れかえる。


<小僧!このワシ、ドードー鳥に戦いを挑むつもりか!?>

「ドードー鳥と名乗る鷹みたいな姿で一人称がワシ…お前本当はなんていう鳥類なんだよ?」

<そんな些細なことは良い!お前なぞ上空から振り落としてやるわ!!>


足を掴んだ絵心太夫の手を、逆に鉤爪のある手で掴み翼をはためかせる。

そしてそのまま遊園地上空へと飛び立ってしまう。絵心太夫はゴーグルして良かったと見当違いの方向へ意思を働かせる。

時永悠真は飛び立ってしまった絵心太夫を見送りつつ、仕方ないと腹を括った。

もうここまできて行動しないのは頭悪い証拠だしと自分に言い聞かせつつ、カプセルへと近付く。

予想ならもう一体くらいロボットが配備されていると作戦伝達の際に話し合った。

しかしカプセル以外に目立った物はなく、もしかして他の場所に一体多く配備しているのだろうかと考える。

それはそれで好都合だとカプセルから旗を取りだして、さっさと相手に負けを認めさせようとそのガラスケースに触る。

瞬間、地中から鎖と鉄の輪が弾き出されるように飛び出し、時永悠真の手首に噛みつく。

簡潔に言うなら手錠だが、明らかに電線やケーブルと言った危ない物がついている。

そしてカプセルケースの表面に、あと十分という時間制限表示が表れる。


「…これはお決まり展開の予感?爆破とかそういうあれ、かな…」

<まさに最終局面と書いてクライマックスだな!!>

<はい却下。むしろ危機的状況と書いて大ピンチだろう?>

「そういう談義はいいとして…えっと、爆弾だとして僕が行動不能になってはいけないでしょう…ん?まさか…」


時永悠真は恐ろしい可能性に気付く。

ロボットは人間を行動不能にする被害を負わせてはいけない。

しかしアトラクションや行動不能以下の損害なら負わせていい計算である。

例えば電流で体を痺れさせたりするのもセーフ。爆弾で手首だけを焦がすのも可能。

なにより時永悠真自体に被害を出さずとも、カプセル内だけの旗を爆発させてもよいのだ。

それこそ原型が残らないほどの、まさに木端微塵という言葉が似合うような状態にしていいのだ。

しかしそうなると旗が自然と一本減ってしまう。すると勝利条件にあっさり届かなくなる。

なんにせよ一番の敵だと思っていたドードー鳥はブラフ。本命はこのカプセルと手錠であったのだ。


「…嵌められた予感…いや決定かな。でもこんな時に太夫くんなら、逆転フラグとか明るく言うんだろうなぁ」


天井があると言っても観覧車が作れるほどの高さを要する地底遊園地。

その上空に飛んでいった絵心太夫のことを思い出しつつ、何かヒントないかとカプセルに触りまくる。

全部救うといった竜宮健斗の言葉。もしそれが今叶うなら、自分の望みも叶うかもしれない。

そんなことを考えながら時永悠真は逆転フラグという目に見えないチャンスを探し始めた。





上空高く地底遊園地の全貌が足元に小さく見える中、絵心太夫は飛べるのを楽しんでいた。

本来人間の体は空を飛ぶようにできてない。飛行機などの手段はあるが滅多に扱うことはない。

だから多くの人間はいつ落とされるか分からない状況での、しかも鳥に掴まれた状況では恐れを抱くのが普通だ。

しかし絵心太夫は懐かしい光景を楽しむようにはしゃいでいるのだ。


<カーカッカカカカ!!どうだ恐ろしいだろう小僧!>

「おお?次は烏の声かぁ。敵ながら天晴なる個性の塊で俺としても楽しいぞ!!」

<…ポ?>

「次は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔だな。ううむ、奥深きかなロボット個性も捨てたもんじゃないな、うむ」


一人だけ納得して絵心太夫は何故か頷く。

絵心太夫が高さに恐怖を抱いたのは、幼い頃の一度っきり。

これは誰にも話したことがない、絵心太夫が主人公、ヒーローにこだわるキッカケの話である。

それは絵心太夫が北の雪が降り積もった、元からその土地に存在していた山に登った幼い頃。

一人で勝手に山を登っていき、迷い、そして崖から落ちていく時であった。

叫び声も泣き声も、助けを呼ぶ暇もなかった時に助けてくれた人物がいた。

それは子供心が見た幻想だったのかもしれないが、助けた人物は竜に乗っていた。

現代日本どころが今の世界どこを探してもいないと言われるほど空想上の生き物に乗っていたのだ。

新しい飛行用ロボットの実験だったのかもしれない、竜の姿は朧げで曖昧だ。

しかし助けてくれた人物はよく覚えていて、ゴーグルを顔につけており、明らかに日本人じゃない姿。

助けた人物は適当な平地に竜を移動させ、飛び降りるように雪の上に着地した。

その人物は落ちていく最中を助けてくれた際に幼い絵心太夫の首根っこを掴んでおり、そのまま地面に叩きつけるように着地させる。

頭から雪をかぶり尻餅をついている絵心太夫に、助けた人物は説教を始めた。

説教は長くまるで覚えられている内容ではなかったが、絵心太夫ははなから話を聞いてなかった。


ただヒーローのように助けてくれた人物に、憧れを抱いていたのだ。


説教に疲れた助けた人物は、そのまま絵心太夫を置いて去ろうとした。

しかしその服を掴み、絵心太夫が今度は質問で長い話を始める。

どこから来たのや、あの竜はロボットなのか、とか、そのゴーグルどこで買えるのか、などである。

助けられた人物は明らかに機嫌を悪くし、うるさいと言ってゴーグルを絵心太夫に投げ渡す。まるで犬に取ってこいと言わんばかりに。

そして改めて去ろうとした時、絵心太夫が最後にと質問を投げる。


どこへ行くのか、と。

助けられた人物はこう答えた。

主人公を探しに行くと。


まるで答えの意味は分からなかったが、絵心太夫は名前も知らないその人物が人生の目標になった。

ゴーグルは今着けているもので、ずっと大切にしてきたもの。

口上が長いのはその人物の説教から真似てみたもの。

そして主人公やヒーローに拘るのは、また助けてくれた人物に会いたいから。


そこからはあらゆるメディアから主人公やヒーローの行動を集めてみた。

すると遅れてやって来たり、ピンチの時に駆けつけてくれるだけではなかった。

なせか高い所から現れたり、特別な力を持っていたり、要所では確実に活躍するなど様々だ。

それら全てを実現するために絵心太夫は、あらゆる苦手を克服して自分なりのヒーローを突き詰めた。

だから絵心太夫は高い所が怖くない。ヒーローは高い所から現れるし、なにより高いのは助けてくれた人物を思い出すからだ。


しかし怖がらない絵心太夫にドードー鳥は腸が煮えくり返るようだった。ロボットなので想像でしかないことではあるが。

確かにドードー鳥は怒っていて、ルールのことなど頭から忘れていた。まるで三歩歩けば忘れる鶏のように。


<貴様など、あの壁に叩きつけてやる!!>

「ふむ、通常なら大ピンチではあるが、俺はヒーロー主人公であり、さらに今日の俺は一味違うぞ!」


勢いよく近づいてくる壁に恐れを少し滲ませつつ、絵心太夫は不敵に笑う。

遊園地に来てから感じていた違和感を絵心太夫は確認した上で秘策があった。

それこそまるで漫画によくあるような、ある日不思議な力に目覚める、に似ていた。

しかし最初は慣れていないのが定石。またこういう力は一番の見せ場までとっておくのも王道。

だから絵心太夫は持ち前の運動神経を使って、腕の力だけでドードー鳥の足を掴んだまま逆上がりするように体を前後に揺らした。

足を遠心力で遠くに飛ばすイメージで、一回転する鉄棒の感覚を思い出して体を回転させようとする。

するとドードー鳥の体はバランスが崩れ、絵心太夫だけをぶつけようとしたのに自分までぶつかりそうになる。

慌てて翼を動かして壁一歩手前で止まり、体勢を立て直そうとする。

鳥の体は飛ぶために作られており、その体は基本軽く軽くと作られている。それはドードー鳥のロボットも例外ではない。

だからこそ子供である絵心太夫の動きでも揺さぶられた。そして壁の、一歩手前、で止まってしまった。

それは絵心太夫が一歩分足を伸ばせば壁に届く距離ということである。


絵心太夫が狙い通りという笑顔を見せ、壁に足をつける。そして壁を蹴って走り始めた。


本来人間には常に重力がかかっており、壁を歩くことなどできない。

しかし今はドードー鳥の翼、そして中二的に言えばずっと眠っていた力の解放によって絵心太夫は壁を走ることが可能だった。

絵心太夫がずっと感じていた違和感。それは自分の体にかかる重力がおかしいということ。

動きやすいように体が軽くなったり、かと思えば重くなったり。手に触れた物なら同じことが起きた。

つまり体を起点に重力が操れることに、絵心太夫は気付いた。

どうしてそうなったかはわからない。しかし絵心太夫は胸を躍らせ、何回か動いて操れないか試した。

結果的にはある程度意識で操れることが判明。だからこそドードー鳥に一人で挑むと宣言した。

操れることから空を飛ぶことや壁にぶつかること、あらゆることを予測した上で今の展開を見切っていた。

ドードー鳥は風によって飛ばされそうになっている凧のように仰け反り、翼を動かすものの落ちないようにするのが精一杯だった。

しかし絵心太夫は壁を走り続ける。重力を忘れてはしゃぐ子供のように、そして少しずつ地面に向かっていく。

ある程度操れるからと言ってまだ完璧に操れるわけではない。だからこそ少しでも高度を下げようとした。

そしてある程度の高さでドードー鳥の足を離し、壁を蹴って空中に躍り出る。浮遊感が絵心太夫とドードー鳥を襲う。

鳥がいくら飛べるからと言って、ある程度の高さがないと体を持ち直して改めて空中に戻るのは難しい。

その高さより下で絵心太夫は足を離して改めて飛ばないようにした。

そして絵心太夫自身はというと重力を軽くして、猫のように回転しながら着地する。

ドードー鳥が地面にぶつかるまであと少しのところ、そこへ向かって走り出す。

このまま地面にぶつかってはドードー鳥は大きく破損してしまうのは明らか。それはルール違反だ。

それに絵心太夫が憧れるヒーローや主人公はこんな時どうするか。答えは明確だ。


敵も味方も関係ない、俺が助けたいから助けるんだ。


絵心太夫は重力が操れる。自分自身の体と体に触れた物質だけではあるが大変便利な物だ。

なぜならドードー鳥は飛ぶために軽く作られたと言ってもロボットで、子供一人分を掴んで飛んで行ける程大きい。

体重は明らかに大人一人分より重くなり、通常の子供なら受け止めようとして潰れて死亡するのが普通だ。

しかし絵心太夫は重力が操れる。体に触れた物の重力も操れる。

両手を上に向けてドードー鳥の体が手に触れた瞬間、絵心太夫はこう思った。軽くなれ、軽くなれと。

それでも重みを感じ、腰が少し曲がるがさらに強く思う。軽くなれ、羽毛のように軽くなれ。







そして腰が少し曲がった程度でドードー鳥の体を受け止めていた。






ドードー鳥は何が起こったか分からず硬直している。

絵心太夫はその体を地面に置いて、猛禽の顔真正面から覗き込む。


<ワシは…阿呆になったのか…ありえない…>

「今度はアホウドリか。本当に個性豊かで楽しい…敵ながら称賛に値するぞ!」

<…いやいやいや。そうだ、なんで敵であるワシを助けた!?ルール違反だからか?>

「なにを言っているんだ?俺はヒーローで主人公だぞ?」

<…ぽ?>




「御都合主義上等!!助けて和解して味方を増やす!ヒーローの特権だろう!!」





こいつの方が阿呆なのかもしれないとドードー鳥は素直に思った。

まさか敵である自分を助ければ味方になるとでも思ったのだろうか、と鼻で笑う。

ドードー鳥の中にあるのは青い血への忠誠心プログラムに子供達への制裁実行指令。

そこに多少個性が宿っただけで、別に善悪とか関係ないのだ。敵か味方かそれだけである。

だから今すぐ目の前でやり遂げた笑顔をしている絵心太夫を攻撃しても何ら問題ない。

むしろ実行指令をやり遂げる、本来の目的を果たせるのだ。万々歳であり動いている目的を果たせる。


そのはずなのにドードー鳥は戸惑った。


与えられた余計なはずの個性。性格というべき部分。

人工知能やAIと言えばいいか、そこが絵心太夫を攻撃することをエラーとして拒否するのだ。

さらにエラーは広がって目的や忠誠心プログラムなどを上書きしようと動き出していく。

もし敵の心を黒いと言うのなら、まるで白く塗り替えていくような、正反対へと動き出す。

エラーを止めようとしてもコマンドは受け付けず、個性がCPUの中に充満していく。

ドードー鳥はエラーが広がっていく中で、一つのファイルを見つける。

そのファイルにはBroと省略して書かれている。開けば出てきたのはことわざ一つだけのメモ帳。







闘う雀人を恐れず






意味としてどんなに弱くて小さい雀でも、戦う時は勇気を出すという意味である。

それは目の前の子供を言っているのか、それとももっと大きな意味があるのかはドードー鳥には判別できなかった。

しかしその単語に時間を取られ、個性という名のエラーはドードー鳥の目的や忠誠心を消してしまった。

この後の行動はドードー鳥自身が決めて行動しなくてはならないい。とても自由で勇気が必要なことだ。

大空に飛び立つ、巣立つ雛鳥とはこのような気持ちなのかと錯覚してしまう程にドードー鳥は不意に自由になってしまった。

そして自由になったドードー鳥は渋々と機械音声を吐き出す。


<ど、どーしてもというなら仲間になってやらんでもよい>

「ツンデレは鳥ではないが、まぁよかろう!!」


これからよろしくと翼の部分に手を重ね、絵心太夫は嬉しそうに言う。

そして心の中ではこっそりツンデレ増え過ぎじゃないか、とある懸念を抱いていた。

ツンデレが増え過ぎるとラブコメに行ってしまう恐れがある。ラブコメの主人公は絵心太夫が憧れる理想から少し離れているのだ。

しかしそうなった時は竜宮健斗に処遇を任せればいいかと、思考を切り替えてドードー鳥に尋ねる。


「正確に確認してないが、あのカプセル…なんか仕掛けあるのか?」

<ある。時間制限つき爆弾が仕込まれており、触れた人物一名を手錠で捕まえ、時間が過ぎるとその手首を吹き飛ばす>

「…それはなかなか悪役らしいと言うか…こんなこと言うのもなんだが子供に仕掛ける類の罠ではないよな?」

<ついでに旗も吹き飛ばす。解除にはパスワードの入力が必須で…>


ドードー鳥が告げたパスワードは、絵心太夫が一回も聞いたことない単語だった。

カプセルにヒントは提示されるらしいが、それでも時永悠真が解明するとは思えなかった。

それほどその単語は一回も耳にしたことないような、変なパスワードだった。

ある意味パスワードという本来の機能は果たしているが、この状態では厄介極まりない。

絵心太夫はまたドードー鳥の足を掴み、飛んでくれと頼む。

ドードー鳥は、べ別に小僧お前のためじゃないからなワシのためだからな、と面倒な前置きをする。

しかし素直に時永悠真がいる場所、元いた博物館前のカプセルに向かって飛び立つ。



時永悠真はカプセルの頂点にあるスイッチを見つける。

梟のアンドールであるルルが軽く飛んでそのスイッチを押す。

出てきたのはヒントという字と問題文のような内容。


ドイツの哲学者ニーチェが残した時間の格言を答えよ。


普通の子供だったらまず答えられない。

ビジネス書やそれらに関係する勉強をした者ならかろうじて答えられるかもしれない。

しかしドイツ語か日本語かもわからない答えの内容。

鹿のアンドールであるタイラノが首を傾げて、有名人なのかと疑問符を浮かべている。

ルルは時永悠真ではこの問題を答えられないだろうと思った。もちろんロロ自身も答えを知らない。

時永悠真はカプセルの表面に浮かんだ8bit文字に、僅かならがら苦笑した。

タイラノとロロが目を丸くする中で、手錠がついていない手で髪をかき上げて溜息をつく。

それはまるで参った、予想外、予感していなかったという、だけど答えが分かっているような仕草だ。

苦笑して音声認証かなと軽い調子で答える。手首が吹き飛ばされ、旗を失うかもしれない状況であったのに。








「過去が現在に影響を与えるように、未来も現在に影響を与える」






金属がズレて外れる音がする。スイッチを押したような、解除されたような不確かな音。

次に響いたのは何か重い物が地面に落ちる音。

絵心太夫はドードー鳥が空を飛んでいる最中だったが、その足から手を放し落ちていく。

重力を操ってゆっくりとなるが安全に降下する。地面に足がついた瞬間にカプセルに向かって走っていく。

そして声に出すのはどこから来たかもわからないけど、大事な北エリアの仲間の名前。


「悠真!?」

「…ん?フラグ回収完了な予感、てね」


意趣返しするように笑う時永悠真。その両手首にはなにもついてない。

地面には輪が外れた手錠が転がっており、カプセルは真ん中から真っ二つに割れていく。

旗は久しぶりの空気にその布地をはためかせる。


「わかったのか?哲学と言えば専門知識の塊ではないか」

「…んー、哲学好きな友達がいたんだ。よく…教えて貰ったから、耳にタコができるほど」


思い出して笑う時永悠真だったが、絵心太夫は聞き逃さなかったし見過ごさなかった。

その笑顔が今にも泣きそうな程歪んでいるのと、過去形で語られた友達という存在を。

しかし追及するにはあまりにも痛々しいその姿と、時間の問題があった。

絵心太夫は旗を手にし、ドードー鳥に乗って飛んでいくかと提案する。

しかしドードー鳥は二人は無理と言い、時永悠真もそんな危ないことしたくないと拒否。

とりあえず二人とアンドール達は走っていき、ドードー鳥は飛んで駅に向かうこととなった。


「未来は現在に影響を与える、か…」

「どうした?なんか気になることでも…」

「ん?んー、まるで僕達みたいって、軽く思っただけ。早く戻ろう」





残り時間は二十五分。

子供達を虐殺するロボット完成まで、あと五分。


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