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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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トチ狂い帽子屋

コーヒーカップが動くアトラクション、その中でコップ達がひたすらぶつかって崩れそうな瓦礫の山一つ。

その山の上には今にも落ちそうな長いパイプで作られた旗が一本突き刺さっている。

帽子を被ったロボットは飲めないはずなのにティーカップを片手に柵に座っている。

その様子を警戒している籠鳥那岐と錦山善彦が物陰から見つめる。

動き回るカップの動きは通常時より激しく、ぶつかっても止まらないところから安全装置が働いてないのがわかる。

あれではぶつかった瞬間吹き飛ばされるか、体の一部が損傷してしまう。

しかし旗が地面に落ちてしまえばカップ達に壊されてしまう。

すると旗が一本消失し、時間内に旗四本という勝利条件が消えてしまう。

ロボット達は旗に触ることはできない、それでもこのようにアトラクションで壊すのはルール違反じゃない。

やはりロボット側もルールの裏を使ってきたかと籠鳥那岐が舌打ちする。


<既に来ているのは分かっているよ、ベイビー達。隠れてないで出ておいで>

「ベイビーってふっるいなぁ…おっさんか、あんさん」

<トチ狂ったセンスどすなぁ…>


ばれている以上一刻も争う中で隠れている必要性はない。

籠鳥那岐と錦山善彦、そしてアンドールであるペンギンのギンナンと赤い鳥のシュモンが姿を現す。

帽子屋のロボットは人型の細長い外見で、なぜかスーツと帽子を着こなしている。

顔は卵にトンボの目と排気口をつけたような、一瞬どこかの有名改造ヒーローを思い出させる。

遠目で見れば紳士的な立ち姿だが、近くで見れば異様の一言である。

コーヒーカップでは帽子屋以外にもう一体配置されており、そのロボットは食事を売るワゴンのロボットである。

そのロボットがティーカップを持って礼儀正しく立っている。給仕役らしい。


<僕達は君達に攻撃しない。ここでお茶を飲みつつ行く末を見守るだけさ>

「旗取られたら負けだろう?いいのか?」

<あんな危ないアトラクションの中に入るなんで奇知外、僕以上にハイセンスだからね。素直に渡すよ>

「つまりあんさん…あんなトチ狂ったカップの中を俺らに行けと!?」

<そうそう。ちなみに旗には重りをつけていて、アンドールじゃ持ち運べないよ…ね?>


飛べる翼を持つシュモンを見て、帽子屋はティーカップを口元で傾ける。

茶色い液体が飲み込まれずに鉄の体表面を流れ落ちていく。

空いたティーカップに給仕役のロボットが新しいお茶を注ぐ。

地面には茶色の液体が広がって染み込んでいくだけで終わる。

飲めないのに飲む動作、素直に渡すと言いつつアトラクションを改造して危険な物に仕上げる。

それらを全て見てシュモンは忌々しそうな機械音声を出す。


<トチ狂っている…本気でこいつは狂っている>


それを褒め言葉と受け取った帽子屋はありがとうと言う。

なんでお礼を言われなきゃいけないのかと困惑する中で、瓦礫の山にぶつかったカップが大きな音を立てた。

振り向けば旗が大きく揺れており、今にも落ちそうになっている。

籠鳥那岐が柵に紛れるように設置された入り口を開けて、カップが暴れ回る台に近づく。

近付いてきたカップに飛び乗り、回転を操れるように真ん中に手を置く場所としても活用できる操作バーを掴む。

すると操作バーの回転を止めるだけでカップの動きは緩やかになる。

しかし他のカップにぶつかった衝撃で操作バーから手を離せば回転は元通り激しくなる。

シュモンが飛んで籠鳥那岐の体に触れようとするが、カップの動きと回転が激しくて近づくのも容易ではない。

例え運良く触れたとしても回転によって弾き飛ばされる可能性が高い。

それはキッキ達と遊んでいた竜宮健斗に付き合っていたセイロンが身をもって証明していた。

籠鳥那岐はカップから振り落とされないように捕まりつつ、今にも落ちそうな旗を睨みつける。


<ちなみに、回転は人体に影響するほどの速さだから、悠長にしてると体中の血液が偏るよ>


人体にが血液が流れている。それは体内での出来事で普段は認知することがない。

しかし激しい回転の後や揺れを体験すると気分が悪くなることがある。

また逆さまの状態でいると血が頭に溜まって辛い思いをしたことあるだろう。

流れると言っても限界があり、血液は体の外からかかる力には逆らえない。

それは時に重力や引力、回転運動によって発生する力など様々だ。

血液が一部に偏るとそれだけで体は危機を伝えるために、体に痛みや辛さを味あわせる。

今の籠鳥那岐の状態は回転による運動力で吐き気を覚えていた。

それほどの回転を長い時間味わえば確実に血液の巡りが止まり、下手したら破裂するだろう。

ロボットは人間に行動不能なほどのダメージを与えてはいけない。

しかしこれはアトラクションによるもののため、ルール違反にならない。


「なっんちゅー悪趣味な!!しゃーない、俺も…」


錦山善彦は柵を乗り越えてカップに飛び乗ろうとしたが、あまりの回転に風圧で体がよろける。

こんなのに乗ることができたのかと籠鳥那岐に対し驚きつつ、縄跳びに挑戦するようにタイミングを計る。

しかし何度もカップがやってきてもその迫力に足の動きが止まってしまう。

歯痒い思いで眺めていると、籠鳥那岐がカップの上に四つん這いの状態から立ち上がろうとしている。


「ど、どないすんねん!?」

「…俺ができることは…一直線に、進むだけだ!!!」


そう言った瞬間、瓦礫の山に一番近づいた瞬間に籠鳥那岐は足を強く踏み出した。

瓦礫の山に突撃するように飛び込み、衝撃に顔を歪ませつつ片手で旗を取る。

旗を掴んだまま消しきれなかった勢いのまま転がる。

目前に激しく回転しながら迫ってくるコーヒーカップの乗り物。

シュモンが籠鳥那岐の名前を呼んだが、どうにもできない。







なっちゃん





籠鳥那岐は絶望的な光景を目の前に走馬灯を見た気がした。

それは白い病室で微笑む少女が自分のあだ名を呼んだ光景。

とても大好きで二度と会うことができない少女、扇動涼香の思い出。

思い出して笑ってしまう。実はそのあだ名はあまり好きではないのだと。

ただ扇動涼香があまりにも嬉しそうに呼ぶものだから、言い出すことができなかった。

今ではその名前で呼ぶのは人生最大汚点と呼ぶに相応しい御堂霧乃だけ。

本当は呼んで欲しくないのだが、その名前が使われるたびに扇動涼香を思い出す。

彼女が思い出せるならそれも悪くないか、と最近では諦め始めた。

しかしこのまま死んでは葬式の際に御堂霧乃にその名前を連呼されるに違いない。

そしてここぞとばかりに幼い頃のしまっておきたい、生涯隠しておきたいことを暴露されるに違いない。

そうなってしまっては死んでも死にきれない。というか死んでたまるか、という謎の気力が満ちてくる。


旗の長いパイプである棒の部分を軸に、棒高跳びをするように跳ぶ籠鳥那岐。


カップの胴体が棒をへし折るが籠鳥那岐の体は空中に放り出されたように弧を描く。

そのまま台の上を転がり、ついには場外へと転がり落ちる。

手の中には折れてしまったが確かに旗が握られている。


「うおぉおおおおおお!!ボス~、カッコイイでぇえええええ!!」

<那岐!大丈夫か!?怪我は?血の巡りは?>

<無茶しすぎどす!!普通の人間なんどすよ!!>

「わかったわかった。少し黙れお前達…旗は取った、ここは俺達の勝ちだ」


茶を飲む動作で液体を零し続ける帽子屋に、籠鳥那岐は旗を突きつける。

帽子屋は特に動じないままティーカップを給仕役のロボットに渡す。

乾いた拍手を数回行い、おどけた動作で礼をする。


<私はルール違反にならない最善の策を行いました。素直に負けを認めて降伏いたしましょう>

「…はぁ!?降伏って…まさか俺らについてくる気なんか!?」

<ええ。負けた者はそのような扱いが戦争では常識でしょう?>

「これは戦争じゃない、合戦だ。それに捕虜にするには相手の脅威を根こそぎ奪わなければ意味ない…」

<そうですか…ではどうしましょう?>


本当に困ったように首を傾げ、改めてティーカップを手にする帽子屋。

また茶色の液体を体の表面で滑り流し、地面に染みを作っていく。

そしてお代りを所望して、また飲もうとする。

苛ついた錦山善彦が人差し指を突きつけて怒鳴る。


「ほんまにトチ狂ってるなぁ、あんさん!!臍で茶が湧けるでぇ!!!」


その瞬間、排気口から空気を大量に出して茶を吹きだす帽子屋。

まるで人間の芸人のようなリアクションに錦山善彦が言葉を続けられなくなる。

ティーカップを落として割り、そのまま四つん這いで地面をたたき始める帽子屋。


<へ、臍で茶が!私臍ないのに…ぷくくく、というかどんなお茶ですかそれ!?臍茶!?ゴマ茶!!?ぷくくくははははははははは!!!!!>

「なにしとんねんあんさん…つーか排気口から茶吹き出すって、無用の長物なリアクションを…」

<無用の長物!?ぷっははははははは!!長い物と言いますが私の排気口は小さいんですよっははははははは!!!ひーっ!!!>

「…笑いのセンスもトチ狂っとる…こらあかん」

「放置しよう。こんなの百害あって一利なしだ」

<百も害あって一つの利もないとか、どんだけ!!?どんだけぇえええっはははははははははははははははは!!!!>


笑い続ける帽子屋とそれに従い立ち続ける給仕役ロボット。

その二つを用心しつつも背中を向けて、バリケードがある駅へと向かう籠鳥那岐と錦山善彦。

シュモンとギンナンがその後ろをついていく。

なにがそんなにおかしいのか、帽子屋は二人がいなくなった後も笑い続けていた。

そして笑いがおさまる頃、給仕役のロボットを連れてバリケードへと向かうのであった。


まずは旗を一本手に入れた。

残り時間はあと五十分。まだ余裕があるように見えた。




それと同時刻、ある生産場ではロボット一体の製造が行われていた。

体重移動をスムーズにするための四足歩行、長い胴体は振り回すだけで脅威。

長い首の先には角と大きな口。牙の代わりに舌のある部分にはレーザービーム砲が備え付けられている。

それを一言でいえば東洋龍。細長い体は銀色にメタリックな塗装が施されている。

生産過程を見ながらジョージ・ブルースは勝利ではなく、虐殺を確信していた。


赤い血の子供達の虐殺を決行するためだけに作られたロボット。

それが完成するまで、あと三十分。


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