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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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男は度胸

猪山早紀はこっそりと電車が降りる中、新たに乗り込んでいく子供達。

かなり詰め込んだはずなのにそれでも乗り切れない者が出てくる。

その中で皆川万結や数人が自分の意思で闘いの行方を見たいと言って残り始める。

瀬戸海里が危ないよ、と言っても首を横に振る。


「おにいちゃんも、あのロボットさんもしんぱいだもん。まゆはのこる」

「万結ちゃん…うう、幼い心が染みるなんて僕も年取ったかなぁ…」


皆川万結の笑顔に瀬戸海里は無理矢理電車に乗せることができなかった。

セイロン達が降りてきて、地上のホームでは御堂霧乃がいるから大丈夫だろうと言う。

また行きに気を落ち着かせる音声を入力したので、自動運転でも大丈夫だろうと告げる。

御堂霧乃がホームで待っているとは、ダンジョンの最後にラスボスが待ち構えているようだと誰もが苦い顔をする。

特に籠鳥那岐は苦い渋いというあらゆる顔を混ぜた、どうやったらそんな顔になるんだという顔をしている。


「モグリは電車に干渉できないから僕と…」

<へい!合点でい!!>


提示したルールにはロボットは電車への攻撃と干渉を禁じられている。

だからこそアンドールという名のロボットであるセイロン達やモグリは乗っていたらルール違反になる。

提示した側がルール違反をすればその時点で相手はどんな手に出るか分からない。

それこそはなからフェアな勝負をする気がないジョージ・ブルースは重箱の隅をつつくように指摘するだろう。

姑息で偉そうでどこか三下臭がするのに力だけは有り余っているような厄介な敵に誰かが溜息をつく。


「まず帽子屋が守るコーヒーカップの旗は籠鳥那岐と錦山善彦」

「少数精鋭ゆうても厳しすぎるんとちゃう?」

「言っとくがドードー鳥が守る博物館のは時永悠真と絵心太夫」

「うーん、嫌な予感してたけど本当にそうきたかぁ…」

「ゴーレムのレムが守るミラーハウスには鞍馬蓮実と筋金太郎」

「お!力対決なんよ…って、さすがにロボットの力には負けるんよ…」

「最後にチェシャ猫が守るDルームには竜宮健斗と相川聡史」

「応!!聡史、Dルームに案内よろしくな!」


玄武明良の作戦による発表されたメンバーは、自分のアンドールを連れて飛び出す準備を始める。

これで十六のメンバーが決まる。投下できるメンバーは二十。残り四は選べる。

ロボットも人数に入れるとなると数が限られるのが痛い所ではある。

だが提示したルールにはちゃんと抜け道がある。それを活用するための選び方だ。


「残りは俺と美鈴、そしてキッキと律音だ」


メンバーの通達を終えて、玄武明良はノートパソコンの接続を一旦切り、小脇に抱える。

そして竜宮健斗達と同じく飛び出す準備を始める。電車は間もなく自動運転で発車する。

すると音声が流れて合戦の合図となる。バリケードの向こうを見ればすでに臨戦態勢のロボットの群れ。


「…やっぱり。傍受用のマイクも持ってる。今の作戦も聞かれてるなぁ♪」

「声を浮足立たせるな。さて、ここからはいかに相手の先手を取るかだ…やるぞ」

「応!絶対…今度こそ全部救う!」


電車のドアが閉まり、発車音声が鳴り響く。

同時にバリケードの前で待機していたロボット達が行動し始める。

頑丈な盾を装備して一列に整列する姿は、まるで低くも分厚い壁のようだ。

その盾を持ったままバリケードに突撃してくる。しかしルール違反ではない。

バリケードを壊してはいけないというルールをあえて作っていない。

しかしルールの各所にはバリケードを境界線とした禁止行為をいくつも作っている。

ならば敵はそこを必ず突いてくる。バリケードを壊しえてしまえばいくつかの制限が消せるからだ。

なによりバリケードは竜宮健斗達の出発点。足止めも同時に出来る。

だからこそ戦力も集中する。全力で向かってくるだろうと。

向かって来たロボットの数は十二体。相手も全力なのだろう。

バリケードを壊されたら、被害は大きくなるだろう。





<てっやんでぃいいいいい!!男は度胸でぃいいいいいいいいいいいい!!!>

「そうだね、モグリ!!」





モグリの声を後押しとして、キッキはドリルでバリケードの一部を崩す。

すると雪崩のようにバリケードが崩壊し、片方だけに崩れていく。

今にもバリケードを壊そうと接近して来たロボット達は押し潰される前に盾を上へかざす。

盾のおかげで壊れることはないが、設計上で想定されるよりも重い、持ち上げられない重さの物量がのしかかる。


ルールの一つ、人間はロボットを完全破壊してはいけない。行動不能になるほどの破壊をしてはならない。動けなくなったロボットへの攻撃を禁ずる。


これに触れず、多くのロボットの動きを止める作戦その一。

自らバリケードを壊す。もちろん雪崩の方向やどこを壊すか正確に計算した上でだ。

遊園地を一人で作り上げ、地底世界を広げてきた地底人の知識を受け継ぐキッキには造作もないことである。

盾しか持てないロボット達は必ず盾を装備するはずだと予測も完璧だった。

装備した盾によって破壊はしてない。だから行動不能になるほどの破壊にはならない。

雪崩が終わって静まり返った瞬間に玄武明良達は走り出す。

キッキと仁寅律音、メンバーに選ばれなかった子供達はその背中を見送る。

アンドール達とモグリは壊れたバリケードの上にさらに物を乗せていく。

建前は壊れたバリケードの補強、本音は雪崩の下にいるロボット達への重石。

もちろんルールには触れない。攻撃ではない、補強である。

そして旗を取ることはないのでモグリ達も動くことができるのだ。


「この作戦考えた人、性格悪いよね」

「でも効果的でしょう?攻撃が最大の防御ともいうしね」


この作戦の立案者である仁寅律音は、性格悪いをあっさりと笑顔で聞き流す。

玄武明良は失敗したらルールに抵触するどころが大接触になるぞと微妙な顔をした。

しかし仁寅律音はジョージ・ブルースとの会話の端に見た小物臭から必ず成功すると押し切った。

言葉通りに作戦は大成功し、キッキは隣にいる綺麗な笑顔の少女のような少年に恐怖した。


「あとは文句を言いに来たロボットを僕が言いくるめ、攻撃してくるのはキッキくんがお願いね」

「なんだろう…工事現場主任と会社の上司みたいな空気になってる」


苦笑いしつつドリルの動きを確かめ、キッキはバリケードの近くへ向かう。

そしてモグリ達と同じようにバリケードを補強していく。

仁寅律音は葛西神楽など残った子供達には危ないからホームにいてねと言い、同じくバリケードの近くへ行く。

凛道都子や瀬戸海里などを残したのはいざという時の戦力と、誘導できる冷静さがあるからだ。

特に凛道都子の場合はモデルガンが使えるが、ルールとしては破壊できないので戦力として充分だが、フラッグウォーズに参加させることはできなかった。


「あ、ここらへんなんか動いてる。モグリ」

<合点でぇ!!どっせい!!>


壊さないようにゆっくりと重い物を乗せるモグリ。

遊園地にいるロボット達を作ったキッキは、体が耐えられる重さを計算しつつ乗せる物を指示していく。

その中で少し不安なことがある。先程ピエロとレムと一緒にいた三体の目立つロボット。

旗を守るロボットらしいが、キッキはあんなロボットを作った覚えはない。

竜宮健斗達にもそれは伝えており、とりあえず旗を取ればいいだろうということから一応用心、という方針で進んでる。

またロボットの生産を邪魔してはいけないというルールも気になっている。

数が限られたルールで新たに生産など意味がない。ならば必ず裏があるはずだ。

キッキは用心しつつバリケードの補強を進めた。




玄武明良と扇動美鈴はパソコンを持ってスタッフルームへの扉を花壇の影から見る。

扉の前には誰もおらず、また周囲にも影や気配はない。

どうやらジョージ・ブルースはウィルスに絶対の自信があるらしい。

旗を守ることとバリケードを壊すことに専念し、スタッフルームを放置すると決めたのだろう。

なめられたものと玄武明良は青筋を浮き立たせながらも、好都合だと急いで扉を開けて入り込む。

目指すはスタッフルームにある管理室。外と通信ができてノートパソコンよりも優秀な設備がある場所。

また遊園地内を見ることができ、緊急時には園内放送ができる設備もある。

ルールでここを守ったのはあらゆる利点があるためだ。


管理室はキッキがウィルスを止めようとして、コードを切ったりした惨状が広がっていた。

玄武明良は袖をまくって急いで切断されたコードの修復をしていく。

本来ロボットの動作技術に詳しい玄武明良にとっては、コードなどの配線は得意中の得意である。

その間に扇動美鈴が外への通信を繋げ、作業がすぐに行えるための準備を進める。

USBケーブルでノートパソコンとスタッフルームのパソコンを繋げる。

重要なプログラムを移動させれば、監視カメラがいくつもある壁の画面が正常に動作していく。

その中で一際大きい画面には先程の通信用画面が映し出され、扇動岐路が安心したように息をつく姿が見えた。

マスターとクローバー代理人は文字だけなので判断のしようがない。


「美鈴、監視カメラで怪しい動きはないか」

「はい。今のところは…バリケードの作戦も成功してます」


玄武明良は耳で報告を聞きながら、目と手では作業を素早く進めていく。

無茶苦茶に切られたせいで修復は大変だが、玄武明良からすれば朝飯前の出来事である。

しかし時間がどれだけ残っているかわからない状況ではのんびりしている余裕はない。

簡単に重要なとこだけ繋げた玄武明良は管理室にあるパソコンの前に立つ。

椅子がある方は扇動美鈴がお辞儀しつつ座り、キーボードを打ち込み始める。


「そんじゃあこの天才を舐めた礼をしてやろう」

「はい!頑張ります!!」

『若い子には負けてられないし、一肌脱ごうかね』

『こちらも雌豚と罵しったことを後悔させてやろう。本気出してやる』

『それでは皆様方、天才という名のもと、作業をお願いします』


全員がそれぞれのパソコンの前で一言も発さずに手を動かしていく。

その姿は誰もが鬼気迫るもので、声かけるのを躊躇うほどである。

止まらない腕や手の動き、タイピングする指の速さ。まるで音が後からやってくるように思える。

パソコンの処理速度を考えながらも今できる最短の時間で最良の結果を出すための動き。

呼吸音すら消えたような作業に、五人は没頭した。



作業に没頭する少年らしき人物を眺めながら、クローバーはソファの上で瞼を閉じる。

呼吸を最小限に抑え、胸が殆ど上下しなくなる。下手したら死んだと思われる姿だ。

しかしこれはクローバーが必死に思い出すときに編み出した体勢だ。

もちろん信憑性及び一般性もないクローバーがこの方が思い出しやすい、というだけの体勢だ。

その体制のまま思い出す。なにが必要だったかを。そして新たに何を必要とするかを。


Aliceに呑み込まれた少年を思い出す。

弟を見守るためにシステムエッグによって自由に意識をデータ変換できる少年。

出来ることは少ないが、光の原理を利用した通信方法で電子世界と現実の体の中を自由に選択できる。

電磁波ではなく光による光速通信。そのように意識をシステムエッグによって変換できるようになっている。

あまり科学的ではないが、クローバーの専門は科学ではないので非常識な理論を持ち出す。

光の中には色の基礎が詰め込まれている。色とは光であり、一般的に形や色と認識している物全てが光である。

そうなると電気も光の一種であり、パソコンを動かすのもディスプレイ画面もデータの素も全て光になる。

つまりAliceに呑み込まれた少年は光の塊。そしてAlice自身も光の塊。

今二つはお互いに混ざり合っており、ワクチンで消せば少年のデータも同時に消えてしまう。

だから二つを元のように別々にして、少年だけ救わなければいけない。

光の中から光を選別する方法、それは膨大な0と1の中から特定配列の0と1を探すことに等しい。

しかし数字と違って光には色がある。つまり紫色を赤と青に選別する方法を考えればいい。

となると必要なのは抽出方法。クローバーは呼吸をさらに抑えこんで考え始める。


第三者の意向により変質するウィルス。

状況に合わせて性質を変えていくウィルス。

それに混ざってしまった少年。


「…そうか。あの時、彼が言ったのはそういうことか…」


クローバーは瞼を開けて、少年らしき人物に目配せする。

少年らしき人物はすぐに気付き、なんですかと声をかける。

クローバーは謎を解いた名探偵のように勝ち誇った笑みで、ある作戦を伝えた。


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