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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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オールブレイク

キッキは管理室のあらゆるケーブルや配線を変えて対処していく。

それでもウィルスの猛攻は止まらずに、増殖と拡散を続ける。

外の様子も分からないまま、持てる限りの工具を使って対抗する。

あざ笑うかのようにウィルスは止まらない。遊園地のあらゆるデータを飲み込み続ける。

大切な思い出や積み重ねてきた努力や楽しかった作業、全てを無慈悲に口に入れる。


「止まれ、止まれ止まれ止れとまれっつってんだろぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」


苛立つように近くにあった壁を殴りつける。

鉄板で出来た壁は金属音を鳴らすだけでビクともしない。

キッキにとって遊園地は最後の要、兄と笑いながら話した夢の実現。

目の前で壊れていくことに耐え切れず、我武者羅にケーブルを切断していく。

しかし無線もある時代、ケーブルをどうにかしても収まらない問題がある。


「頼むから…僕の夢を、壊さないで…」


引き千切ったケーブルの残骸が床に散らばる。

管理室のテレビ画面は全て砂嵐で見えないのに、悲鳴だけが音声として届く。

聞きたくもないのに耳を塞いでいる余裕すらなく、作業を続ける。

しかし一向に良くなる気配はない。一人では限界がある。

だが地底人はキッキ一人しかいない。頼れる者はすでにいない。


都合よく助けに来てくれる友達すらいなかった。



竜宮健斗が管理室の扉を開けるまでは。


「キッキ…」


息を乱して汗だらけのままキッキに近寄る。

キッキは赤い目を涙で濡らして、その姿を見上げる。

肩には青い竜のアンドールが乗っていて、かぶってる帽子のつばには金色に光るボスの証。

後ろには両手を黒い革の手袋をしている籠鳥那岐。

誰かが邪魔をしてこないように扉の前でシュモンと共に見張りをしている。


「キッキ、出口を作ってくれ…」

「!?だ、駄目だよ!!そしたら皆、僕の前から消えてしまうだろう!?皆、あの太陽の下に…帰っちゃうじゃないか!!」

「じゃあこのまま見殺しにするつもりかよ!」

「ひ、一人になるくらいなら…僕も一緒に死ぬからっ!?」


キッキの頬に鋭い痛みが走る。

体が少し空中に浮いて、すぐ後ろの鉄板の壁にぶつかる。

唇の下を切ったらしく、赤い血が肌を伝っていく。

赤くなった拳を握って、竜宮健斗は怒りの眼差しでキッキを見る。


「簡単に、死ぬとか言うんじゃねぇ!!死んだら…死んだら終わりなんだ!!」

「あ、アニマルデータがあれば…」

「アニマルデータは都合のいいコンティニューじゃねぇ!!」

「じゃあ、どうすればいいんだよ…出口はルールで禁じられて、僕が一人ぼっちにならない方法なんて…あるわけ…」






「俺達がいる」






赤くなった拳を軽くキッキの胸に当てる。

心臓、抽象的に心があると言われる左胸は規則的に鼓動を刻み続けている。

そこに竜宮健斗は拳を当てて、太陽に例えられるような笑顔で言う。


「一人が嫌なら傍にいてやる。一人で無理なら力を貸してやる。一人じゃないなら勇気が出せる」

「けん、と…でもルールが…」

「遊園地は夢の場所、悪夢で終わりにするんじゃねぇ。目覚めが良くなるよう…いい夢のまま帰してやろうぜ」

「だからルールが…」

「悪夢しか作らねぇルールなら、ぶっ壊せ。それができるのはキッキ、オーナーであるお前だけなんだ」


キッキの胸の鼓動が早くなっていく。

ルールを壊す、そんなこと考えたこともなかったのだ。

でも壊せば誰かを助けられるかもしれない。遊園地を守れるかもしれない。

大事な夢を…救い上げることができるかもしれない。


「大丈夫。ここは遊園地、皆を笑顔にする場所だろ」

「だいじょうぶ?」

「ああ、大丈夫だ!だからキッキ、決めてくれ…出口を作るって!」


昔の遊園地で聞いた大丈夫という言葉。

名前も知らない、顔も覚えていない少年が励ましてくれたのと同じ単語。

ありがとう、と言えなかったけど感謝していた。

そして兄と一緒に今度こそ手を繋いで帰った、この地底世界に。

出口を通って…そう帰るために、笑顔のまま大切な夢を心の中に灯して。


「そうだ僕は…あの日…」

「キッキ?」

「…出口を新しく作ることはできないけど、入り口を出口として電車を動かすくらいなら…できる!」


キッキは立ち上がって大きなドリルを肩に担ぐ。

それは穴を掘る道具にも、身を守る武器にもなりそうなほど大きなドリル。

涙のせいで赤くなった目元を拭い、園内放送用のマイクに近づく。


「こちらキッキ。スタッフに告ぐ、至急入り口を出口として誘導!お客様全員を地上に避難させよう!」


一呼吸おいて、キッキはルールを壊す決心をする。

ずっと守ってきたルールは、自分の世界、遊園地を守るための物。

でもそれで理想の夢、笑顔で過ごせる遊園地がなくなるくらいなら、捨ててしまおう。

そして昔、たった一回だけの遊園地の思い出を振り返る。

本当に楽しかった遊園地、ずっとあれを目標に運営してきた。

そこに自分の我儘を入れて、歪めてしまった。オーナー失格だろう。

だからこそ今度はオーナーとして正しい運営者になろう。

力を貸してくれると言った少年達のためにも、折角遊びに来てくれたお客様のために。


「ルールはもう関係ない。一番大事なのは命だ、笑顔だ。だから全力でお客様を守れ!!」


そう言い切って園内放送を切り、砂嵐しか見せない画面に背を向ける。

振り返った先には竜宮健斗が親指を立てたサムズアップと言われるハンドジェスチャーをしている。

キッキは照れくさそうに同じ指の形を作り、握り拳の部分をぶつける。


「キッキ、大人みたいでかっこよかったぞ!」

「…子供のままじゃ、守れないのがあるからね」


そして二人は管理室を後にし、籠鳥那岐を先行として移動を始める。

一人ぼっちでルールに縛られてきた地底人の子供。

今はルールを壊し、自分の足で立ち上がった。

運営者として責任ある立場を自覚し、自分の判断で大勢の笑顔を守ると決めた。


この時、キッキは幼い子供から成長して大人になった。


まだ少し頼りなくて、不安は大きく残る。

心が大人に近付いたとしても、やはり体は子供のままである。

でも一人ではない。助けてくれる友人ができた。

同じく子供の体だが、時には大人顔負けの力を発揮する。

竜宮健斗達は気付いていない。全てのルールを破ってきたことに。









ルール5.出口を探さないこと







Rule All Break。

そして始まるのは、遊園地救出作戦。

地底人と地上の子供達が力を合わせる時。

青い血と天才達、様々な思惑を絡ませていく。

最後に笑うのは誰か、それはまだ誰も知らないことである。


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