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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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地上の思惑

竜宮健斗達を地底遊園地に向かわせた御堂霧乃も準備を始める。

単身で地底遊園地に乗り込む覚悟と、必要な道具をカバンに詰め込む。

しかしその光景を父親である御堂正義に見つかってしまう。


「霧乃!まさか…」

「と、父さん止めないでくれ!!アタシは…」

「いや、うん、実は言いづらいんだが…岐路に言われたことなんだが…」

「アタシはアイツらを送り込んだ責任と、事務処理から逃げる口実として…」


「正直にあの細い通路広げればいいのではないか、と。駅や街への申請には時間かかるが…不可能ではないだろう?」


言葉を続けようとした御堂霧乃は、開いた口が塞がらなくなる。

それは一番最初に思いつくべき案件であるはずなのに、考えに至らず子供達を送り続けていた。

というのも御堂霧乃は学校生活以外にも管理員会や大会運営の仕事もこなしている。

キャリアウーマンと言えば聞こえはいいが、子供の身からしたらオーバーワークである。

忙しさのあまり短絡的な思考に陥り、同じ方法を取り続けていた。

また御堂正義も会社運営が忙しく、ある程度のことを御堂霧乃に任せていた。

娘という欲目もあり、ほとんど任せきりになっていたのだ。

そこを扇動岐路が子供に押し付けてるんじゃない、と言われてしまった。


「そして岐路がすでに申請を通していてな、今日からでも広げる工事を…霧乃?」

「こ、こ、この…馬鹿親父…」


父親に対する暴言がこれしか思いつかなかった御堂霧乃は、ある意味ではファザコンかもしれない。

なにせ小さな頃から男手一つで育ててもらった恩があるのだ。ある少女の次くらいには愛していると言っても過言ではない。

しかし御堂正義にはその稚拙な暴言でさえ大ダメージを喰らうショックであり、いきなり男泣きをし始める。

男手一つで育ててきた娘、問題や少々言葉の乱れがあっても、自分を馬鹿にすることがなかった娘が明確な暴言を吐いたのだ。


「う、う…うう…霧乃が私に馬鹿だなんて…」

「な、泣くなよ父さん!!わ、悪かったて、ごめんなさい!」


カバンを置いて御堂霧乃は珍しく慌てた様子で謝りたおす。

その光景を見ていたリスのアンドールであるリズリスが控えめに声をかける。


<申し訳ございませんが、善は急げ…工事するならすぐに手配を回してはいかがでしょう?>

「う、うむ…私も工事責任者として駅に向かうから、霧乃も来なさい」

「わ、分かったよ」


そして二人は中央エリア駅へ向かう。

目的は子供しか通れなかった通路の拡張工事。

及び地底世界への侵入である。




扇動岐路は進言した責任として同じく中央エリア駅に向かおうとする。

そこへパソコンに一通のあて先不明メールが送られてくる。

そのメールは自動開封され、音声付きメッセージとして再生される。


『こちらはマスター。扇動岐路博士、中央エリア駅に向かうなら持ち歩けるパソコンの一番良いのを持っていけ』


一体なんのことかとパソコンへ向かう。

すると文面には音声メッセージの続きらしき、簡潔な報告書が添付ファイルとして送信されている。

中には調べる限り調べたAliceという名前のウィルスについて書かれている。

その脅威性やワクチンがいまだ未製造ということ、そしてそのウィルスが地底遊園地に向かったこと。

扇動岐路は慌ててケーブルや無線通信機械、そして一番良いノートパソコンの準備を始める。

システム面に強い扇動岐路は、そのウィルスが今までのウィルスの中でどれだけ危険性が高いかを知ったからだ。



ある部屋の中でミニテレビを点けながら作業する少年らしき人物が一人。

ニット帽を目深にかぶり、長い袖から僅かに露出した指先で人間の速さとは思えないタイピングをしている。

画面に高速に表示される文字列を見ながら、少しも腕を止めることなくミニテレビに話しかける。


「博士。この時代の機械製品の特徴を掴みました。次の指示を」

『マスターに音声通信でウィルスが広がる時刻を宣言。この事件は下手したら…歴史が変わるからね』

「了解しました」


少年らしき人物は簡潔に言うと、すぐにマスターへと音声通信を繋げる。

すると青頭千里がマスターの代理として声を出す。


『悪いね。今マスターは演算装置の演算を先行く計算している最中で声が出せないんだ』

「…博士」

『だと知ってたよ。安心して。あのウィルスは本当に厄介でね…今回の事件だけで根絶させなきゃいけない』

「分かりました…ではウィルス拡散時刻をお伝えします。私は補助しかできません。今回の決め手はマスターと扇動博士の二人かと…」

『ああ、そのことなんだけど…二人じゃない五人だ。僕の考えによれば五人の天才が力を合わせなきゃ無理だろう』

「…どういうことですか?」

『そのままの意味さ。マスター、クローバー、扇動岐路、そして玄武明良に扇動美鈴。この五人』

「…」

『ああ、もしかして五人じゃなく四人かな?はは…悪いけど青い血相手に誤魔化しは通用しないよ?』


楽しそうに世間話をするような青頭千里。

それは確実にクローバーの正体を知っている口振りだ。

少年らしき人物は特に動揺せずに、拡散時刻を映像データとして送信。

ミニテレビに視線を向ければ、画面向こうの相手は苦笑している。

まるで分かっていたことだけど、図星を言われるのは困るな、という気楽なものだ。


『ウィルスも厄介だけど、青い血はもっと厄介だね。伊達に長く生きてるわけじゃない…』

「…私はどうすれば」

『僕はそこには行けない。だから君が僕の指示を正確に再現する。それだけでいい』

「了解しました。では、オーバーヒート対策の氷を念のため用意してきます」

『君の体なら冷えるシートでいいんじゃない?君って真面目に天然だよね』


しかし少年らしき人物は大まじめな顔でタライに氷を入れ始める。

その光景をテレビ越しに見ている人物、クローバーは肩を竦める。

少年らしき人物はビニール袋に氷と水を詰め込み、頭の上に乗せて改めてパソコンの前に座る。

クローバーはそれを見て昔の漫画みたい、と本で散らばった部屋の中から昔の漫画を探そうとする。


「博士。片づけすらまともに出来ないんですから止めてください」

『うう…昔は料理とかも出来たんだからぁ…年は取りたくないねぇ』


そう言って背伸びをしてクローバーは散らかった部屋の、唯一片付けられてるソファに寝転ぶ。

面影がどこかで見たことあるような顔立ちで、しかしどこか違和感を感じさせる。

青年の姿をしているのに髪の毛は銀髪というより白髪で、服装も世捨て人に近い白衣姿。

白衣というよりは白いローブと言った方がしっくりくるくらいだった。

手にあるタッチ式のパソコン、そこには少年らしき人物が映っている。

ミニテレビの映像と繋がっているパソコンは、クローバーがいる所では少し古い物だった。


「さぁ、今回は本物の命を賭けた合戦だ…頑張って、皆」


懐かしい思い出に語り掛けるような声は、少年らしき人物だけが聞いていた。






マスターはタッチパネルも活用した独自開発のパソコンを操る。

システムには特定の文字列や法則がある。それらをタイピング数を少なくして正確に入力すればいい。

馬鹿正直に文字数一つ一つ埋めるという作業を簡略化した、マスターにしか扱えないパソコン。

キーボードもボタン一つ押せば、該当する文字列がタッチパネルに文字順ごとに表示される。

腕が二本しかないから猫の手も借りたい、ではなく二本しかないからそれだけで無駄のない動きを。

猫の手を必要としないために、一人であらゆる結果が出せるように。

追及して探究して研究した成果がそのパソコンであり、青頭千里には全く扱えない代物である。

職業柄最新機器は一通り扱える青頭千里でも、マスターの領域は度を越していた。

声も出さないまま作業を続け、画面表れる文字は滝のように速く、勢いよく流れていく。


「うーん、壮観…やっぱりマスターは味方にしとくのが一番だね」


返事が返ってないことを分かりきっている青頭千里は感心したように言う。

青い血は青頭千里にとって生まれながらの性質であり、最大の秘密である。

そして一番憎らしい存在でもある。だから赤い血が欲しいが、それを生み出す手段を知らない。

だからこそあらゆる分野での天才達を凌駕する才能、支配者という意味を持つマスターを探し出した。

見つけたのは錬金術の時代から生きる、ある錬金術師の名を受け継ぐ存在。

人間の枠、人生の中で膨大な知識と研究を受け継ぎ、さらに持ち前の才能を満開にする人間。

その錬金術師の名もまたマスターであり、目の前にいる美女こそが名を受け継いだ存在だった。

彼らはその才能を開花させるためなら善悪を問わず、協力者に協力する特異な一族。

血族ではない。血の繋がりでは受けきれない才能と結果の数々を彼らは受け継ぐからだ。


青頭千里は長い人生の中で、マスターを時に敵に、時に味方にしてきた。

そして今回の代では味方にすることに成功し、その受け継がれた才能と結果を活用している。

まずは協力を申し出る。しかしそれだけではマスターは味方しない。

彼らを味方にするには、研究を捧げてもいいと思えるほどの新しい研究内容を見せなくてはいけない。

だから青頭千里は青い血をマスターに話した。するとあっさり協力すると返事を貰えた。

今では数々の研究を提供してもらえる代りに、青い血についてあらゆる調査をさせている。


「青い血はアトランティス、消失文明…あらゆる時代でも解明できなかった…そりゃあマスターの気を引くよね」

「長く生きてる分、私達が知りえなかった知識も有してるからな。利用し甲斐があるよ」

「うわぁ、ドイヒー…って、もういいのかい?」


今マスターが行っていたのは演算装置が計算するであろう内容の逆算。

さらにはウィルスを撃退するワクチンの基盤づくりに、計算の先手読み取り。

声を出さずに作業してたとはいえ、そんなにすぐ終わると思ってはいなかった。


「ファイアーウォールを突き破ったデータがあったからな…ただ」

「ただ?」

「システムエッグ…の演算内容の先取りはできなかった」


珍しいことだと青頭千里は目を丸くする。

なぜならマスターは基本できないとは言わない。

何も言わずに行動に移し、そして結果を目の前に提示してくる。

その結果に失敗という二文字はなく、青頭千里は心の底からそれを信頼していた。


「というか…システムエッグがこれ以上演算する必要がないからだ」

「それはどういう意味?」

「ウィルス自体に自律思考を持たせて、またその思考に介入する第三者の存在、二番がいる」

「…それって」


ウィルスとは破壊やクラッキング、システムに異常をきたすものである。

そこに自律思考を持たせるということは、自ら現場に合った形へ進化できるということだ。

さらに悪意ある第三者が自律思考をある程度誘導できるとしたら。


「インフルエンザが意思を持って進化。その進化の方向を二番が決める、と言えばわかりやすいか?」

「…それってどんな環境や人間でもインフルエンザになるじゃないか。滅亡一歩手前みたいな」

「そう災厄だ。あ、最悪をかけた駄洒落じゃないからな。だからシステムエッグはこれ以上演算する必要がないんだ」

「ああ、なるほど。ウィルスに意思を持たせて、その意思に介入できるシステム構築さえすれば完璧だもんね」

「そうだ。全く消失文明はとんでもない物を作ったな」


忌々しそうに言いながら、どこか楽しそうにしているマスター。

というのもシステムエッグはある意味、マスターが求める究極の形の一つである。

あらゆる分野にて威力を発揮し、無駄のない演算で結果を出す。

そして無駄口は聞かない、自分の意思すらなく善悪を超えている。

決め手は使い手だけ。写真でしか見たことない宝石の象ったようなインペリアルエッグに近い姿。


「六人の魔女が作った…ねぇ。いいねぇ、非科学的で、暴きたくなるよ」

「生き生きしてるね。でもまずはウィルスをどうにかしてね」

「分かってるよ。たまには手を組んで仲良しこよししてやるよ」


表示されたウィルス拡散時間まであと二時間。

地上が大きく動き出す中、様々な思惑が地下へ向かう。






そしてこれは竜宮健斗がミラーハウスで崋山優香に再開したと同時刻の出来事である。



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