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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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楽しくなると思ったかい?

「いっきゃあああああああああああああ!!?」

「け、ケン!!ま、回し過ぎよ!!」

「なに言ってんだよー!これくらいじゃないと楽しくないだろー?」

<し、しかしこれではぁああああああああ…>

「あ、セイロンが遠心力で飛んでいった」


セイロンは高速回転するコーヒーカップの遠心力に負け、竜宮健斗の肩から飛ばされてしまう。

翼と内蔵されている反重力装置で体を回転させながら空中で静止する。

人間だったら額に汗をかいていただろうが、ロボットなので表は平然としている。

また飛ばされては仕方ないので、コーヒーカップが止まるまで空中を飛んでいようと思った矢先。

下の花壇の影に竜宮健斗達を見守る影がいくつか。


「デートかぁ…自分も明良くんとしたかったなぁ」

「都子の野郎は…本当に優香から横取りできるのか?人を心配せさせる鈍間め。健斗は禿げろ」

「いやー、ホンマはデバガメ好きちゃうねんて?でも気になるやん…」

「ドキドキワクワクなんよ。いやー気になるんよー」


その姿を確認して近付こうとしたセイロンだが、鞍馬蓮実が動作で来るなと合図する。

どうやら秘密の尾行のつもりらしいが、多人数な上に巨体の鞍馬蓮実のせいで丸見えと変わらない。

竜宮健斗ならばれないだろうが、女子二人にはいずれ気付かれるだろう。

しかし人の恋路が気になるのは人間の性だろう。セイロンは気を使って見なかったことにした。

コーヒーカップがようやく止まり、意気揚々と竜宮健斗が出てくる。

崋山優香と凛道都子は足をふらつかせ、キッキは変わらない足取りでその後ろを追う。


「セイロン大丈夫かー?」

<健斗、テンションが高いのはいいが周りを少し気にしろ>

「う…き、気を付ける」


セイロンの注意に竜宮健斗はすぐ頷く。

素直なのはいいことだが、竜宮健斗は元来馬鹿であるため忘れる可能性が高い。

そこでセイロンは注意をする際には長くせず、簡潔に用件だけを伝える。

それだけで半分の確率で竜宮健斗は気を付けるようになる。

もちろん残った半分はそれでも忘れてしまう、どうしようもない結果である。


「み、都子ちゃん…大丈夫?」

「う、うん…わ、ワイルドだと思えば…」

「いや、あれはただの馬鹿だからね。変なフィルターかけちゃだめだよ?」

「…うーん、荷物を飛ばされないようにする工夫が必要かな」


実際に乗り、セイロンが飛ばされたのを見てキッキが考え込む。

セイロンが意思を持って飛べたから良いものの、普通の荷物だったら誰かに当たってしまうかもしれない。

アナウンスによる注意呼びかけ強化と、大きな荷物は事前に預かる対策が必要かと次々と計画を立てていく。


「じゃあ次はミラーハウスだ!!」

「ちょ、ケン待ちなさいよ!!」

「ま、まってぇえええええぇえぇぇ…」

「うわっ、手を急にひっぱられると危ないよ」


竜宮健斗に手首を掴まれ、キッキは引きずられるように次の目的地へ向かう。

その様子を見守っていった猪山早紀達の数人が舌打ちをする。


「そこで都子の手を取れよ、馬鹿、鈍感、罪作りすぎて磔にされろ!!」

「ホンマなんでそこで男の方の手を掴むんや。阿保ちゃうか」

「…そういえば最近自分、明良くんと手を繋いでない…間に美鈴くんがいるような…」

「和やか家族だと思えばいいんよー」


夫婦仲が最近冷めている妻の愚痴を受け止めるかのように鞍馬蓮実がアドバイスをする。

そして密かに竜宮健斗達の後を追いかけていく。ダブルデートの行方を知るために。


追いかけるメンバーの少し横の物陰に、実はキッキが心配で追いかけているロボットが二体。

花の妖精のような姿のフローゼとゴーレムのような姿のレムだ。

この二体はピエロのロボットと一緒に初めて作られたロボットである。

そのためキッキへの愛情と尊敬が他よりも強く、まるで家族のように錯覚している。


<だ、大丈夫かしら、オーナー…お友達出来るかしら?>

<心配ですよね…なんか悩んでいるようでしたし>


音声には出さずに通信で会話をし、鞍馬蓮実達より隠れてる状態でついていく。

しかしやはりこちらも巨大な体のレムがいるため、ばれるのは問題である。

ロボットと子供達の愉快な追走劇が繰り広げられる中、竜宮健斗達はミラーハウスへと入っていく。


<しまったわ!?これでは出口で待つしかない!!>

<大丈夫です!!監視カメラ映像を通信で受け取れば!!せいっ、データ受信モード!!>


「大変なんよ!?これじゃあ四人の様子が…デートの行方が見れないんよ!?」

<安心するべ!!セイロンに映像データを送ってもらうよう通信するベ!!届けオデの電波!!>


行動が同じだが目的が違う二つのグループ。

これまた同じ行動に出てくる。

そしてベアングの電波を受け取ったセイロンは昔の部下から受け取った内容に溜息をついた。


「どうしたセイロン?」

<…あー、うん。馬に蹴られればいい内容の通信を受け取っただけだ」


と言いつつもセイロンは視覚機関から得た情報データをベアングに送る。

情報は強みだ。送った情報を見て、竜宮健斗の鈍い感覚に働きかけてくれるなら、と思っているのだ。

そしてできるなら呆れつつもいつも一緒にいてくれる崋山優香に心が傾けばいいと、身内の贔屓を込めてみる。







一人の男が電子音の響く部屋で笑う。

目の前にある機械を愉快そうに撫でまわし、独り言を呟く。


「よく私は血も涙もないと言われた…涙はないが血はあるのにな」


電子音が応えるようなリズムで鳴り響く。

しかしすぐに通常の作業音に戻る。

男は気にせずに独り言を呟きつつ、機械のボタンを押す。


「まぁ血と言っても青いのだがね」


近くにあるモニターには送信開始のウィンドウが表示される。

データ名はAliceとある。穴に落ちて夢を彷徨う少女の名前から名付けられた。

後に続く拡張子、それはウィルスを示す名前。

送信先はワンダーグラウンド管理室となっている。

膨大な量だが、あと三十分もすれば全て送信できる量である。


男は笑い、部屋から去る。機械、作動しているシステムエッグを残して。








鏡が多面的に、そしてあらゆる角度から来訪者を映し出す。

通路となっているが天井から壁、床までも鏡張りのせいで今自分が歩いているのかも分からなくなる錯覚。

セイロンは飛んでいるのが気持ち悪くなって、竜宮健斗の肩に乗っている。

そして竜宮健斗は一人で先を走ったせいで三人とはぐれてしまった。


「おーい、優香?都子?キッキ?」


声を出しながら歩いていくが、万華鏡のように映し出される姿は自分しかいない。

意外と広いのか返事はこない上に、いくら歩いても誰とも会わない。

首を少し傾げる頃にやっとキッキに似た姿を見つける。

だがその姿はいくつもの鏡に反射しており、本物かどうか判別できない。


「キッキ、そこに…」


声をかけた途端、鏡に反射していたキッキが移動を始める。

それを追い、竜宮健斗は走る。

白い髪、赤い目に白い肌したキッキを目印に。

走って走って、見失っては見つけてまた走る。

まるで誘われるように、どこかの童話にある主人公のように。


「キッキ、待てって…」

<健斗、おかしくないか?いくら何でも広すぎ…>


セイロンが疑問を投げるが、答える暇もなくキッキは姿を消そうとする。

見失わないように竜宮健斗は追いかける、鏡が方向感覚を狂わせる。


「キッキ!」


こっち。


口だけがそう動いてて、声は聞こえなかった。

本当に追いかけているのはキッキなのか自信がなくなる。

よく見れば赤い目に白い髪、白い肌などはほぼキッキと同じだ。

しかしどこか成長したような姿に、別人だともいえる気がしてくる。

何度も角を曲がって、走って、また曲がってを繰り返した最後に。


竜宮健斗はマンホールのような穴に落ちていった。





ミラーハウスから出てきた崋山優香は驚く。

既に出口に出てきたと思っている竜宮健斗はおらず、なぜか鞍馬蓮実達が待機しているのだ。

凛道都子も驚きで声が出ず、キッキは物陰にいたロボット二体、レムとフローゼに胡乱気な目を向ける。


「け、ケンの馬鹿…迷ったの、こんな小さなアトラクションで!?」

「迷う仕組みじゃないはずなんだけど…レム、監視カメラの映像とか…」

<そ、それがですね…なぜか健斗様だけ見失ってて…わ、分からないんです…」

「ベアング、確かセイロンの映像を…」

<それが困ったんだべ…通信途切れて何も分からないんだべ」


キッキは急いで管理室に行くと言い、その場を後にする。

フローゼはアトラクションを一時休止して中を見てくると指示を出す。

その間にレムは監視カメラのデータを受け続け、どこで消えたかを探ると言う。


「あ、あの…私もう一回中に入ってもいいですか?」

<しかし…貴方まで消えると…>

「でもあの馬鹿を迎えに行くのいつも私の役目だから…お願いします」


崋山優香は頭を下げてお願いする。

するとフローゼは少し考えた後、独断という形で発信機を持ってならと条件を付ける。

その条件を承諾し、崋山優香はミラーハウスに改めて入る。

様子を黙って見ていた凛道都子は少し悔しそうに、でも納得した顔で言う。


「やっぱり時間の差は埋まらないけど…愛は深さですから!!」

「へーへー。おら、鈍間眼鏡、俺達は神楽んとこ戻るぞ」

「そうなんよ。なんか調べものしているようなんよ」

「これ以上調べて何が出るっちゅーねん…」

「自分も明良くんのお手伝いしよーっと」


鞍馬蓮実達五人がそう言って図書館と博物館へと向かう。

その後ろでデータを受け取り続けているレムは動かない。

まるで何かに乗っ取られているように静かに、その場から動かない。

それがいったい何を意味するのか、この遊園地で今それを知る者はいない。

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