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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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13/36

魔法の思い出

扇動美鈴と猪山早紀を先にお仕置きを受ける条件。

それを呑むことにより、キッキはわずかな時間を玄武明良に与えた。

二人がゴーレムの形したロボット、レムに連れていかれる前に小声で謝る。

すると驚いたような顔をした後、すぐに笑って声を揃える。


『待ってる』


そう言って二人とガトを含めたアンドールは先に連れていかれた。

玄武明良は表面上は冷静を装い、憮然とした態度で椅子に座る。

しかしその中身ははらわた煮えくり返るほど、激しい怒りが渦巻いている。

今すぐにでも目の前にいる地底人に、何様だ、と叫んで罵倒したいほど。

だが賢い選択ではないことを玄武明良は承知しており、理性で怒りを押しとどめる。

言葉は武器、会話は手段、感情は爆弾、それら全てを己の中で完璧に操る。

使いどころを誤れば、己すら傷つけかねない要素を的確に駆使する。

笑顔で先に行ってしまった二人のためにも、玄武明良は己自身に失敗の二文字を許さない。


「で、何が聞きたい?この遊園地のモデルとか☆あー、でも著作権とか地上にはあるんだっけぇ?」

「…そうだな。聞いてみたい。この遊園地のきっかけを」


お茶らけるキッキを用心深く見据え、玄武明良は聞く姿勢をとる。

キッキはつまらない話だよー、と真面目に話す様子を見せない。

それはまるでわざとふざけた態度をして、何かを誤魔化そうとしている子供のようだった。


「…他人の思い出話が好きだなんて、変わってるねー」

「歴史を見ろ。あれは全部他人の思い出だろう?それと変わらないさ」

「そう言われちゃったら………それって君にとって勉強ってこと?勉強つまらないじゃーん!!」

「ふっ。悪いが俺は地上では天才と呼ばれていてな…勉強大好きがり勉くんなんだよ」


そんな不良みたいな外見で、がり勉とか似合わねーとキッキは心中で呟く。

他に誤魔化そうと考えてみるが、先程の天才発言からするとどんな返しをされるか分かったものじゃない。

キッキは少し上を見上げ、深く息を吸い込んで吐き出す。

体中の悪い物も全てを吐き出すような、純粋だった頃を思い出すような呼吸。





「夕焼けの中さ…兄さんにつれられて初めて地上に行ったんだ」









同い年の地底人の子供がいない幼少時代。

いつも遊び相手になってくれたのは優しい兄。

たった一人の兄弟、病で寝たきりの両親に代わり育ててくれた。

そんな兄がある日、地上に行かないかと誘った。

地上には肌を焼く悪魔がいると教えられていたキッキは最初首を振った。

それよりも大好きな絵本を読んでほしいと、ボロボロになった本を差し出した。

しかし兄は優しい笑みで、悪魔がいなくなる魔法の時間に出れば大丈夫と言う。


「魔法の時間?」

「そう!悪魔の真っ赤な炎が空を赤色に染めて、夜の女神の藍色と混じって鮮やかな色を生み出すんだ」


地上の人間も、それを魔法の時間、マジックアワーと言う。

地底人の視力はそんなに良くないが、色の判別は可能である。

キッキは魔法と聞いて、どうしようかと迷い始める。

地底には技術や科学はあっても、魔法というものはない。

全てが理路整然とした結果が並ぶ、生き残るために現実を追求した文化。


「で、でも…地上に出てどこに行くの?」

「遊園地!子供達が大好きな夢のような所…俺も昔父さんと一緒に行ったんだ」


それを聞いてキッキは理解した。

両親の病が良くなることはもうない。

父もキッキを連れていけるほどの体力はなく、今動ける家族は兄だけ。

兄は両親との、いや家族との地上の思い出がある。

しかしキッキは地底人最後の子供。家族の思い出も少なく、地上にも行ったことがない。

病は少しずつ地底に蔓延していき、いつ我が身に降りかかるか分からない。

だから兄は動ける内に、大切な弟に地上の思い出を作ろうと思ったのだ。

キッキはその優しさが嬉しくて、満面の笑みで行くと告げた。

そうすると兄も嬉しそうに満面の笑みで返してくれるのだ。


少し時間が経ち、悪魔が去る時間帯。

夕焼け空の頃、秘密の通路を使ってキッキと兄は地上に出た。

初めて見る地上、秘密の通路を抜けた先には様々な人が行きかう駅。

大人から子供まで、地上の人が溢れた場所。

地下という狭い世界で生きなくて済む、世界の広さを知る人間達。

キッキは目を輝かせて見回す。とても珍しい物を見るように。


「改札で切符を買って…電車に乗るんだ」

「でんしゃ?」

「んー…電気で動く乗り物だよ。色んな人を乗せる、カッコいい乗り物」


はぐれないように手を繋ぎ、二人は切符を手にして構内へ向かう。

駅のホームで待っている間、キッキと兄の白い髪や赤い目を見て怪しむように話す人がいた。

しかしキッキや兄にとってこれは生まれ持ったもので、当然の容姿である。

だから気にすることなく、途中興味本位で聞いてきた人間は適当にあしらう。

電車がやってきて、キッキが初めて見たと嬉しそうにはしゃぐ。

そんなキッキが一人で勝手に行動しないように手を繋ぎ、座席まで連れていく。

一つだけ空いていた座席にキッキを座らせ、兄は吊革に掴まって窓の向こうを指差す。

キッキは振り向いて、窓の向こうに広がる地上の空を眺める。


赤と青が混じり、紫色が出来上がる。

街がある所では小さな白い灯りが、星のように散らばって暗さを緩和する。

川は沈んでいく太陽の光を受けて、きらめきながら輝く。


それら全て朧げではっきりとは見えなかった。

しかしキッキはそれでも美しいと思った。

本当に魔法のような空、多くの人々が作り上げる星のような灯り。

電車内も静かで、隣に座っていたお婆さんと目が合うと、にっこりと微笑まれた。

キッキも微笑みがえすと、お婆さんは目を細めて兄に、明るい弟さんですねと言う。


「ええ、大切な弟です」

「ふふふ。仲も良いのね。良かったらこれ、二人でどうぞ」


そう言ってお婆さんは買い物袋に入れていた蜜柑二つを、兄に手渡す。

兄はお礼を言い、電車から降りたら食べようなと言う。

キッキは初めて見る果物に興味津々で、お婆さんにありがとう、とお礼を言う。

お婆さんは微笑んだまま、次の駅で降りていく。


少しずつ外が暗くなり、乗る人も少なくなっていく。

兄がここで降りるぞと言い、キッキに手を差し出す。

不慣れな地上だからはぐれるわけにはいかない。

二人で手を繋いで、電車から降りる。

駅から少し歩いている間に日はすっかり落ちてしまった。

しかしキッキの眼前は明るく、光り輝く場所が姿を現す。

太陽よりも優しくて、色鮮やかなライト達が照らす夢のような場所。


「ここが…遊園地!?」

「そうだよ。さぁ、遊ぼう」


兄に手を引かれ、笑い声響く穏やかな光の洪水へと足を踏み入れる。

見る物全てが新鮮で、乗る物全てが楽しくて、食べる物全てが美味しくて。

キッキは夢の中で遊んでいるようで、気付いたら兄の手を離していた。

いきなり一人になってしまい、不安で泣いていたところに一人の少年が声をかけてきた。


「なんだ?お前迷子なのか?」

「うっ、ひっく…うん。おにいちゃぁああん…」

「俺もなんだよ…兄ちゃんと姉ちゃんに怒られるし…あそこの店員さんに聞いてみよう」


少年が差し出した手をキッキは握り返す。

花の妖精のような姿の店員は笑顔で対応してくれて、園内放送するから少し待っててねと言う。

そして待っている間は遊園地のマスコットキャラクターとピエロのスタッフが傍で励ましてくれた。

少年はずっと泣き続けるキッキの手を握ってくれた。そして何度も大丈夫だと言う。


「なんで…大丈夫なの?」

「遊園地だから!皆を笑顔にしてくれる場所なんだ」

「皆を…笑顔…」

「応!だから、お前もう泣くな!絶対大丈夫だから!」


少年が快活に笑って、キッキを元気づける。

するとゴーレムロボットのような着ぐるみを着たスタッフが兄を連れてきた。

キッキはすぐに兄に駆け寄り、その胸で泣いた。

兄も心配だったのか少し怒った口調で、勝手に手を離しちゃ駄目だろう、と言う。

キッキは目をこすりながら何度も頷き、さっきまで一緒にいてくれた少年の方を振り向いた。

しかし少年の姿はなく、店員に聞いてみたら兄が来たすぐ直後に家族の方が迎えに来てくれたと言った。


「おにいちゃん、遊園地ってすごいね!!」

「そうだろう?キッキ、この遊園地が地底にもあるといいと思わない?」

「うん!!あったらきっと皆笑顔になるよ!」


兄の言葉に何度も頷き、夢を膨らませていく。

もしこんな楽しい場所があったら、病気も消えてしまうかもしれない。

病気で寝ている父や母が元気になるかもしれない。

地底人が全員笑顔になって、また繁栄するかもしれない。

そしたら地上の人間と新たな交流を持てるかもしれない。

すると先程の少年とまた出会えて、友達になることもあるかもしれない。


それはとっても素敵なことだな、って思い始めた。




キッキは地底に帰ってすぐに、遊園地に必要な物を集め始めた。

アトラクションに関する知識、地底人は少ないからスタッフは人工知能を持ったロボット。

遊園地となる場所、建物を形作る鉱石、ライトを光らす電気。

地上の子供達が来れるように、秘密の通路を改造して電車の路線も作る。


キッキが一人で行動している間に、病は少しずつ広がっていった。





「…もちろん、途中で農薬除去する装置や生活を手助けするロボットの発展もあった」

「お前一人になった理由はそれだけじゃない…だろう」

「そう。人間も地底人も…追い詰められたら、やることは同じだね…」


「…システムエッグ。繁栄、もしくは命に関する演算をさせたな」


かつて古代に存在した文明を滅ぼし、跡形も消そうとした演算装置があった。

本来は作物の出来具合計算や、天候予測、病流行の前兆など。

生活の中で民衆を助けるために作られた、最高の演算装置。その名はシステムエッグ。

イースターエッグを宝石で飾ったような、インペリアルエッグとも言える姿のコンピューター。

それはある程度の演算までなら、何事もなく答えをはじき出す。

しかし度を越した、人間の欲望を現したような不老不死の方法など。

システムエッグはそれらの演算には警告を出し、演算をすれば方法を与える代わりに絶望も同時に与える。

パンドラシステムと言われる、人間が絶望を恐れて演算を止めるために作られた予防システム。

しかし人間は愚かにその予防システムを無視し、アニマルデータと言う不老不死によく似たシステムを手に入れた。

代わりにシステムエッグを作った文明は滅びた。跡形さえ他の文明に吸収され、名前すらも残らないほど。


調査をしている時に見た、空の展示物。


使った後だと、玄武明良はすぐに察した。

そしてキッキ以外に地底人がいない理由も。


「…偉い人がさ、願ったんだ。不老長寿を」

「不死ではなく?」

「そしたら昔消えた文明の二の舞になると思ったんだろうね…あまり変わらないのに」


キッキが忌々しそうに顔を歪める。

パンドラシステムは願った個人ではなく、願った個人が所属する文明自体を対象とする。

それは消失文明が証明している。しかし他人を巻き込んだとしても、願わずにはいられなかったのかもしれない。

誰だって、とは言わないが死は生物にとって本能的な恐怖だ。

耐えられる者もいれば、耐えられない者もいる。

たったそれだけの話だ。


「…咲いたんだ。人をコールドスリープさせるかのような薬を作れる花を」


そう言って玄武明良の目の前に白い花を出す。

地上の花よりは淡い、下手したら透明に近い色を持った花。

一見すれば美しい、珍しい花という一言で終わるはずだった。


「代償はなんだ?」

「…この花は薬であると同時に毒なんだ」

「毒…地底人だけに影響があるものか?」

「うん。ついでに言えば…地底人は近親婚が多いんだ」


キッキは不自然なほどの白い肌、白い髪、そして赤い目をしている。

地底人は全員同じであり、太陽の下に出ると焼け爛れるという。

それを聞き、実際にその姿を見た時玄武明良は地底人の正体を知った。


アルビノ、先天的に色素がない動物は色を持たず、目の色は血液の色である。


地底人は地中に住んでいるから目が悪いとはあったが、アルビノ自体も視力はあまりよくない。

それも光を受け止める色素がないため。おそらく地中に潜る前までそのことを知らなかったのだろう。

さらに太陽の下で生きれない、という病気もある。肌が光に過敏だったり、紫外線など原因は様々だ。

アルビノは近親婚で出来やすい、だからこそ実験用のラットやウサギもアルビノが多い。

恐らく地底人はそれらのメカニズムを知らずに、近親婚を繰り返した。

近親婚は遺伝子が似通る、つまり同じ病気にかかりやすいということだ。


「毒は色素がある人間には全く影響はない。けど…」

「色素がない地底人は…知らずにその毒がある花を育て、不老長寿の薬にしようとした」

「根の所にね、微弱ながら毒素がある。それが地中に染み込むんだ…そして地下水に行き渡る」

「ある程度距離があればなくなる毒も…大量に育てた近場の地底には影響が起こる」


キッキの話によると毒は光と熱に弱く、微弱であるため地上や他の地中には全く影響はないらしい。

地下には火山熱などがあるため、遠くにもいかない。まさに地底人だけを狙った毒。

その毒は色素があれば防げるが、色素がない地底人には防ぐ術がなかった。

アルビノを治す術はこの現代では見つかっていない。例えどんなに熱消毒しても、どこで摂取するか分からない。


「…僕はたまたまその毒への対策があった。でも母さんや父さん…皆は…」


病気が蔓延している中では水はとても必要な物。

毒がある水とは知らずに摂取し、少しずつ体内に蓄積していった。

そして溜まりきった時に、原因も分からないまま死んでいく。

遊園地を作っていったキッキは、途中で墓を作る作業にかかりきりになってしまった。

体が弱っていた者から死んでいき、気付いた時には兄とキッキを入れて五人に減っていた。

残りの三人は女性で、薬によって仮死状態で保存して欲しいと二人に言い残し眠った。

兄弟は花を捨てることもできず、対策を立てて育てるしかなかった。


「地中にある水晶、遊園地のアトラクション用に採取していたんだけど…」


花を置いて目の前に出した水晶は、内部で光を乱反射させる。

最初は小さな光も、乱反射していくと強い光に変化した。


「この水晶の光を当てると、毒は消える。だから僕はたまたま平気だったけど…」

「…先程の話に出ていた兄か?」

「うん。兄さんは…毒が溜まって、もう死ぬ一歩手前。解毒することもできないほど…」


気付いた頃には既に遅かった。

兄は自力で立ち上がることも出来ず、やっとできた解毒薬も役に立たなかった。

だから花の薬を使って、眠らせている。水晶が光を乱反射させ、花の毒を消す、水が穏やかに流れる静かな場所で。

死んではいない。しかし生きているかと言われたら頷くことはできない状態。

キッキは本格的に最後の地底人となった。墓を作り終え、残った他の四人も眠った時。

子供の頃夢見た、遊園地を作り開園することを目指した。

その際に真っ暗な地中で起こった全てを知られないよう、ルールも作った。

墓場の上にアトラクションを作り、スタッフであるロボット達も地底人の技術を集めた。


目の前にある残酷な現実を消すように、夢の場所を作った。





「思い出話は楽しかった?」

「いや、哀しかったな…」




状況は違えど、玄武明良は一人残される孤独を知っている。

ただ玄武明良の場合、猪山早紀がいた。だがキッキには誰もいなかった。

狂ったこの状況は、その差異にあるのだろう、と少し遠い目をする。


「…解毒薬はあるが…地底人は十人も残ってない…種の繁栄に必要数は百と言われているから…」

「二十分の一。システムエッグは確実に、地底人の文明を滅ぼしている」


たった一つの機械に身の程知らずの願いを演算させた結果。

二つ目の結果を目の当たりにし、玄武明良は一つの危機感を抱く。

システムエッグは展示物ではなくなっている…なら今の所在はどこか。

もし地上の文明が手に入れたなら、地上の文明が滅びる目に合う可能性が高い。


「キッキ。システムエッグは倉庫にでも閉まっているのか?」

「ん?ああ、青い血の人にあげた」


あっけらかんと不明なことを言ったキッキに、玄武明良はすぐに二の句が継げなかった。

まず青い血の人、というのが不明だ。SFの宇宙人ではよくある現象だがあれはフィクションだ。

下手したらファンタジーに抵触しかねない単語に、わずかに鳥肌を作る。

さらに言えばあんな危険物をあげたと言う。危険と分かっている物を簡単にだ。


「安心して。青い血の人は文明を持たない。それに…彼等は不老不死とか必要ないから」

「…それは地底人なりのジョークなのか?」

「いや全部事実だけど…あ、ああ!?そうか、君達は青い血を知らないのか…」


思い出したように声を出し、失態したという表情を作るキッキ。

青い血は地底人にとって普通のことなのかと、キッキを凝視する。

アルビノの目が赤いのは、眼球の下の血が赤いため。

だからもしキッキが青い血なら、目は青くなるが、赤い目のためキッキが青い血というのは除外される。

キッキはこれ以上話すかどうか迷い、玄武明良にもうお仕置き入っても良い、と聞く。


「君はなんか大体理解してるから話しやすくて楽なんだけど…でもなぁ、青い血知らないとこの先の話が…」

「じゃあ、青い血が関係ない話で…アニマルデータのこと知ったか?」

「…知った。最初はこれで…と思ったけど、今は悩んでる」


キッキが顔を俯かせ、下唇を噛む。

まるで溺れているのに、救命浮き輪を掴めないような、変な違和感を持たせる。

玄武明良はおそらく捕まった誰かのアンドールを調べられているだろうとあたりをつけていた。

だから知っていることに驚くことはないが、切羽詰まっているはずのキッキが戸惑う理由が分からなかった。


「知ってる人が研究してて…アニマルデータは、人間を捨てる、ことなんだって」

「は、誰がそこまで知っているんだ!!?だってアニマルデータは…俺達の間でしか解き明かして…」

「うーん、これも青い血に結局関係しちゃうし…」


また出た単語、青い血に玄武明良は困惑を深めていく。

クラリスを通じて知った、アニマルデータの実態。

それを知った子供達と、一部関係する大人達は決して口外していない。

口外したとしても、そこまで簡潔に追求できる人間はいないはずだ。

それが存在するということは、新たな脅威になる恐れがあるということだ。

もし仮定でいいなら、その脅威は青い血をしている、つまり人間ではなくなる。


「…兄さんが蘇えるなら…太陽の下に出られるなら、とも思ったけど…」

「けど?」

「思い出しちゃうんだ…手を繋いだ時の温かさとか、記憶とか…」


遊園地に向かう際にはぐれないように手を繋いだ。

電車の中でお婆さんと微笑み合ったこと。

魔法の時間と言われるほどの景色を見たこと。

迷子になった時に助けてくれた少年の手。

遊園地を作ろうと夢見たこと。


「それらはデータ化や…人間を捨てて…手に入るものなのかな、って」


ゴーレムのロボットであるレムの体を触った時、人間と変わらないと思った。

しかし優しいレムすら、よく考えてと言った。戻らない物があるのだと言った。

シュモンは怒った。アニマルデータはいいことばかりじゃないと。


それでも太陽の下に出られるし、病気や毒に恐れないですむメリットがある。

でもデメリットの全貌がまるで見えてこない。良い所だけしか見えず、逆に怖くなる。

本当にいいのか…でもこのままだと兄は目を覚ますことがない。

激しい葛藤がキッキの中で暴れるが、表面に出ることはない。


「…迷う、んだ」

「……迷えばいい。でないと、きっと俺達みたいに…」

「え?」

「いや、なんでもない。どうやら、これ以上話しても駄目なようだ」


玄武明良は思い出す。目先のメリットだけでデータ化された少女のことを。

その少女一人に何人も巻き込まれ、苦しんだことを。

少女すら苦しんで、消えていった。その結末は今も消えることなくしこりを残す。

だからキッキには迷ってほしいと願う。あの悲劇が繰り返されないように。

答えがない問題には、迷って彷徨った後に出した答えが己の納得できる答えのはずだから。

そしてキッキの全てとは言わずとも、おおよそを掴んだ。

後は残った者、これからやってくるであろう者が助けてくれると願うだけ。

これ以上話しても、青い血という存在が邪魔するだけだと判断した。


「じゃ、じゃあ…お、お仕置き…」

「キッキ」


お仕置きすると決めているものの、戸惑っているキッキに玄武明良は話しかける。

地底遊園地のオーナーで、最後に残った地底人で、子供達を消した張本人で、ルールを作った独裁者。

そしてとても孤独な子供。玄武明良はそう理解した上で、これから起こるであろう出来事を予想して言う。


「これからきっと予想もしない奴がくる」

「え?それって…」

「とんでもない大馬鹿野郎だ。正直、奴に命を預けるとか冗談じゃないが…」


一呼吸置き、懐かしむような、呆れるような表情で続ける。













「命は賭けてもいい奴だ」












ルール4.キャストや他のお客様に暴行を加えないこと



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