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ANDOLL*ACTTION遊園地編  作者: 文丸くじら


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一難去ってまた一難

スコップで土を掻き分け、ドリルで壁を削る。

水と地盤に気を付けて掘って進んで広げていく。

光が乏しい中で鼻歌を歌いながら、作業して。

ツルハシで石を取り除き、トロッコで運んで選別する。

磨けば綺麗な石は飾りに、硬い石は建築に。

太陽がなくてもこんなに自由。我等は地中に住まう者。


地上の者が言う我等は地底の一族、地底人。自由気侭に生きる者。






最初の異変は扇動岐路がアニマルデータのプログラムから音声習得のデータを消そうとしたこと。

安全面の観点からつけていたプログラムだが、クラリスとの事件で悪用されたことをきっかけに撤廃を命じられた。

扇動岐路本人としてもプライバシーの問題があると思い承諾。NYRONに住むユーザーの子供達を集めた。

しかしどうしても確認されている数より少ない。もちろんエリア事務所に所属していないユーザー、不法者はいる。

だが問題は所属しているユーザー、団員の数が確認されているより集まらないこと。

これはおかしいと思い、各エリアのボス達に確認をとるように要請。


そして発覚するのは行方不明者の数。それは一つの街で消えるには多い数だった。


街の役所に確認すれば実際に子供の行方不明者は、消えたユーザーの子供の数倍。

ではなぜ事件にはならないか。ふらりと消えた子供がふらりと数日後に帰ってくるのだ。

しかし何度も行方不明になっている子もいる。明らかに異常事態である。

そこで警察に連絡をして確認をとる。すると予想外の答えが返ってくる。


子供達は遊園地に遊びに行っているだけだという。少し遠いので帰ってくるまで時間がかかるそうだ。


しかしNYRONにも南エリアに遊園地があり、そんな宿泊するような距離ではない。

なのに子供達は数日行方不明になる。中にはいまだ帰ってこない者もいる。

帰ってきた子供には何の異常も見られないため、警察も戸惑っていること。

そして消える子供達がどこに消えていくか分からないとのこと。

扇動岐路は何度も行方不明になるユーザーの子供を対象に、位置情報を確認する。

アニマルデータ位置情報はGPS機能として残したままなので、有効であった。

もちろんこれもクラリスの事件で悪用されたが、音声情報よりはプライバシーの侵害もなく、むしろ事件を未然に防ぐ役割がある。

NYRONの各地に住むユーザーの子供達。その位置情報の内、いくつか不審な物があった。


それは中央エリア駅で急に発信が途絶えるのだ。まるで深い地下施設に潜り込んだかのように。


そして数日後に途絶えた反応が中央エリア駅で新たに発信される。

まるで戻ってきたかのように、突然のことである。

そこで扇動岐路は友人の息子に尾行するよう頼み込んだ。




籠鳥那岐は中央エリア駅で、赤い鳥のアンドール、シュモンと共にある子供を見張っていた。

その子供は南エリアに所属するユーザーで、何度も行方不明になる子だった。

年は籠鳥那岐より小さいくらいで、問題児のようには見えない純朴そうな子供だった。

子供はアンドールを抱えたまま中央エリア駅のロッカーがある場所へと向かう。

そこは人気の少ない場所で、ロッカーもコイン制のため預けられている荷物も少ない。

監視カメラもそこを除外しているらしく、安全性に問題があるだろうと籠鳥那岐は味気ない感想を抱く。

子供は真っ直ぐロッカーへと向かうと、壁がある裏側へと入り込んだ。

籠鳥那岐は一瞬目を疑うが、すぐにロッカーの裏側を覗き込むと、そこには子供一人がやっと通れるような道があった。

筋金太郎や鞍馬蓮実では少し辛いかもしれないが、高さや横幅を考えると子供一人分だ。

そしてそこは普段消火扉で隠しているようで、子供はその扉を開けて入っていったらしい。


「ロッカーの裏に消火扉…おかしいと思う奴はいなかったのか?」

<人気が少ないし駅は人通りがあるから気にする暇もないのだろう。しかし子供は好奇心の塊だからな>


シュモンが流暢な機械音声で小さく呟く。

アニマルデータは元は人間のデータであり、その存在はあまり世に知られていない。

今は一部の者しか知らないため、混乱を避けるために公の場ではあまり話さないようにしている。

籠鳥那岐は溜息をつきつつ、その消火扉から離れる。そしてエリア管轄委員会会長に連絡をするためデバイスの電話機能を使う。

アンドールについてくるデバイスは携帯電話としての機能を多く持った携帯機であり、親も安心できる機能が多いため大人気だ。

特にぬいぐるみのようなロボット、アンドールがついてくるのが子供にも人気の一つである。


「…会長、道を見つけました」

『すまん、父さん仕事中なんで皆の外見アイドルでパーフェクト美少女である…』


籠鳥那岐は電話を終了するアイコンをタッチし、ポケットに入れようとした。

しかしすぐに返信の電話があったため、ポケットに入れられないまま電話に出る。


「真面目にやれ」

『なっちゃん固いなー。道はどこに?』

「中央エリア駅のコイン制ロッカー…A1出口に近い方だ。その裏側の消火扉の中だ」

『…なんか消火関係って秘密の入り口に御縁があるのかね?で、これから乗り込むわけ?何人で?』

「南エリアメンバー全員と…オマケが三人…あれだ、三つ子と仲の良い東の三人組」

『ああ、うっかり知られちゃったわけか。とりあえず気をつけなよー、なにせ…戻ってこない子供もいるんだから』


御堂霧乃はそう言って通話を切る。

おそらくモニター画面で実際に消える所を確認するのだろう。

籠鳥那岐はデバイスで外で待っている錦山善彦達にメールでA1出口のロッカー前まで来いと送信する。

そして数分後、集まったメンバーで消火扉を開けて潜り込んでいく。

大人達はそんな子供達の姿を気にせず、仕事や約束に向かって外へ歩いていく。

誰もが無関心に通り過ぎていく駅では、子供という存在は消えそうなほど小さかった。






通路を少し歩けば、その先は駅のホームだった。

中腰で歩いていた少し背の高い錦山善彦は腰を擦っている。

ホームでは電子掲示板に十分ごとに電車がくると表示されている。

しかしその行き先は一つしかなく、飾られた掲示板にも行先は一つしかない。

まるでそこへ向かうだけの専用駅。駅名を見れば出発点としか書かれてない。

そして行き先は地底遊園地。近くにある待っている間に座れるベンチにはパンフが置かれている。

籠鳥那岐がそれをとる前に、伊藤三つ子が同じパンフを手に取って眺める。


「地底…地獄の底、ぐすん」

「遊園地に似つかわしくねーな、おい!」

「はははは。名前は…ワンダーグラウンドだって!!」


三つ子がパンフレットを見ている所に仲の良い布動俊介、有川有栖、基山葉月も紙面を眺める。


「ふんふん、子供専用…デートスポットないのかぁ…健斗さんとデートしたかったのにぃ!」

「そういえば優香さんと健斗さん最近いないような?」

「あ、なんか校外学習の準備で忙しいんだって、僕聞いたよ」


六人が仲良く会話しているのを、籠鳥那岐は子供に振り回された父親のような目で見ている。

遊びではないと言っているのに、全く聞き入れられずこれから遊園地という体力使う場所に行くのだ。

行く前から疲れており、もう錦山善彦に世話を全部任せようかと考えている。


「あ、なんか悪寒がするんやけど…」

<それアカンどすなぁ…なんちって>


クラリスの事件以降、時計台にいたアニマルデータ達は流暢に話すようになった。

どのアニマルデータも個性の塊のため、会話の幅が広がっている。

実は記憶を全部思い出したことによるCPUの負担が心配されたが、クロスシンクロのおかげか今は問題がなかった。

むしろ前よりもデータ効率が良くなったため、CPUの負担が減っているという。




扇動岐路及び玄武明良という二人の天才はあることを見つける。

それはアニマルデータと所有者は微弱な電磁波通信を行う。その通信が深くなるとシンクロ現象が起きる。

シンクロ現象はクロスシンクロの一歩手前の現象であり、体に被害が出るのはデータ交換への拒絶反応であるためと理論づけした。

しかしクロスシンクロして以来、電磁波通信が常に行われる状態となっている。

だがシンクロ現象程の深い通信はない。

アニマルデータ達にデータ交換の意思がないため、この通信状態は不可解な物だった。

すると竜宮健斗が感覚的ながらも自己流の意見を言う。


俺達の脳に記憶が保管されてて、必要があったら引き出しているのかな?と。


クロスシンクロを体験した者は、全員が所有しているアニマルデータの記憶を見た。

それは脳がアニマルデータと交換するために別名保存の作業過程ではないかと、玄武明良は言う。

人間の脳とは一種のコンピュータであり、エピソード記憶や知識記憶など分野ごとに保管できる機能を持っている。

エピソード記憶などは約140年分の記憶を保存することが可能、また必要性に応じて処理することが出来る。


アニマルデータ達は元は死んだ人間であり、多くは若い者が多いため記憶年数は少ない。

それぐらいの量なら別人の記憶であっても保管できる、と扇動岐路は言う。

そして日常に支障をきたさないように、保管された記憶はアニマルデータ達だけが引き出せるよう無意識に鍵をかけているということ。

つまり記憶自体はユーザーが保管し、引き出すのはアニマルデータをインストールされたアンドール、インストーラーだけであること。

だからCPUには負担がかからないまま、多くの記憶つまりデータを所有することが出来た。

そのため個人を失わないままアンドールとして活動できるということである。


「シュモンの記憶を俺が持っていても…利用は出来ない、か…弱みを握れんな」

<握ってどうするつもりだったんだ…それでは友達が減…ぐぇっ>


余計なことを言おうとするシュモンの首を軽く絞めて黙らせる。

もちろんアンドールはロボットであるため、息は元からしていないので壊れる心配は必要ない。

しかし視覚的にイメージが悪いため、シュモンとしては止めて欲しい所だった。

数分後、ホームに電車がやってくる。普通の電車と変わらない四角い形の銀色車体に緑のラインが引かれている。

籠鳥那岐達は乗り込むと真っ暗な線路が流れていくのを、窓から見つめる。

車内広告は一切なく、パンフレットが整理整頓されて置かれている。


電子掲示板には、次は地底遊園地駅、と表示されている。


「…遊園地か…そういえば初めてか」

「まじかいな!?え!?家族でいったことあらへんの!?」

「ない。まず両親は仕事漬けだったし、俺も興味がなかった」


籠鳥那岐は特に意味を含めて言った訳ではないのだが、その電車に乗っていた全員に同情の目で見られてしまう。

そして貴重な初遊園地だから、心残すことなく精一杯遊ぼう、と言われてしまう。

鋭い目つきをさらに鋭くしつつ、だから遊びじゃないと何回言えばいいんだと、怒りを滲ませた静かな声で言う。





電車は走る。地の底にある光輝く遊園地に向かって。

遊園地の主は電車を待つ。精一杯楽しんでもらおうと。

そして多くの子供がここに住みたいと言ってくれるように、運営を続ける。


穴を堀り続ける地底人。遊園地の主。入り口でひたすら子供達を待っている。


ドリルを片手に、真っ白な肌を土で汚した姿で、太陽よりも賑やかな光の中で待っている。





出口を作らないまま待っている。



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