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36、冬空に我思う旅の心

 

 いくら雪が降っていないとはいえ、冬の夜はかなり冷える。自販機で缶コーヒーを購入し体の中から暖めようとしても、一度下がった体温はそう簡単に戻るものではなかった。

 駅前のベンチに腰掛けて流れゆく人波を見ても気分はさっぱり紛れない。

 寒い。ひたすら寒い。

 ただそれだけが俺の頭にあって、時間の流れが限りなく遅く感じる始末だった。

 チビチビと缶コーヒーを飲み、寒さを紛らわそうと足掻く。だが、そんな俺の試みをあざ笑うかの様に時間が経つにつれ、ホットコーヒーがアイスコーヒーへと化していく。

 持つ手が冷たくなるんですけど。

 飲み干す前にアイスコーヒーになる事は間違いない。俺は無駄な足掻きを止め、缶コーヒーをベンチの空いてるスペースに置くとニコチンで凌ごうと煙草を取り出した。

 火をつけて煙を吸い込む。先端の熱で少しだけ顔に暖かさを感じる。

 俺は煙草を吸いながら今回の旅について考える事にした……。


 ――今回の旅も、いよいよ後半戦だ。

 我が城へ戻れば、年末年始の大売り出しで忙殺される事は確定する。無論、休日返上で正月明けまで早出残業の嵐となるわけで……そう、精神的にも肉体的にも過酷な日々が俺を待ち受けているのだ。

 故に年末年始は遊びに行く事も……いや、疲れてて遊びに行く気力もないので今のうちに気分をリフレッシュさせるためにここへやって来た。

 その発端は知加子からの電話だったが、どっちにしても東京に来る事になっただろう。

 それにしても知加子は変わったのか変わってないのか、最後までよくわからなかった。

 まぁ、厳密に言えば変わっている。

 見た目も綺麗になったが、社会人になったからか醸し出す雰囲気が大人びていた。

 そう、大人の女になったのだ。

 ただ、内面は俺の知っているあの頃とほとんど変わっていない。

 それが俺の前だからかどうかは別にしても、再会した知加子は俺の知っている知加子のままだった。


 変わらぬものがそこにある。


 俺は、それが無性に嬉しかった。都会に染まらずにいてくれた事に俺は何故か安心していた。

 いつまでも変わらぬ友情を感じられるからか?

 その辺のところはよくわからない。だけど、とにかく会ってよかったと心から思えた事に俺は喜びを感じている。

 それで十分だ。

 いろいろあって海月には詳しく話せなくなったけど、今のところ俺は後悔していない。


 次なる再会の主は俺の親友だ。今度は後ろめたい気持ちになる事無く羽目を外せる。

 取り立てて特別な事があったわけじゃないが、俺とそいつはとにかく気が合う。

 まったり屋の俺を引っ張ってくれるし、何より一緒にいるだけで飽きさせない“空気”を持っている。

 そんな彼だからこそ、俺はバッドステータス『寒さ×』を持っていても頑なに外で待てるのだ。

 ……でも、早く来てほしいな。風邪ひかない程度に来てくれると助かるのだが。

 そんな事を思いながら俺は冷たくなった缶コーヒーを飲み干して再び煙草に火をつける。

 夜はまだ長い。あと少しだけ我慢すればいい。

 俺は気を取り直してマンウォッチングに興じる事にした……。








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