25、やる気ゲージMAX!?
今日で俺の旅も中盤に差し掛かる。
この旅の目的である“友人との交流”も午後からは別の人物に切り替わり、これまた違った首都観光と相成るわけで。
知加子とはアダルトな夜を演出してしまったが、次なる人物に関してはそういった間違いが起こる要素はまったく無い。まぁ、相手は男なのだから当たり前と言えば当たり前なのだが……。
そんな事を思うほど、昨夜は知加子とディープな夜を過ごしてしまったらしい。酔っていてその時の記憶が曖昧なのだが、知加子の反応や朝起きてからの行為により俺は自分にいまいち信用が置けなくなったのだ。
さて、これからどうするか。予定では知加子と一緒にいるのは昼ぐらいまでだ。時間にすると、もう六時間を切っている――。
知加子に引っ張られる様にして公園を出た俺。
観光ガイドブックから次の目的地を決めた知加子に誘導されて来たのは、車窓からの景色は格別なのだが座り心地があまり良くないあのモノレールの駅。
着いた早々知加子はトイレに駆け込み、残された俺はとりあえず自販機で缶コーヒーを買い、風で冷えた体を暖める事に。
10分しても戻らなかったので煙草でも吸おうと思ったが、タイミング悪く知加子が戻って来て断念。やけに遅いと思ったら、どうやら化粧をしていた様だ。
缶コーヒー片手に券売機で切符を買ってそのままホームへ。
朝だからか、人はまばら。ラッシュはもう少し先みたいだ。ガラスだかプラスチックだかの壁に映る自分の目にクマを発見し、ゲンナリしながらモノレールを待つ。
しばらく待っているとモノレールが到着。乗客もまばらで悠々と窓側の席を奪取する。
やはり乗り物は外を見ながら快適に過ごしたいもの。狭いボックス席に向かい合う様に座り、二人は暫しの間車窓の景色を堪能した。
知加子に連れられて来たところは、スタート地点である新宿。一瞬、もう帰るのかと思わず勘繰ってしまう。
駅の外に出て、昨日まったり一服タイムに興じた喫煙所に辿り着く。とりあえずベンチに腰掛けて一本火を点ける。
ヘビーな俺は、隙あらばニコチンを摂取する癖がついているのだ。
「……確かヒロの友達って、私と同じ江戸川区に住んでるんだよね?」
至福の一時を堪能する俺に不意に問いかけてくる知加子。
「ああ、そうだよ。久しぶりで記憶が曖昧だが、浦安に近いトコだったかな。まぁ、都営地下鉄よくわかんないから、会う時はいつも新宿で待ち合わせてるよ。それがどうした?」
ディズニーランドに近い、と聞いているので浦安近辺のはず。
だが、都会の地理に疎い俺を考慮し待ち合わせはここ新宿にしている。なので、実を言うと友人の住む詳しい場所はわからなかったりする。
それを聞いた知加子は頷くと身をすり寄せてくる。
「ちょっと考えたんだけどさぁ、だったら直接会いに行ったらどうかな? ウチからだと同じ区内だからバスで行けるでしょ。ご飯食作ってあげるからウチに来ない?」
知加子はそう言ってニッコリと微笑む。
移動の手間と費用、それと知加子との時間を考慮すればその案は最善策の様に思える。しかも食事付きなら尚更だ。
どっちにしても会ったら、まず友人宅に荷物を置きに行くわけだし、直接行った方が時間的にも経済的にもお得だ。それに移動だけでも何気に体力を消耗するから、知加子の提案はまさに一石二鳥と言える。
「そう言えば前に近いって言ってたもんな。よし、そうしよう。善は急げ、さっさと行くぞ」
俺は煙草をもみ消すとベンチから勢いよく立ち上がり、知加子の手を取ると早足で駅に向かう。
今から行けば、部屋でまったりと体を休めて午後から余裕を持って行動できる。そう思うと自然とテンションも上がっていく。
「ヒロ、急にどうしたのよ……あ、まさか、ウチでする気じゃないでしょうね?」
引っ張られる様にしてついてくる知加子は大胆発言をする。
いや、さすがにそれはないから。
俺は首を振って否定する。そして、人混みが増してゆく改札口へとまっすぐに歩いて行った。




