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11、ウィットに富んだ食後の散歩

 

 時間はまだ15時半を少し回ったところ。再会してから二時間も経っていない。

 遅い昼食を終えた俺達は、まだ時間も早い事から駅周辺を散策する事に。

 ご飯を食べた事により若干テンションが上がった二人は、人の波に遭難しない様、手を繋ぎ人の群れから逃げる様に脇道へと避難する。

 ただ歩くのでさえサバイバル。

 なんちゃって都会出身の俺は、そんな訳のわからないフレーズを思い浮かべ、内心このネタ使えるな、と細く笑む。

 ――さすがに脇道に入ると歩きやすい。人もそんなにいないので、俺は知加子の手を放しヘビーの嗜み“歩きタバコ”を堪能しようとポケットから煙草を取り出そうとした。

 「歩き煙草はダメだよ」

 俺の行動を読んだ知加子が腕を取り、ヘビーの嗜みを妨害する。

 「はいはい。わっかりやした」

 対応が素早いじゃないか。腕組みするかたちでヘビーの嗜みを止められた俺は、仕方ないのであきらめる。

 「……おい、放せ。手が抜けん」

 了承したんだからさっさと放せ。

 「ダ〜メ。放したら吸っちゃうでしょ。だから、吸っていいトコまではこのままでいる」

 知加子はしっかり腕をまわしてピッタリと密着する。

 ……おい。なんで拘束されなきゃならんのだ?

 たしかにヘビースモーカーの俺は『禁煙』の看板が掲げられなければ所構わずどこでも吸う。嫌煙者から見れば迷惑極まり無い不届き者ってやつだ。だが、ここまで拘束されるほど俺は聞かん坊じゃないぞ。

 昔はこんなんじゃなかったのに。知加子の妨害工作に俺は違った意味で年月の流れを感じる。しかし、この体勢って端から見るとバカップルじゃねーか?

 「恥ずかしいから放せ。なんかラブラブモード全開のバカップルみたいだぞ。マジ勘弁だって」

 わざわざ東京まで来て浮気なんてシャレにならん。海月の顔がチラつくので気が引きまくる。だが、知加子はそんな俺の声を無視してベタベタくっつく。

 知加子の悪戯行為をなんとか阻止しなければ……。

 「チカ、聞いてんのか? 彼女に悪いんで、あんまベタベタしないでくれよ〜」

 この女は昔から変化球を見逃すので、俺はストレートに拒否する。

 「別にこれくらいなら構わないじゃない。腕組みだけじゃ浮気なんて言わないでしょ」

 ……う、打ち返しやがった。見事なセンター返しじゃないか。

 「私、最近ヘコみ気味なんだから、ちょっとぐらい優しくしたって罰は当たらないわよ?」

 開き直りかぁ?

 俺の言葉はあっさり無視だ。このままでは知加子ペースに引き込まれる。

 「わかったわかった。後でたっぷり癒してやるから、とりあえず離れろ。歩きにくくてたまらんわ」

 どうにでも取れる意味深な言葉で反応をみる。

 「……なんかエッチだなぁ。浮気はしないんじゃなかったの? ま、バレなきゃ浮気にならないけど……って、まさかヒロ、溜まってるとか?」

 なんちゅう事を言うんだ、この女は。

 「お前の方がエロいぞ。俺は溜まってないし、バレなくても浮気は浮気だ。変な理屈、語るなよ……どうかしてるぜ?」

 相変わらず拘束状態の俺は、頑なに離れようとしない知加子を追撃する。

 「まぁ、お前がどうしてもって言うんなら、少しは考えてもいいが……」

 さすがにこれは言い過ぎかと思ったが、知加子はそれすらも無視してお返しとばかりにさらに強く腕を抱いた。

 二の腕に当たる女性特有の柔らかさが挑戦的に男心を刺激する。

 ずいぶん挑発的だなぁ。

 「……って、何かリアクション取ってくれよ。対応に困るんだけど?」

 「あら? ジョークかと思ってたら、ホントにしないつもりだったんだ? 泊まりで来たから、私それもコミで来てるのかと思ってたよ。ま、ヒロがそれでいいんなら私はそれでもいいんだけど。でも、きっと後で後悔しちゃうよ?」

 「こらこらこら。さすがにそんな節操無しじゃないぞ……」

 「じゃあ、もう移動しよっ」

 しれっとした表情で返す知加子。そんなもんコミコミで考える奴がどこにいる。いったい何を考えてるんだ?

 「……慰めてくれるとちょっと期待してたんだけどね」

 微妙な含みを持たせて呟く知加子。手を放したと思ったら再び俺の手を取って人の群れする駅に向かって引っ張っていった――。




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