夜、現実を飛び出して
寝られない。
きっと芸術スキルをゲットした反動だ。
何かを作りたい衝動に襲われ続けている。
夜の街は怖い。前世で学んだはずだ。
ナイフの光がフラッシュバックする。だけれどそれ以上に……
道具……道具が欲しい……
ロハンは恐怖を振り切って宿を飛び出した。ウリは寝ていたから置いてきた。
一歩一歩と踏み出すたびに恐怖が胸を刺す。
夜の街には何もない。
宿屋とギルドだけが灯りをともらせていた。
街の道は石畳だ。これじゃ絵を描けない。
橋の下のトンネルになっている場所に描くか?
いや、画材がない。
そうだ。川だ。水辺の近くには土がある!
夜、月明かりに照らされて一心不乱に地面に絵を描いた。
木の棒きれをペンにして。
ザクッザクザクッ
線の濃淡をや陰影を表現し、月明かりのキラキラさえ取り込んで描き上げていく。
線の角度を調整して観客が見惚れるように。ルウの絵を見ていた時の自分がもらった
あの最高の観客席を用意するように。
誰もいない河原で音が鳴り響いている。
気が付くと一枚の絵が完成していた。
この街のキラキラした部分を捉えた作品だ。
活気のある人々と街の景色が一体となった絵だった。
「ほう。これはこれは。繊細な濃淡で光を掌握しているようなタッチは……
たまには夜歩きしてみるものですな」
「見てくれてありがとうおじいさん」
「ほっほほほほ。素晴らしい出来じゃの。どこで修業をしたのじゃ?」
「スキルを手に入れただけなのに、ただ、手が止まらなくて……」
「スキル……神の恩寵ですな。素晴らしい。しかし、惜しいですな」
「何が惜しいんだい?おじいさん」
「この絵を残す手段がないことですじゃ」
「画材さえあればいくらでも描いてあげるよ!」
「ふむ。考えておこう。もちろん対価は出す」
「金よりも書き続けられる画材が欲しい!最高級のだ」
「もちろんじゃ」
ロハンは不思議なおじいさんと知り合いになった。
芸術でフラストレーションは発散できた。
帰ろう。ウリが待っている宿に。
「ボクは宿に帰るよ。おじいさん」
「さよならですじゃ。できれば再会を願って」
「ああ!さよなら!」
ピコン!ファンが1人増えました。
神様ポイントを10ポイントゲットしました!
神様のショップでスケッチブックと鉛筆を5ポイントで手に入れた。
気がつけば日が昇っていた。
スケッチブックは全ページ真っ黒になるまで描かれていた。
そこでハタとウリの存在に気が付いた。
ウリは薄目でその様子を見ていたが、時折心配そうに足元をぐるぐると歩くのだった。
クーーン
何度目かのぐるぐるでウリとロハンの目が合う。
朝だ。ご飯を食べに行こう。腹ペコだ。
部屋に残ったスケッチブックにはロハンが何度も見た
あのルウの絵の模写がいくつも描かれていたのだった。




