折角、我が王国に転移者が現れたけど、役に立たないスキルな件について
我国に奇っ怪なモノが現れた。黒い髪に黒い瞳の人型。
そして、紺の膝下までのスカートのドレス。17歳と言う。
伝承だと知識と異界渡りのスキルで国を繁栄に導く来訪神・・・
「ようこそ我が王国へ」
「さあ、さあ、早速スキル鑑定をしましょう」
紺の服は、聞けば平民の学び舎の制服らしい。
名はアズサ・ササキという。
伝承だと来訪神は、皆、錬金術師や鍛冶職、素晴らしいスキルを持っている。
しかし、判定したスキルの名は『分からない』だ。
彼女の髪は肩まで、キリィとした顔立ちをしている。
しかし、賢そうな顔と裏腹に。
答えは何を聞いても『分からない』だ。
「あの、国を豊かに導くにはどうしたら良いでしょうか?」
「分からない」
この調子だ。
他国の使節団も失望して去った。
「クスッ、ハズレスキルだな」
「何だ。『分からない』って」
ああ、そうそう、この国は花と牧畜の国、フレンデル王国、民は穏やかで王室と臣民一体になっている素晴らしい国よ。私は第一王女フローラ、婚約者は騎士団長のロトよ。
しかし、お父様とお母様はササキ殿へのお客様待遇を崩さない。
もちろん、彼女は普段は『分からない』以外の言葉を話す。
「キャア、お馬さん可愛い-」
「ええ、牧畜の国ですから」
「フローラさん。乗って良い?」
「ええ、どうぞ」
「あれ、フローラさん。お姫様なのに洗濯をするの?」
「はい、慣わしですから」
「まるでギリシャ神話のようね。じゃあ、私も洗濯する」
時々、異界の事を話すがそれ以外はいたって普通だわ。
日々、穏やかに暮らしていたら、大国ザルツ帝国の使者がやってきた。
使者は王城の小ささを馬鹿にしながら謁見室に来たわ。剣を腰に携え。
しかも、平伏をしない。
お父様が辛うじて玉座に座り謁見の体をなした。
お兄様とお義姉様は玉座の側に侍る。
「フン、小国でも王の体裁だけは立派だな」
「・・・話を聞こう」
「ワシはザルツ帝国男爵ミゲル!皇帝陛下からの書簡だ。大陸の国々は皆兄弟であるべきだ。しかるに、何故、フレンデル国王は挨拶に来ないかと嘆いておられる。
孫娘である皇女殿下がお生まれになった。この機に大金貨1万枚を奉じてお祝いをされては如何かな?」
これは脅しだわ。使者が男爵ってどこまで馬鹿にしているの?
お兄様は・・・難しい顔をしている。
お父様だったら、この場合、先延ばしにするでしょう。
と思ったが、ササキが乱入した。
使者の前に立ち。
「おい!」と一喝し。
トンデモない暴言を使者に浴びせた。
「この国の産業は特にない。鹿の皮をできるだけやる。これを北方の兵士に着せるのだな。ブルブル震えるのが少しはマシになるであろう」
「な、何だと!貴様!」
使者は怒り狂い。さすがに剣は抜かなかったが、皆がなだめて宿に戻ってもらった。
「どうするのだ!どうするのだ!どうするのだ!」
「殿下、落ち着きましょう。陛下を見習って」
お兄様は頭を抱えて狼狽している。
お父様はさすがに表情に出さない・・・と思ったら震えている。
お母様は・・・遺書を書いているわ。
「ササキ殿は軟禁だ!」
「「「御意」」」
ササキ殿に聞いても。
「良くして下さったから助けたくて・・・」
とうそぶく。
会議を開き。対策を練るが良い方法はない。
そうだ。私が夜、使者殿の部屋に行けば・・・・
と思ったら、ドレスを何者かに掴まれた。
「それ、悪手だよ」
「ササキ殿・・・どうして、出てこられたの?」
「トイレ」
結局、何も出来ぬまま次の日使者と謁見になったわ。
あら、正装をしている。剣はない。
うやうやしく、膝をつき。
「フレンデル国王陛下の温情に感謝いたします。鹿の皮を有難く受け取ります。詳細は実務者を派遣します」
と述べた。
「しかるに、この報告をいたしますので失礼します」
饗宴を断り国へ帰った。
意味不明だわ。
「ササキ殿、一体・・・」
「ああ、あれね。大国が本気で言うことを聞かせたかったら棍棒外交になるのね・・・」
棍棒外交とは軍事力をちらつかせて、言向け和しで要求する?
「実際は、北方のルーシー諸国との戦争に備えて南に位置するフレンデル王国への様子見でしょう。
恫喝して属国になればそれでよし程度の恫喝外交でしょうね。
この国、軍事力はないけど、牧畜のせいで国土が広く王国全土を占領するとしたら、25万人規模の軍団が必要で、王都を占領するとしても3万人必要ね・・・」
「何故、ルーシー諸国が不穏だと分かったの?」
「地図を見たら何となく、これ、絶対に南下したい国々よね」
「じゃあ、これから我国は他国から攻められないのかしら・・・」
「それは『分からないわ』」
また、分からないに戻ったわ。
しばらく、畑を荒らす鹿を狩り。ザルツ帝国へ出荷した。
ザルツ帝国は返礼に、金銀財宝や宝石を渡してくれたわ。
「うむ!杖に宝石をつけられたぞ」
「まあ、私はカチューシャを作りますわ」
「俺は、この宝石がついた剣だ」
「じゃあ、私はこの首飾りを頂きますわ」
皆、大喜びだが・・・・
ササキは不穏そうな顔をしている。
「これが不幸を呼び寄せるかもね・・」
次の年。今度は南の島国、イース連合王国の使者が来た。
「末永くお付き合いしたいと女王陛下のお言葉です」
「是非とも」
「でしたら貿易をいたしましょう」
使者は腰を折り。丁寧に謁見をした。
悪い話ではない。喜んで通商条約を結んだ。
だが、港に来た物は・・・
「魔薬だ!」
交易品が魔薬だ。
騎士団長のロトは早速処分をした。
厳重に抗議をしたら。
逆にイース王国から抗議が来た。信じられないことだ。
「我が王国の商人の財産を奪った。賠償として大金貨3万枚を要求する!」
穏やかだった使者の顔が豹変している。
「宣戦布告である!」
すぐに、ザルツ帝国に救援を要請したが、北方のルーシー諸国と戦争で兵を回せないらしい。
ササキ殿の言うとおりだわ。
それをイース王国は読んでいたらしい。
しかも、ザルツ帝国はとんでもない案を述べた。
「なら、フレンデル国王は退位され、我が帝国の皇女殿下を女王に据えればイース王国もむやみに手を出さないのではないか?」
「それは、無理でございます」
「うむ、なら、我国の将兵の軍服を渡そう。それを着て戦えば、イース連合王国は兵を引くであろう」
どちらも属国になる案だ・・・
「どうしたら・・・・」
「断固、戦うべきでございます」
騎士団長ロトは言うが、我が王国軍は2千人、相手は10万を超える兵力差だ。
すでに港に上陸されているわ。
王都まで馬で一日と半の距離。
ここでササキ殿は言った。
「希望はある。結果は分からない。不確定だわ」
「さすがのササキ殿でも分からないか・・・えっ、分からない?」
「だから、軍の先頭に出るわ」
ササキは騎士団の先頭に立ち出征をしたわ。
自爆かしら・・・・
奇跡は2度起きないと思ったが・・・・
「大変でございます。イース王国は兵を引きました・・・」
「魔薬処分はうやむやに・・・」
「何だと!奇跡か?!」
私はロトに聞いた。
「一体、何が起きたのかしら・・・」
「自分もさっぱり分かりません。ただ、ササキ殿は1人使者として赴き。何かを話したそうです。それで納得して兵は引きました・・・」
「そう・・・やはり、来訪神だったのね」
そうね。この国には過ぎた存在なのかしら・・・・ね。
☆佐々木視点。
私はイース王国の本陣に1人だけで向かった。フレンデル軍旗を掲げて向かう。
すると、天幕に案内された。
「ほお、異世界の神か・・・さすがに、この兵力差は覆らないだろうな」
向こうの将軍はヒゲをイジリながらニヤニヤして言う。
しかし、隣の魔道師団長は違う。
私を見て、ブルブル震えだした。
「誰も、この戦いの結末は分からないのです・・・よ」
そう、私の能力は分からない。結末が分からないことが分かるのだ。この世界の女神とは対局の存在。
だから、私は地球の話をした。
「地球にはラプラスの魔物という存在がありました。全知全能で全てのことが見通せることが出来る存在。ニュートン時代の人造神です。女神様もその範疇でしょう。
しかし、時代が進み科学が発展し量子論が生み出されると、この世界は不確定の集まりだと判明します。数々の並行世界があり。観測するまで分からないとしか定義できない」
「意味分からん。つまり、お前を殺せば良いのだな」
「ええ、そうです。実は、私が死ぬと、能力が発動し、違う並行世界を引き寄せることが出来ます。
つまり、100万分の1の確率のフレンデル王国が大陸の覇者になる並行世界を呼び寄せることが出来るのです」
「何だ、それは?」
「つまり、この世界の言い方に変えれば死に戻りですよ。いや、リメイク、違うかな」
ここで魔道師団長が言葉を制止した。
「将軍閣下、お止め下さい。こやつの能力は魔王の四天王、魔道系のトップに匹敵します・・・現に、将軍閣下、剣を首に当てておりませんか?」
「な、何、何故、何故、自分で!ヒィ!そう言えば唐突に自殺したくなった!」
そうだ。将軍が自殺をする世界を引き寄せたのだ。
「ごめんなさい。実は死ななくても、可能性の世界を引き寄せることが出来るのです」
こうしてやっと、軍を引くことで合意をした。
・・・・・・・・・・・・・・・
だが、この能力、自分のことは分からない。そんな制約がある。だから『分からない』と言うのかも知れない。
「ササキ殿、洗濯をしていたら、男性が流れて来ましたわ・・・怪我をしていますわ」
「あ、それ勇者だからフローラさん看病したら」
「私の婚約者はロトですわ。ササキ殿がされては」
「う~む」
勇者を看病してやるかと思ったら、途端に真っ暗になった。
まさか、自分のことになったのか?
世の中、不確定ばかりだ。
今もこうしてフレンデル王国にいる。
最後までお読み頂き有難うございました。




