第88話:21プロでのデビュー
『どもー。こんふど~。みんな今日も元気に入滅してる~? 不動ミヨでーす!』
『こんふどー』
『入滅しに来た』
『エモグロビンおなしゃす』
さて、今夜も元気に始まりました。不動ミヨの生配信。
『さて、今日は先にお知らせがありまーす。というのはSNSで言ったよねー? 人によってはハッピーニュースかもしれないし、バッドニュースかもしれない、も言ってたよねー。じゃあ引っ張ってもしょうがないし発表しまーす。この度不動ミヨは二天一次元プロダクションに正式に所属することになりました。はい拍手! パチパチー!』
『マジか。21プロが!?』
『大ニュースじゃねえか』
『おめでとう!』
個人勢がプロになる。その感動は視聴者と共有できたらしい。
『ミヨちゃーん!』
『所属おめでとう!』
『一緒にコラボしようねー』
などなど。色とりどりのスーチャで連続してコメントを送ったのはもちろん綾女テイルさん。色違いのスーチャを送って虹色を作るにはかなりお金がかかるのだが、まぁそれはあえてツッコむまい。
『安定の推し』
『そっかー。アヤメルと同僚になるのか』
『さすが俺らのミヨちゃんだぜ』
『ミヨちゃん! ウチに所属してもスーチャさせてね!』
『無理じゃね?』
『無理無理』
『そもそも金が動いてねー』
自分の会社に金を払うようなものだ。意味がないことは視聴者にもわかっているのだろう。
『はーい綾女先輩は自重してくださいね。もちろん21プロに所属してもアバターは変えないし。愛スール先生がママなのは変わらない。これからもおっさんが助かる曲を歌っていく方針も認めてもらったよ。所属が変わるだけで活動はあまり変わらないから、これからも応援してくれると嬉しいな』
『当たり前』
『ミヨ氏に人生を捧げる』
『おっさんを助ける天使』
『ありがとー。じゃあ一曲目行こうか。懐メロだけどね。私は最初聞いた時は感動しちゃって。昭和って素敵な曲があるんだねー』
そうしてアカペラで歌が始まる。もちろんその歌声は控えめに言っても神。曲を知らない俺すらも癒される。
『――――♪ ――――♪ ――――♪』
聞くだけで惚れる歌声。この歌声を回避する術はおっさん連中にはないだろう。きっとチャンネルを変えても付いてきてくれる。それを確信できる一曲だった。アカペラなのにバックミュージックまで聞こえてきそうな勢いだ。
『ってわけで歌ったんだけど。今日の生配信で個人勢の活動終わりなんだよね。まぁアバターは変わらないんだけど。愛スール先生には感謝感激だよー。あ、みんなはあたしの同人誌買ってくれた?』
『もちろん』
『愛スール先生は至高』
『ミヨミヨは究極』
どこの料理マンガだ。とか思っている内に赤スチャがどんどん投げられる。21プロ所属のお祝いもあるのだろう。いつも以上におっさんの財布のひもが緩い。
『ありがとー。ありがとー。愛してるよ無明のみんなー!』
『さて入滅するか』
『エモグロビン過剰です』
『俺過呼吸で倒れそう』
『ミヨちゃんペロペロ~!』
『ブレねぇな。このアヤメル』
『既に犯罪者予備軍』
『ペロリストだな』
マジで何を気に入ったんだ。不動ミヨに。歌姫という意味では綾女さんの方が高名ではあるんだが。実際に歌は上手いし、選曲も絶妙。フォロワーも百万人を超えているし、21プロでも顔の一人だ。だがその綾女さんが、「自分よりミヨちゃんの方が上手いよー」とか言ってくれたから今の浮動ミヨがあるんだが。
『それじゃね! 次は21プロのチャンネルで会おう! 無明のみんなも付いてきてくれよね!? 大日如来の加護があらんことを! チャンネル登録と高評価は……どうすればいいんだろ?』
『追いかけるから安心していいよ』
『おっさん助かる』
『このミヨを捨てるなんてとんでもない』
色々と言われていた。
「ふう」
で、配信が終わり。ホムラは俺の前で吐息をついていた。
「やっばいくらい投げ銭されたんだけど……」
「お前の功績だ。受け取っておけ」
「(※自重)円だよ? そんな金どこにあるの?」
「おっさんは稼いでいるから」
そういう問題だ。実際に現役JKが懐メロ歌ったら投げ銭しないおっさんはいない。
「21プロでもその方向で行くんだろ?」
「うん。まぁ。会社に許可は貰ってるけど」
「愛スール先生の仕事も増えるな」
「お姉ちゃん大丈夫?」
「最近はエナドリのお世話になってるからなー」
限界が見えたら止めるつもりだった。さすがに倒れられると困るし。
「それもこれもアクヤ様のおかげだね!」
いうてホムラの声なら成功は確約されていたようなものだ。大人気エロゲー声優の声なんだから。
「じゃあエッチする?」
「ノーセンキュー」
既に出した後だ。
「じゃあ寝ようね。アクヤ」
俺の寝室にいるのはホムラだけでなくマキノも一緒だった。おっぱいがバインボインで俺の目に毒だ。
「ほら、おっぱいアイマスクっしょ」
「むー。マキノ。おっぱいを主張するのは止めて」
「アクヤはおっぱい星人だからね」
酷い主張だ。間違ってもいないが。
「アクヤ様」
「ちっぱいも愛するから心配しなくていいぞ」
「で、ですよね!」
救われたようにホムラが安堵する。まぁこれくらいはサービス。
「アクヤ。チュッチュしていいからね」
「ブラはつけてる?」
「もちろん。ナイトブラだけど」
「ノンワイヤーか」
「知ってたの? アクヤ……」
エッチなコンテンツの知識でなら。
「アクヤだけのおっぱいだぞー」
「他の奴に揉ませるなよ」
「独占欲?」
「まぁ。間違ってはいない」
「もちろんっしょ。アクヤだけが揉んでいいの。給料も貰ってるしね」
俺とのセフレ関係も続いてはいる。給料が出れば止めるかと思えば、「アクヤはあーしを捨てられないっしょ?」という確信を持った言葉でマキノがそう言った。
「むー。あたしにはおっぱいが無いのに」
「だからそれは……」
「はい。アクヤ。おっぱいアイマスク」
俺の視界がおっぱいで埋まった。脂肪に包まれて、俺の顔が幸せ。
「ああ、これは。ダメになる」
「あーしのおっぱい気持ちいい?」
「超最高」
「アクヤ様~ッ」
「大丈夫だって。俺はおっぱいもちっぱいも愛する紳士だから」
「抱いてくれていいんですよ?」
「それは。ちょっと」
ホムラルートだった場合、人公に申し訳ない。既にカホルは頂いているわけだが。
「アクヤ様の童貞!」
うん。まぁ。非難されるのもわかるけど。一応童貞じゃないんだわ。これが。




