第86話:ネタ晴らし
「…………」
土曜日。朝起きて。昨夜やってしまったことを思い出して。
「~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!」
声にならない絶叫を上げてしまう。や、や、や…………やってしまったーッ!
生々しい女体の温かさ。おっぱいの感触。カホルのエロゲー声優独特の喘ぎ声。全部が俺の中で鮮烈な記憶として残っている。っていうか女の子のアレってあんなに熱いのかよ。もちろん万事が万事うまく行ったわけでもない。何せ九王アクヤは竿役。その(※自主規制)の大きさは日本人では珍しいレベル。カホルも痛がっていたが空気を読んだというか俺にニッコリと微笑んで抱きしめてキスしてくれた。ちなみに血は出なかった。一般的に開通すると出ると聞くけど、人によってマチマチだとか。ただやはりそれでも俺も童貞だしカホルも処女だしで暗中模索で何とかこうとか。性的に女性を興奮させる術を知らない俺と、男子のアレを見てどう扱っていいのか慌てていたカホル。結局エロゲーの知識を費やして、ほら、ね? 色々と盛り上がって本番。痛そうにしていたがこっちの腰は止まらなくて。終わって眠ろうという時に、まだ中にあるみたいと言われて俺が超絶リアクションに困ったのも事実。
「というかだ」
カホルってもう俺以外に裸体見せられないのでは? アクヤ様専用とか刻んだタトゥーは一生モノだ。もしかして銭湯にも入れない?
っていうかどうすんだ。せっかく今までヒロインの処女を守っていたのに、いきなり瓦解した。もしもこの世界がカホルルートだったら、人公の感想はいかばかりか。やっちまたものはしょうがない、と現実逃避も出来なくて。こうなったら責任を取るしか。しかし人公がいるのに俺が結婚してどうすんだ、みたいな。
「オールライト。落ち着け俺。まだ人類は敗北していない」
「あ、おはようございます。アクヤ様」
で、ニッコリ笑って俺に挨拶してくれるカホル。エプロンを付けて朝食を作っているが、隠れていない四肢の肌色面積が多すぎる。
「裸エプロン?」
「いえ。下着エプロンです。水着エプロンも考えたんですけど」
好きにしてくれ。もう。
「と、ところで…………昨夜のことなんだが……」
夢であるように。うつむいて何度も願った。心にディーンとくる。
「ポッ」
で、赤面するカホル。俺はオリンピックの体操競技選手でも無理な十回転五ひねりをしてジャンプ。そのまま回転に身を任せ床に着地。鮮やかにフライング土下座を決めた。
「申し訳ありませんでしたー!」
こうなったら割腹するしかない。辞世の句。雨降れば、ニョキニョキ生える、男竿。俺の俳句の才能は無いな。
「いえ、謝らないでください。私から押し倒したんです。むしろアクヤ様は私にお仕置きしてください」
「怒って……ない?」
「むしろ嬉しいです。アクヤ様に抱かれるのは望んでいましたから」
そ、それはまた早まったことを。
「あのー。この前言ったことだけど」
「この世界がエロゲーですか?」
「だから主人公は人公アルシで。お前はヒロインで。こんな女を金で買うドブカスじゃない真実の愛があり……んッ」
俺が道理を説いていると、カホルが俺にキスをした。
「今はそんなこと聞きたくありません。私はアクヤ様に抱かれて幸せなんです。アクヤ様の女に成れて幸せなんです。アクヤ様の童貞を頂けて光栄なんです」
そ、そこまでか。
「それにもうアソコがアクヤ様の形に広げられましたから。他の男じゃ満足できないと思いますよ?」
うぐ。一理ある。そういうことを思えば、ゲームでの人公って夜の事情はどうしていたんだ? エッチシーンはあったけど、まぁアレはゲーム補正か。それとも人公のアレも九王アクヤに負けてないとか?
「でも淫紋は……」
「えーと。それなんですけど」
やっぱり問題だよな。刺青なんて一生モノだし。バレたら社会から後ろ指を刺される。
「三日もあれば消えますから」
「ふぇ?」
男の「ふぇ」が一ミリも可愛くないことを知っていながら、そう呟かざるを得なかった。
「えーと。そのー。タトゥーシールというもので。印刷したシールを下腹部に張っただけです。お風呂でゴシゴシ擦れば二日三日で消える類の……」
「……………………………………………………………ほう」
「アクヤ様。三点リーダーが長いです」
「騙したなー!」
「しょうがないじゃないですか!この世界がエッチなゲームとか信じて疑っていないアクヤ様を説得するには生中なことじゃ無理なんですからー! あ、お仕置きとして今日はノーパンでいましょうか?」
「御褒美になりそうなので却下で」
「……………………」
そこ。悔しそうにしない。
「とにかく。私はもうアクヤ様の女です。遠慮なく抱いてくださいね?」
「あー……人公に何て弁明すればー……」
「いいじゃないですか。あんな童貞」
俺も昨夜までは童貞だったんですけど。
「いつでも抱いてくださって構いませんからね。常に幸せ家族計画は常備しておきます」
とは言われても~。
「そもそも幸せ家族計画はどうしたの?」
「私の部屋のゴミ袋に厳重に処理して捨てました。アクヤ様の部屋のゴミ袋に捨てるとコヲリたちに気付かれるかもしれませんし」
そういう配慮は忘れないのな。
「やっちゃったよー。これじゃ俺九王アクヤじゃん」
「むしろ他に何だと言うんです」
だから童貞貫いてヒロインたちを人公に寝取られるという俺の壮大な計画がな? 俺の腕の中で眠っている厳しい幻をどうのこうの。夢であったらよかったのに。
「愛しています。アクヤ様。アクヤ様がお望みなら、本当に刺青で淫紋を刻みますよ?」
「是非止めて」
マジでお嫁に行けなくなるから。
「でもアクヤ様が初めての男ですし」
「俺もカホルが初めての女だ」
「ポッ」
頬に手を添えて赤面するのはいいが。ある意味でタトゥー以上に大問題なモノを刻まれているんだからな? 処女喪失とか二次元にあるまじき……今は二次元じゃないけど。
「またします?」
朝食を作りながら、エプロンを引っ張って胸の谷間を見せてくるカホル。
「御遠慮する」
「でも朝も三回ラウンドしてるんですよね? 一ラウンドは付き合えますよ? 口と胸ありきなら三ラウンドも夢じゃないですけど」
「大丈夫だから」
「でも倒れるまで我慢するのは無しですからね? 性欲が暴走しそうになったら私を犯してください」
やっちゃいましたよ。花崎の御両親の御二方。大人の階段を登った灰被りの如く。
「まま、私のことは天牙と思って。アクヤ様は私でG行為しているだけです」
多分その天牙って正式にはアルファベットで書くんだろうけど。
「親御さんに何て説明すればー…………」
「だから大丈夫ですって。元から親にはアクヤ様の淫乱肉便器になっていますって報告を」
それもそれでどうよって話であって。




