第85話:真夏の夜の夢
「アクヤ様。今日は私と一緒に寝ませんか?」
七月の金曜日。俺はモシャモシャとシイタケご飯を食べながらカホルの提案を受け入れていた。別に拒否する理由も無いし。お吸い物も美味しいし、おかずも美味しい。俺は幸せ者だ。カホルを性奴隷にしただけでも親父に勲一等を送りたい。
「じゃ、プロテインをよろしく」
そうして俺は筋トレに励む。アニメを視聴しながら。今見ているのは剣の勇者の成り上がりだ。人気作ということでトレンドから遅れている俺は情弱丸出しで第一シーズンから見直していた。
「ふっ……ふっ……ふっ……」
腹筋千回。腕立て千回。最近はスクワット千回も追加している。ちょうど長めのアニメを見るにはいい感じだ。肉体が負荷に根を上げていて、その破壊が次なる筋肉に繋がる。ムッキムキになるには日ごろの鍛錬が不可欠。アニメを見ながら筋トレに励む。きついという感覚はあるが、鍛えるだけ鍛えれば肉体が応えてくれる感覚は新鮮だ。マジで前世はもやしっ子だった。
「ただいまーだぞー」
で、俺の部屋に顔を出したのはホムラ。今日は金曜日なのでホムラが人公の世話役。だが彼女はあまりやる気がないらしく、適当にレンチンで飯を作っているらしい。俺には渾身の手作りを作ってくれるのにね。頑張れ人公。道は遠いぞ。とはいえそれは置いといて。
「アクヤ様。今日も配信していいですか?」
「いいんじゃね。そろそろ契約も詰めるところだ。そしたらチャンネルお引っ越しだろ?」
「21プロですかぁ」
「いい案件だとは思うぞ」
「お姉ちゃんの仕事にも加味される?」
「まず間違いなくな」
なにせ不動ミヨのママだ。仕事なんて腐るほど来ている。マネージメントしているのは俺。たまにソシャゲのキャラデザで十万円とか舐めた価格設定を提案する企業も存在するが、そういうのは俺が弾いている。コヲリのイラストレーターのとしての実力はもはやネット界隈が認めるもので、同人ショップに卸した浮動ミヨ本は瞬殺。愛スール先生のアカウントに再販のリクエスト突撃コメントが大量に。
「前にも言ったが。企業案件もあるし収録もあるし歌も歌えるし。最高だと思うぞ」
「稼げるなら文句は言いませんが」
「稼げる稼げる。21プロなら安泰だ」
実際二天一次元プロダクションはトップシェアだから失敗のしようがない。もちろん綾女さんはどうにかして浮動ミヨにスーチャを投げることを画策して社長に怒られているらしい。いや、そこまでして赤スチャ投げたいか?
「カホルー」
筋トレしながらカホルを呼ぶ。
「なんでしょうかアクヤ様」
「ホムラに飯作ってやって」
「承りました」
「後プロテイン」
「承りました」
今日のシイタケご飯は美味しいぞ。さすがのカホルのオカン印。っていうか和食好きだとバレて以降ラリルトリオの和食レパートリーが大変なことになっている。
腹筋千回。腕立て千回。スクワット千回。そうして筋トレが終わり、汗を流すために風呂に入る。さすがに夏なので全開で焚いたら汗が止まらない。なのでちょっとぬるま湯につかる。そうして身体を隅々まで洗って、今度は勉強。ゲームの時間もありはするが、大体休日なんだよな。たまにヒロインたちと遊んだりもするけど。
「で、ふむふむ、この時の英訳は……」
二時間ほど集中して勉強。それもカホルと一緒に。最近は図書室でホムラとマキノに勉強を教えているが、それとは別に俺自身も勉強はしている。
「アクヤ様。この時の電子銃は……」
「ああ、そこは」
で、俺は転生前が受験生だったので高校の範囲は網羅している。そのままカホルに勉強を教えて、ついでに自分も復習代わり。
「根を詰めすぎてもいけませんし。今日はもう寝ませんかアクヤ様?」
一緒に勉強していたカホルがそう言ってくる。まぁたしかに。コンセントレーションが落ちている気もする。じゃあ寝るか。明日は土曜日なので朝早く起きなくていい。ゲームをするぞー。と俺が思っていると、カホルがモジモジとしていた。寝るんじゃないのか?
「アクヤ様。まずは謝罪させてください」
何を?
「アクヤ様の優しさに依存して、そこで思考停止していた愚かな私をです」
「お前は頭いいだろ」
「本当に頭がいいというのは勉強できることではありません。相手の立場に立って思いやる人のことを言うのです。その意味で、アクヤ様は天才です」
いやぁ。照れる。何で褒められているかもようわからんのだが。
「ですから。私もアクヤ様を思いやれる人間になりたいと存じます」
はぁ。で?
「…………」
そうしてシュルリとカホルはパジャマを脱いだ。おい? Hカップの爆乳をブラ越しに見せつけて、俺の股間は天元突破。一気に九王アクヤとしての性欲がぶり返す。今日は暮れに四回出しているが、こんなことなら五ラウンドKOしておくべきだった。
「お前。おっぱいを仕舞え」
俺の股間がギンギンだ。マジで取扱注意。
「アクヤ様に見てほしいものがありまして……」
下着か? おっぱいか? それとも。俺が困惑していると、ついにカホルはパジャマのズボンを脱いだ。ブラとパンツだけの下着姿。それもボンキュッボン。おっぱいもお尻も大きいんだけどウェストは控えめという神装甲。装甲付けてないけど。あ、ブラとパンツが装甲か。とかアホなことを思っていると、事態はさらに混迷を極める。ハッキリ言ってシャレになっていなかった。ブラとパンツのあいだ。ウェストの丹田。へそより少し下で、女子の大切な場所よりちょっと上のスペース。お腹と呼んでいいのか。下腹部の子宮がありそうなところ。
「ちょ! お前!?」
その下腹部にタトゥーが刻まれていた。ピンクで彩られたハートマーク。そのハートをデコレーションしているカラフルな色合いの植物のツタの様な模様。いわゆるネット界隈で言われている淫紋。英語で言うところクロッチタトゥー。女性の尊厳を貶めるために刻まれる刺青だ。しかもデコレーションされたハートマークだけじゃなく、最悪を極めることに、そのハートの刺青の下に『アクヤ様専用』の文字。一生消えない入れ墨で淫紋を入れて、しかも『アクヤ様専用』とどこに出しても恥ずかしい俺専用を意味する文字の入力。まさにカホルの正気を疑うが、本人は満足そう。
「いかがですか? アクヤ様?」
「正気を疑う以外にリアクションあるか?」
「もう私はアクヤ様以外には裸体を晒せない身体になってしまいました。この子宮もすべてアクヤ様のモノです。孕ませてください」
いやー。それは。
「と、仰ると思って、幸せ家族計画を買ってきております」
用意がいいな。下着姿で俺を抱きしめて、そのままキスをするカホル。
「もうアクヤ様専用と刻んでしまいました。アクヤ様が抱かれないのなら私は行き遅れにアラサー処女になってしまいます。どうかお慈悲を……」
「俺に抱かれて……いいのか?」
「愛しています。アクヤ様。この身体は全てアクヤ様専用。そう刻みました。私の覚悟を受け取ってください。アクヤ様色に染めてください」
そうしてカホルは俺を押し倒した。それからのことは一切のことを覚えている。彼女のおっぱい。彼女の首筋。彼女の唇。彼女のアレ。全部味わった。レディファイトだった。レディとファイトするという意味で。カホルの言いたいことはわかる。俺はセクロスがしたくて、でも性欲を我慢して自律神経失調症になった。それを快癒させたいのだろう。だからって子宮のある下腹部に『アクヤ様専用』って淫紋刻むか? 普通……。




