第84話:ホムラとマキノとアクヤと
「くあ……眠い……」
特に睡眠不足というわけではないが、たまには不条理な眠気に襲われるのも悪くない。
「うー」
「うー」
で、そんな俺の欠伸の先で、教科書と参考書相手に格闘しているホムラとマキノ。二人とも図書室で期末テストまで勉強を強要している。あまり命令は好きじゃないが、こういう時は思う存分使わせてもらおう。
「分からないところあるか?」
「四割五分くらいわからないぞ」
「あーしは五割五分」
つまり理想的な数値で計算すれば、ホムラは平均五十五点。マキノは四十五点ってところか。ここから成績を上げていくのが俺に求められる能力。互いに苦手な科目が違うので、補うには俺の作業量が膨大になる。だがまぁ俺の復習にもなるし、勉強を教えるのは苦じゃない。さて、そうすると。
「じゃ物理から行くか」
「うげー」
「あうー」
忌避する理由もわかるが、一番点数の低い科目からやるのが効率的なんだよ。振れ幅も考えるとな。というかホムラは意外と理系は理解している。ただ毎日の不勉強が祟って、それを活躍させられていない。逆にマキノは記憶力はいいのか。文系にはそこそこ理解を示す。とはいえ六組なので、そもそも成績が低いのはご愛敬。許すつもりは全然ないが。
「じゃ、お疲れ様でしたー」
「アクヤ。アクヤ。御褒美が欲しい」
「スタブでコーヒーでも奢ってやるよ。ホムラもそれでいいか?」
「うん。大丈夫だぞ」
そして何やら長い名前のペチーノを頼んだ二人は、そのままニコニコ笑顔で飲む。俺は無難にコーヒー。いや、気取ってるとかじゃなくてここで胃にクリームを入れると夕食に差し支える。
「ホムラが今日は当番だったか」
「ですね。アクヤ様には申し訳ありませんが、アルシの面倒を見ないと」
「気にしてないから気にするな。幼馴染なんだろ?」
「えと、まぁ、そうですけど……」
ちょっと不満そうなホムラ。
「アクヤは女心を分かってないよねー」
童貞に何を期待してるんだ……。
「アクヤ様はあたしがアルシの家に行くのはいいのですか?」
「必要事項なら何も言わんのだが」
「むー」
そこでふくれっ面になられてもな。
「アクヤ様の鈍感」
「まーアクヤは鈍感だよねー」
「俺だってそこそこは」
「わかっててやってるなら尚のことだけど」
「そなの?」
「私たちはアクヤ様に嫉妬してほしいのです」
「してるが」
「………………………………ふえ?」
「出来れば人公の家には行ってほしくない」
「では何故拒否しないんですか?」
人公がお前らの正式な相手だから。エロゲーヒロインは主人公の下で幸せになれる。こんな女を金で買うドブカスなんかよりももっと幸せになれる。そもそもお前らは俺の性奴隷という立場で本当に大丈夫か?
「まぁ色々考えてることがあるんだよ」
「考えてること」
「ちなみに家に帰っても勉強するか?」
「しません」
「しなーい♪」
今日はホムラは人公の世話。マキノは家に帰るらしい。
「社宅は住み心地どうだ?」
「最の高」
グッと彼女がサムズアップ。
「個室貰えるのが最高だよね。しかも家賃に補助が入って(※自重)円でしょ? これで最高じゃなかったら何?」
「満足したならよかったよ」
「全部アクヤのおかげっしょ。だからいつでも抱いていいからね?」
要熟考ってことで。
「経済的に救われたなら俺から言うこともないしな」
「ちなみにあーし妹が欲しいな」
ミキノさんが妊娠すればいいわけだ。
「でさー。アクヤぁ」
「お断り申し上げます」
「まだ何も言ってないじゃん」
「ミキノさんが捕まるぞ」
「意外と悪い気はしていないみたいだよ?」
マジか。ミキノさん、マキノをそのまま大人にした感じで魅力的だったなぁ。おっぱいも大きかったし。
「アクヤ。エロい顔してる」
「しょうがないだろ。健全な男子高校生のサガだ」
「親子丼食べたくない?」
「鶏肉と卵がいい感じだよな」
「そーじゃなくてさー」
言っている意味が分かるから、あえてとぼけたんだよ!
「アクヤ様。マキノのお母さんと?」
「しません」
そもそも向こうも男として見てないだろ。
「だから結構その気なんだって」
「余計出来るか」
っていうか。ホムラは人公のところにいかなくていいのか? 飯作るんだろ?
「レンチンの米と、レンチンのおかずと、サラダだけだけどね。あとスープ」
手抜きにもほどがあるだろ。
「アルシのために米研ぐのも面倒です」
うーん。なんという主人公。大丈夫か。これ。本当に幸せなルートに行くんだろうな?
人公。お前、ヒロインを幸せに出来るよな?
「じゃああたしはもう行きます。マキノも早く帰りなよ?」
「そだねー。駅までアクヤに送ってもらおうかな。社宅は駅近だし」
「じゃあそうするか。ホムラも気を付けてな」
「ええ、十分留意します」
コーヒーを飲み終えて、俺たちは席を立つ。
「週末は泊まるんだろ? マキノ」
「お母さんも了承してるよ。むしろアクヤと仲良くしてもらえると心情的にもプラスみたい」
まぁ実質コネ採用だしな。俺的にもそれはいいんだが。マキノも俺の御機嫌を取る必要があるわけだ。
「アクヤ的にはオッケー?」
「いくらでもどうぞ」
「でも抱かないんだよねー」
だからそれは俺の童貞がだな……。純情な俺にそういうことを求めるな。いや求めるのはいいんだが、応えられると思うな。マジで辛いんだよ。G行為にも限界はあるんだぞ。
「愛してるっしょ♡ ア・ク・ヤ♡」
あー、はい。そうですか。もしも俺がこの世界の主人公だったら躊躇いもないが。




