第78話:今週最後の
【人公アルシ視点】
「起きろー。アルシー」
ギュッと頬をつねられてボクは覚醒する。痛い痛い。頬をつねるな。
「朝飯用意したから。食べたら学校行くんですよ」
「ホムラは?」
今日は金曜。ホムラがボクの担当だ。
「眠いので先に行くぞ」
「ちょっと待って。一緒にいこ? ほら。ボクと登校したいでしょ」
「じゃあ四十秒で支度して?」
無茶言うな。
「というわけで眠いんだぞ」
たしかにホムラはうつらうつらとしていた。
「趣味って言っていたけど何してるの?」
「黙秘」
「いいじゃん。バカにしたりしないし」
「言うなって言われてるし」
「誰にだよ?」
「黙秘」
ホムラの知り合い? とするとコヲリか? いやそれだったら助言者を黙秘にする理由が。コヲリもバイトしているって言っていたし。なんかボクの知らないところで回っているような。ま、いいか。今日が終われば週末だ。日曜日はカホルと映画デート。今度こそ手を繋いでもらおう。いやー。カホルとデートできるなんてボクは幸せ者だなー。
「あ、カホル。コヲリ」
で、その二人を見つける。一緒に歩いていた。ボクは嬉しくなって声をかける。
「ああ、ども」
「…………おはようございます」
「コヲリテンション低くない?」
「……仕事が長引きまして」
「何の仕事?」
「……黙秘」
どいつもこいつも黙秘かよ。
「カホル。チケットとった?」
「スマホで取ったよ。今流行りの恋愛映画」
恋愛映画を男女で見るのかー。これはワンチャン……。
「……眠い」
「眠い」
「ちゃんと授業は聞かないとダメだぞ?」
「「「…………ボソボソ(お前が言うな)」」」
「何言ったの?」
「「「別に?」」」
??? まぁいいか。
「ホムラ。また昼休みね」
「はーい。ふわぁ」
チラリと周囲を見る。ボクを妬ましく思っている男子の視線が心地いい。やっぱこれだよこれ。ボクだけがカホルとコヲリとホムラの傍にいれるんだ。三人ともボクの事が好きだし、ボクも三人が好きなんだから。持ってるものは違うよなー。
「アークヤッ!」
で、その視線の先で、頭の悪い残念な小比類巻さんが九王に抱き着いていた。男の趣味が悪いと程度が知れるよなー。残念な小比類巻さんだこと。
「アクヤ。大好きだよ?」
「ソレをここで言うな。俺が刺される」
「いいじゃん。香典包むよ?」
「追っかけ自殺はしないのな」
「友引だったら考えるけど」
「そういう問題じゃねーだろ」
クソが。見せつけやがって。あーやだやだ。これだからおっぱい星人は。どうせ小比類巻さんの胸に絆されたんだろ? 胸で女の子を選別するなんてサイテー。
「「「…………」」」
その九王を睨みつけるようにカホルとコヲリとホムラが見ていた。気持ちはわかる。風紀的にマズいよね。見せられて不快ってのもあるし。常識くらい弁えてほしいよね?
「…………ボソボソ(マキノめ)」
「…………ボソボソ(おっぱいか。おっぱいですか)」
「…………ボソボソ(あたしにも有ったらなー)」
三人が何を言ってるかまでは読み取れないけど。そうして学校に登校して、ボクは授業を眠る。昼休みに心地いい目覚め。六組のホムラと学食に行く。
「ホムラは何にするの」
「ウニイクラ丼」
ボクの奢りだからって高いの頼み過ぎじゃない? とはいえ奢らないわけにもいかず。起こしてもらって朝と夕の料理は作ってもらってるし。でもそれって幼馴染としては当たり前じゃない? 亭主関白としてビシッと言った方がいいのかな?
「うまうま」
そうして食べてるボクとホムラのちょっと離れたところで九王は小比類巻さんと食べていた。クソ。目障りな。そもそも将来性のない六組の生徒同士の傷の舐めあいだろ。
「小比類巻さん。お話があります!」
「あーしには無いけど?」
「ちょっとここでは……」
「じゃあ諦めてね」
「まだ何も言ってござらん!」
「告白でしょ?」
「わ、分かりますか?」
「視線がエロかったから」
「い、いや、そんなことは」
「あとあーしはアクヤにベタ惚れだから。他の男は興味ないの♪」
あーあー。バカな女は何処にでもいるもんだな。
「ホムラはあんな女になっちゃダメだからな」
「あんなって?」
ボクはバカ女こと小比類巻さんを指差す。
「将来性も無い男についていっちゃダメってこと。ちゃんといい男を見つけるんだぞ」
例えばボクとか。
「じゃあそうします」
ここで告白してくれてもいいんだけど。
「好きな人いるでしょ?」
「いないわけでは無いとも言えないこともないぞ」
どっちだよ。まぁボク以外にあり得ないんだけど。
「ちゃんと大切に恋をするんだよ?」
ボクとのね。
「忠告は聞き入れるぞ」
ほら。やっぱりボクが好きなんだよ。いやー。照れるな。
「ホント小比類巻さんは空気読めてないよねー」
「…………ボソボソ(羨ましいですけどね)」
ウニイクラ丼を食べながら、ホムラは何かを呟いた。でもさぁ。奢りだからってウニイクラ丼は……。ボクにだってゲームをする金が要るんだけど。
「何か文句でも?」
「無いよ」
嘘だけど。週末はカホルとデートもあるし。ちょっと貯金下ろさないと。親が仕送りしてくれるけど、もうちょっとボクの遊興費についても斟酌してほしい。カホルとデートするんだから親としてもお小遣いもっとくれるべきじゃない?




