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ガリ勉の俺がエロゲーの竿役に転生したが童貞すぎてラブコメは無理  作者: 揚羽常時


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第73話:二天一次元プロダクション


「無理だよ~。無理だって~。もう帰ろう?」


 今日はバリバリの平日。ラリルトリオの誰も派遣しない火曜日。今日を指定して俺たちは二天一次元プロダクションのビルに来ていた。始まりは一通のメールだった。


「動画を拝見しました云々」

「是非ともプロデュースのコツを云々」

「お話があるのですが云々」

「我が社ならさらなるサポートを云々」


 そんなダイレクトメッセージが不動ミヨ、つまりホムラ宛に送られ。それを青ざめた表情で俺に報告したホムラは正に死刑宣告を受けたがごとく。


「ちなみにママである愛スール先生とはどういう関係で云々」


 愛スール先生こと二條コヲリはホムラの姉だ。つまり盛大なマッチポンプ。ちょっと意味は違うが。大混乱の極みに達したホムラの肩を叩いて、「いい案件だから受けろ」と俺は囁いた。メールが形式上丁寧に書いてあったが、読んでみれば不動ミヨを二天一次元プロダクションでプロデュースさせてくれませんかという提案以上のモノではなく。しかも相手がVキューバーの大手というか国内トップクラスの事務所。普通はそこら辺の個人勢に見向きもしないことを考えると、破格の待遇と言えるだろう。


「話だけ聞いてみようぜ」


 と俺が説得し、最後まで泣いていたホムラを無視してスケジュール調整のメールを送信。現役JKということで次の週末でどうでしょうとは言われたが、そもそも高校のコヲリとホムラの卒業資格は買い上げている。


「今度の火曜日などどうでしょう?」


 と返すと心配されたが最終的にそこに落ち着いた。二天一次元プロダクションがプロデュースしてくれるなら不動ミヨはさらに人気を獲得する。ソシャゲコラボ。注目の中の配信。企業案件。様々な仕事が舞い込むだろう。断るには勿体なさ過ぎるわけで。と言ったんだがな。


「無理だよ~。きっとどっきり企画で個人Vキューバーを嵌めて笑おうって魂胆だよー」


 そんな炎上案件を国内トップシェアがやるとは思えんのだが。


「ほら行くぞ。入ってしまえば単なるビルだって」


「……ホムラちゃん。……もうスケジュールは決まっているんですから」


 約束の時刻まで十五分前。ちなみに三十分前について、十五分ほど尻込みしているホムラを引っ張って何とかしようとしていた計算になる。


「大手が炎上商法するわけねーだろ」

「何かあったらメール開示して訴訟しようぜ」

「ウチの法務部は優秀だから賠償金で借金返せるかもしれないぞ」


 さまざまな言葉で励ましたのだが、それでもVキューバーの大砦、二天一次元プロダクションの威光が強すぎるのか。ホムラはビルに入るのも躊躇っている。


「あのー。どちら様?」


 で、グダグダと非生産的なやり取りをしていると、声をかけてくる人が一人。OL風のスーツを着た可憐な女性で。まぁ二十歳は超えているだろうが、見た印象は就活中の女子大生。


「ああ、ええと。ちょっと御社に用事があって」


 俺が礼をして、事情をかいつまんで話す。もうこのまま首根っこを引っ掴んでビル内に突撃するべきか悩んだが。


「え? 綾女テイル氏!?」


 話しかけられた彼女の声を的確に見抜いたダメゼッタイ音感……というか絶対音感持ちのホムラが驚いていた。


 綾女テイル。


 配信のたびに赤スチャを投げる不動ミヨガチ勢で、彼女が不動ミヨをメジャーに押し上げた立役者と言っても過言ではない。もちろん、その声を見極めたホムラは流石と言うべきではあったが。


「その声!? ミヨミヨ!?」


 こっちもさすがに二天一次元プロダクションの歌姫と呼ばれる人気ディーヴァ。綾女テイルさんも一発で不動ミヨの声を察知した。


「なんで!? なんでミヨちゃんがここに!? まさか私の走馬灯……ッッ」


「いえ、真実不動ミヨです」


 俺がホムラを指して指摘すると、はわ~、と感激の声を上げて綾女さんはホムラに手を差し出した。


「握手してください!」


 もうここまでくると限界オタクだろ。どんだけ不動ミヨが好きなんだ。


「それで……なんでミヨちゃんが?」


 お互いに握手して感動し合っている綾女さんとホムラ。ホムラにとっても綾女テイルさんは恩人で、ついでにファンでもあった。互いにプロとアマの歌姫代表だ。お互いに尊敬しているらしい。


「少し御社に話が合って……」


「まさか……ミヨちゃんがウチに!?」


「可能性が無いでも無い。程度ですね」


「は! はわ~~~~~~~!!!!」


 口元を押さえて感動の嵐。だから決まっている話じゃないんだって。


「ようこそミヨちゃん! 21プロへ!」


 二天一次元プロダクションは長いので、業界では21プロと呼ばれるのが一般的だ。


「えと、そんな、あたしなんかが21プロなんて……」


「大丈夫だよー! ミヨちゃんの声最高だもん! プロデュースし甲斐があるって! そもそも私が発掘したんだよー!」


 ちょいちょい思っていたが、綾女さんって不動ガチ勢だよな?


「どこに行きたいの!? アポとってるよね! 新規事業部!?」


 21プロに新規事業部ってあるのか? Vキューバーのマネージメントオンリーだろ?


「と、とにかく今日のアンラッキーカラーが宮本武蔵で……」


 宮本武蔵は色じゃねぇ。


「二天一次元プロダクションは無理だよ~~!」


「わかるわかる。私も最初は緊張しまくりでゲボ吐きそうだった!」


 綾女さんのファンには聞かせられんな。


「綾女。何をしているんだ?」


 今度はビル内からビジネススーツ姿の男性。


「あ、社長。やっほー」


 社長って。社長か? 確かにネットで見た21プロの社長の顔だな。


「社長が呼んだの!? ミヨちゃん!」


「え、あぁ。そうだが……そちらが?」


「お初にお目にかかります。不動ミヨのマネージャーをしている九王アクヤと申します。こちらは不動ミヨの魂である二條ホムラ。今日はよろしくお願いします」


「ああ、ども。マネージャーが同行するとは聞いていましたが。お若いですね。企業ではありませんよね?」


「単なる学友です。ただこういう場に二條さんは不慣れなので、私が同行しようかという話になりまして。返信のメールでも同行は許可してもらいましたし」


「学友がプロデュースを……それはそれは……」


「…………」


 で、マネージャーの俺。不動ミヨの魂のホムラ。そのホムラと瓜二つのもう一人。


「そちらは?」


「浮動ミヨのママの二條コヲリです。お話で興味を示されていたので、同行させてもらいました」


「……愛スールと申します」


「え!? ミヨちゃんの創造神!?」


 ホムラと全く同じ顔をした双子の姉。綾女さんのテンションがマックスになるのは避けがたく。


「ではご案内します。社長室でよろしいでしょうか?」


「では失礼しまして」


 未だにぐずるホムラを引っ張って、俺とコヲリは本社ビルへと入っていった。


「ミヨちゃんミヨちゃん! 話が終わったら声かけてね? お話ししよ?」


「えと、はい」


「愛スール先生も!」


「……えと……はい」


 さすが双子。同じ切り返しだぜ。


「それではどうぞ。お茶を用意させますので」


 そうしてズリズリとホムラを引っ張って、俺は社長室へ。そのホムラに熱い視線を送る綾女さんはこの際ツッコまないとして。さてお話は?


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訴えたらニンテンドー法務部くらい強そうなアクヤ君の実家。
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