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ガリ勉の俺がエロゲーの竿役に転生したが童貞すぎてラブコメは無理  作者: 揚羽常時


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第68話:マキノのアパート


「マジで! マジで期待しちゃダメだからね!」


 何度目かと言わんばかりにそう言っているマキノに「はいはい」とだけ言って、俺はマキノの家に案内されていた。ちょっと駅から距離のあるアパートで、まぁ言ってしまえばボロイ。家賃も大体分かってしまうが、別にそれをからかおうという気は俺には微塵もなく。


「あー、じゃあ、レンジでチンしてくるから。待ってて」


 途中のスーパーで買った冷凍麵をレンジ調理するマキノ。部屋は2K。狭いっちゃ狭いが母子家庭なら一応うまく回せるのか。ちなみにマキノはメシマズなので、自分で調理をするということをしないし、俺も彼女の手作りを食う気はない。そうして黒ゴマ担々麵を二人ですすって、それから今日の授業の復習を始める。


「だからこの時の英語の翻訳は……」


「むぅ。過去形か現在形かわからないなんてずるじゃん」


「日本語の方がもっとややこしいだろ」


「御尤も」


 特に家にゲームがあるわけでもない。狭い部屋にはテレビだけはあるがネット環境がギリギリと言ったところ。他にすることもないので、勉強をしている俺たちだった。


「はぁ。休憩しよ」


「そうだな。根を詰めすぎてもいいことないか」


「お茶淹れるよ。何がいい?」


「ほうじ茶があればほうじ茶で。なければ何でも」


「ほうじ茶ね。はいはーい」


 あるのかよ。


「ところで、今回の件だけど……」


「お前のお母さんを説得すればいいんだろ?」


「できる?」


「さてなー。ところで母親が帰ってくるのって……」


「そろそろだと思うよ。シフトについては聞いてるから。今日は昼勤務みたいだし」


 パートも大変だ。九王グループに所属している俺には想像もつかない大変さがあるのだろう。しかも親一人子一人。マキノをここまで育て上げただけでも賞賛に値する。


「パートねー」


 ほうじ茶を飲みながら、俺はそんなことを呟く。


「さて、そうすると」


 勉強に戻るかーと思っていると。


「ただいまー」


 玄関から若い女性の声。おそらくだが。


「お帰りー」


 応えるようにマキノもそういった。


「あら、お客さんが来ているの?」


 玄関で俺の靴を見つけたのだろう。男の靴があることを親御さんがどう受け取るのか。


「あら……」


「どうも。お邪魔しています。マキノさんのクラスメイトの九王です」


 現れたのはマキノをさらにエロくしたらこうなるだろうなという美女だった。娘と同じだけの見事なモノをお持ちで、マキノのおっぱいは遺伝だったのだと俺の信じさせる説得力を持っている。


「男の子……もしかして娘の彼氏かしら?」


「いえ、クラスメイトです」


「こんな遅くまで我が家に滞在しておいて? 何もする気はなかったと?」


「はあ」


 懐疑されるのも当たり前かもしれなかったが、そこを弁舌を尽くして言い訳する気は俺には無くて。


「そもそもお母さんが帰ってくる時間分かるんだから、ここでするわけないでしょ」


「それもそうね。じゃあ本当に勉強を? あのマキノが?」


「失礼だなー」


 失礼だと思うなら、相応の点数を見せてほしいのだが。


「実はミキノさんを待っていたんですよ」


 なわけで、俺がぶっちゃける。特に隠すことでもないし、そもそも言わなきゃ始まらない。なわけで俺の目的がマキノではなく母親のミキノさんにあることを伝える。


「私に……?」


 俺があっさり母親の名前を呼んだことはスルーしてくれるらしい。有難いと言えばその通り。ここからさて、どれだけ相手を警戒させずに話を進行できるか。まぁ最初は警戒されるよなー。でも言わなきゃ意味無いし。


「何かしら。話しって。重要なこと?」


「重要……かもしれません。ミキノさん。転職してみませんか?」


「転職……?」


「えーと、うちの会社でちょっと人材募集しているところがあって。どうせだから信頼している人に頼もうかと思っていたんですが、ちょうどマキノさんから母親のことを聞かされて」


「縁故採用……ですか?」


「そうなるかもしれませんね」


 俺は言葉を偽らなかった。一気にミキノさんの顔が引き締まる。


「詐欺なら私の家にお金はありませんよ?」


「それは見ればわかります」


 バカにしていているつもりはない。ただ空気を読めないだけ。正確には読まないだけ。


「それに私は何もできることありませんよ。職場を提供されても働けないと思います」


「それは大丈夫です。仕事はレジ打ちと品出しですから。スーパーのパートでもしているんですよね?」


「それは……まぁ」


「我が社の社内コンビニで正社員として働きませんか、というご提案です。断られても結構ですけど、ちょっともったいないとは思いますね」


「詐欺でない証拠はありますか?」


「ではこちらを」


 俺は名刺を差し出した。俺の名前が書かれた九王グループの名刺だ。


「社内に話は通しておきます。俺の名刺を持って現れた女性に社内見学をさせてくれと。一度見に来てください。住所は名刺に書いてありますので」


「九王……」


 社会に興味があればちょっとそそられる名前だが、パートで日銭を稼いでいるミキノさんには通用しないらしい。


「本物……ですか」


「偽物だったら会社の見学ができないだけですよ。暇なときにでも会社見学をされて、それから判断してもいいんじゃないかと思います」


 それじゃ、と俺は立ち上がった。


「マキノ。黒ゴマ担々麵美味かったぞ。ゴチだ」


「あ、うん。じゃあまた今度ね」


 ヒラヒラーっとマキノも手を振る。


「あの、すみません。有難いお話なのに何も言えなくて……」


「気にしなくて構いませんよ。せっつくつもりはないので、ゆっくり考えてください。会社見学の方もぜひ。待ちわびておりますので」


「ありがとね。アクヤ」


「別に。適材適所だ。ミキノさんが貴重な人材だとわかったから勧誘しただけだよ」


「…………貴重な人材……」


「それではこれで失礼をば」


 そうして俺は帰っていく。ミキノさんの胸中を推し量るのは至難の業だろう。けれど実際にいい話なんだから断って欲しくないのも事実で。生臭い話をすると年俸も上がるし、本当に悪い話じゃないのだ。


「ついでにボロアパートともおさらば」


 なんだがなぁ。一応マキノにもミキノさんを説得するように申し付けているし、会社見学くらいなら行ってくれるだろう。じゃ、俺は俺の為すべきことをするか。


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