第60話:マキノとグラビア
「くあ……」
今日は土曜日。マキノと一緒にグラビア撮影に出向く日なんだが。
「はあ? はあ。はあ……そうですか」
もちろん俺がマネージャーを務めるのかと思ったが、プレプロがマネージャーを出すと言ってきている。なんでもネットでアズキがバズリまくって、アズキへの仕事がかなり舞い込んでいるらしい。
基本的に学校後の放課後と、休みの日にしか稼働しないが、既に青年誌などからは引っ張りだこで、「とにかくなんでもいいからアズキを引っ張ってこい!」と他社の編集部がせっついているとのこと。もちろんアズキことマキノにとっては追い風なので拒否する理由も無いのだが。
「えーっと。それって。あーしが売れてるってこと」
「みたいだな。ユーキューブでもチャンネル開設の動きがあるらしいぞ」
「でもあーしはアクヤにマネージャーしてもらいたい」
「とは言ってもなぁ」
プレプロに売り出して貰えるならこれ以上はない。ということはマキノも分かっているはず。ただ気心の知れた俺と一緒にいれないことに漠然と不安を感じているのだろう。基本的に杞憂なんだがな。
「じゃあしばらくは俺も同行するということで」
「ずっと一緒にいてくれないの?」
そんな捨てられた子猫の目は止めてくれ。
「金貰ってるプロなんだから飲みこむべきは飲み込んでもらうぞ」
「アクヤの意地悪」
どうせ悪役ですよ。俺は。
「とにかく行くかー」
ま、そげなわけで撮影場所へと出向く。今日はマネージャーさんも一緒にだが、一応俺も同行。
「アズキさん。今が勝負時です。今のこの流れを掴めばアズキさんはさらに上へ行けます」
「あ、そうですか……どうぞよろしくお願いいたします」
本人は金が貰えればどうでもいいといった感じだが、たしかに今のネットでのバズリ具合を見ると彼女にとって分水嶺。ここでおっさん連中に認知されるとグラビアアイドルとしては成功もするだろう。
「なのでアズキさんにはぜひ仕事を断らないでもらえると」
「まぁ仕事を受けるという意味でなら確かにそうしますが」
そうして撮影現場へ。今日は海を背景に水着写真を撮るらしい。六月にもなったし、俺としては暑いくらいだが。今日は水着になっても文句は無いよな。もちろん肌荒れを懸念して日焼け止めも塗るし、髪のセットもするのだが。
「それじゃあアズキさん入りまーす」
「本日はよろしくお願いします!」
そうして俺は浜辺で写真に撮られるマキノを見ていた。グラビアアイドルのアズキ。それが開花していく様を見ていた気もするし、独占したい気もする。おっぱいがプルンと揺れる。Hカップのおっぱいは写真の中でも弾んでいて、その笑顔は見る男を全て魅了する。
「いいよーいいよー。アズキちゃんいいよー」
カメラマンもノリノリで撮影してビキニ姿のマキノを撮影していく。
「うーん」
そのことの微妙に嫉妬している俺がいて。虚しい感情だとは思っているが否定するのも難しく。ところでマキノの胸弾み過ぎだろ。いくらHカップだからってそんなバルンバルン揺れるか普通?
「――――♪」
そして弾けるような笑みを見せながらマキノは写真に撮られていく。きっと彼女にとってはカメラに撮られることも慣れてきたのだろう。笑顔の選択があまりに自然だ。
「ふう」
そうして一連の撮影が終わって。全身をタオルで隠しながらマキノは一息つく。
「お疲れ様」
俺はスポーツドリンクを彼女に渡して、そうして労う。
「どうだった。アクヤ」
「今すぐお前のおっぱいを揉みたくなった」
「えへへ。アクヤにならいいよ?」
「ジョークだ」
「あーしはジョークじゃないんだけど」
「だろうよ」
「何かアクヤを縛るものがあるのかな?」
ギクリ、と俺は図星を突かれた顔をした。
「普通あーしを金で買ったら抱くっしょ。なんでアクヤはしないのかなって」
「色々あるんだよ」
色々で済ませていいのかはともあれ。水平線の見える浜辺で、撮影スタッフが独占している砂浜。そこで水着写真を撮られたマキノはまぁドスケベと言って問題ない仕事をしているが職に貴賎はあるのかないのか。一応マキノの母親には了承を貰っているらしいが。
「不能とか?」
「そっちは大丈夫だ」
心配される俺も俺。
「アクヤはそれでいいの?」
「お前がエッチだってことは否定しない」
「だよー。あーしエッチだよ? アクヤと一緒に寝ている時にG行為とかしてるし」
イシバラブラブ天驚拳とか撃てればいいのにな。
「何がアクヤを縛っているの?」
「まー色々とあるんだよ俺にも」
「あーしはアクヤに抱かれるならお金出すよ?」
要らないから。
「とりあえず着替えてこい。飯奢ってやるから」
「やた♪ 何を食べさせてくれるの?」
「オムライスとか好きか?」
「大好き♪」
それなら都合はいいな。じゃあオムライスのうまい店を検索するか。
「あのさ。アクヤ」
「何か?」
「アクヤさえよければあーしはいつでもいいからね?」
「ご検討しておく」
とはいえだ。マキノほど売れていれば芸能界でも男に困ることは無いんだろうけど。そこらのイケメンモデルがワラワラと寄ってくるだろう。あ、いや、そうすると困るな。マキノは人公アルシのヒロインになるかもしれない存在。その前に処女を散らすのはいけないことだ。そこはしっかりと忠告しておこう。
とはいえだ。
そもそもラブハートのゲーム内で九王アクヤはマキノのグラビアアイドルのプロモーションをしていたか? そこだけがちょっと疑問点だが。もしかしてゲームの展開と変わってきているところがあるのか? とすれば俺はこれからどう立ち回ればいいのだろう。
「ラブハート……ね」
真実のラブは金でも体でもなくハートじゃないか! という主人公の叫びを体現したようなNTRエロゲー。だがその主人公である人公アルシへのヒロインの好感度があまり見えない。そこだけは俺としても微妙だった。幸せになるべきヒロインたちを失望させて人公は何がしたいのよ?
「アクヤ。着替えて来たよ。帰ろ?」
お疲れ様でしたー。とスタッフに声をかけて、美少女で巨乳のマキノにデレデレしながら撮影スタッフが返事を返し。
「じゃあオムライスを食べに行こー」
「一応芸能人だって自覚あるか?」
「その前にあーしはアクヤのセフレだから♪」
「…………」
俺が何を思っているのか。それすらもマキノは思っていないだろう。こっちとしても抱けるなら抱きたいので本音を言うのは躊躇われるのだが。エッチか。したいなー。




