第6話:コヲリとの夜
「…………」
無言でゲームをする俺。今は格ゲーをしている。ホケーッと。無思考で。カチャカチャとゲーム操作の音が響く。テレビからはゲームのミュージックと音声が。そのまま没頭するようにゲームをプレイして。それから俺は一息ついた。
「コーヒーでも淹れるか」
そういうわけでコーヒーを淹れて飲む。
「うーん」
何か、こう。集中できない。理由は分かっている。コヲリの件だ。今夜の相手をしてくれると自己申告があったが、そもそもこんなクソ童貞に対応など不可能で。さて、どうしてくれようと思っているのだが。思ったより頭が働かなくて、俺はコーヒーを飲むしかなかった。カフェイン必須。
「……アクヤ様!」
見れば悲痛の顔で、コヲリが青ざめていた。俺は何かをしてしまったのか?
「……コーヒーをお飲みになりたいなら私めにお申し付けください。……アクヤ様が準備する必要はないのです」
つまり俺にはコヲリに命令する義務があると。一人でコーヒーも淹れられないのは、それはそれで不便なのだが。
「コーヒーくらい自分で淹れる」
「……しかし……」
「そこまで尽くしてくれなくていいぞ? 俺に出来ることは俺がやるから」
「……私は……要りませんか?」
「必要だけど。そこまで俺の御機嫌を取らなくてもいいってこと」
「……しかしアクヤ様に見放されたら私の家族は……」
「あ、そうか。借金の利子差し止めのために売られたんだったな」
「……はい。……アクヤ様の御機嫌は私たちにとって何より恐れるべきものです」
「まぁだからって感じなんだけど」
「……何でもします。……なんでもしますから……どうかご慈悲を」
だからそこまで鬼畜なことをするつもりが俺には無くてだな。
「じゃあ夜はいっぱい甘やかしてくれ」
「……わ……わかりました」
「約束な」
「はい。約束です」
そうしてまたゲームに帰っていって、ピコピコと操作する俺だった。
「アクヤ様ー。業務用スーパーにモッツァレラチーズが売ってましたよー」
ホムラが戦利品とばかりに掲げる。
「おー。じゃあそれでカプレーゼ作ってくれ」
「承りー」
そうしてホムラはキッチンに消えていく。同じく買い物をしていたのは花崎カホル。
「今日のご飯は何だ?」
「炊き込みご飯と豚汁にしようかと」
「うん。美味そうだ」
「が、頑張ります」
俺の不興を買ったら親の会社の出資が無しになる、というのは辛いことなのだろう。親父も俺のために性奴隷を見繕うのは嬉しい限りだが、それはそれとして人非人みたいなことをするなよなー。重ねて言うけど嬉しいのは嬉しいんですが。
「アクヤ様。カプレーゼだぞ」
「おう。美味そう」
トマトとモッツァレラチーズとバジルソースのカプレーゼ。なんでも水牛の乳百パーセントらしく。なんと言うんだったか。モッツァレラ・ディ・ブッファラって奴。
「うーん。ウマウマ」
「あのね。あのね。アクヤ様」
俺がカプレーゼを摘まみながら至福に浸っていると、ホムラが言ってくる。
「何か?」
「その。性奴隷として傲慢な意見なんだけど」
「さほどのことでは怒らんぞ?」
「うん。だから。あたし。アクヤ様の性奴隷になれてよかった♡」
あー。さいですか。確かに抱いてないもんな。酷いこともしようと思えばできるが、それをホムラが望んでいないなら、するのも少しためらわれて。そう言う意味では俺はチョロいご主人様だろう。このまま親が借金を返済するまで俺の御機嫌を取ればいいのだから。
「アクヤ様のためならエッチなこと何でもするからね?」
「覚えておくよ」
その時は容赦しないから覚悟しとけ。この野郎。
「……ホムラちゃん。……今夜の寵愛を受けるのは私ですよ?」
と嗜めるようにコヲリが言った。カホルは飯を作っているので不参加。そうして御飯が出来ると。
「ああ、美味い」
カホルのご飯はマジで美味かった。炊き込みご飯と豚汁。俺は転生前からおばあちゃんが作る系の料理が好きで、こういう根菜や出汁を聞かせた料理が好きであったのだ。いや、最近のラーメンとか流行りの外国料理とかも好きだけど。モグモグと食べて、それから御馳走様。俺は皿洗いをコヲリに任せて、そのままシャワーへ。しっかりと浴室の扉をロックして、ホムラの入れてくれた風呂に入る。あー。極楽極楽。と思っていると扉がガチャガチャと開けられようとして制止されていた。
「……アクヤ様~」
扉の外からコヲリの声が聞こえる。アニメ声優にでもなれそうなアニメ声だ。それはカホルもホムラも一緒だけど。
「……開けてください」
「断る」
あぁ~。いい湯だな。
「……アクヤ様にご奉仕したいのです」
「ちなみにどんな?」
「……この身体でボディブラシの代わりを務めます」
「お断りだこの野郎」
「……アクヤ様~」
で、そのまま風呂上がりで、歯磨きをして、そのままベッドへ。そうして顔を赤くしながらパジャマ姿で現れたコヲリに、俺は隣で寝るように言う。そうして添い寝して貰って、俺は健やかに眠りにつく。隣のコヲリの腕に抱き着いて、そのままスヤスヤ。
****
【コヲリ視点】
「……えーと」
ナニをされるかと覚悟を決めていたのですけど。そんな私の覚悟も無視して、アクヤ様はぐっすり眠られてしまいました。起きる気配はないようで。何かこっちをテストでもしているのでしょうか。私からお相手を務めないといけないとか。でも私にできることはそんなにないし。おっぱいだけは大きく育ちましたが。
「……アクヤ様?」
「……すー……すー」
ガチで私を置いてけぼりに一人アクヤ様は熟睡しているらしいです。こうなるといっそのことアクヤ様の股間がどうなっているのか見てみたい気もしないではない……と思うのも自然で。けれどさすがにそれは……ねえ。興味本位で恐る恐るアクヤ様の股間に手を添える。事実上アクヤ様の股間をまさぐっているのですが、これって……。
「……デッッッッッ」
ちょっと待ってください。まだ活ホッキしていないのにこのサイズですか? これはちょっと……想定外というか。これが私に欲情して大きくなったらどういうことになるんでしょう? アクヤ様は私たちの人権を購入された御方で、私たちはアクヤ様には絶対服従なんですけど、それでもこれで貫かれたら女なんてみんな落ちそうな気がビンビンするんですけど。私は寝ているアクヤ様に囁いてみる。
「キスしてもよろしいでしょうか?」
何も言わないアクヤ様に、私はオズオズと唇を重ねて、自分を慰めるのでした。




