第58話:ヒロインは順調で
「それじゃあね! 無明のみなさん! 皆さんに大日如来の加護があらんことを! 高評価とチャンネル登録もよろしくぅ!」
そう言って不動ミヨの生配信は終わった。俺も視聴していたが、思ったよりホムラのトーク力が凄くて引き込まれる。成績がダメでも頭がいい証明だろう。で、今日は上限スーチャが二回も来て。
「アクヤ様~」
生配信を終えたホムラが怯えるように俺の部屋へと。
「こわいですよー。赤色コメントが二回も来て~」
「受け取っとけ」
何でも今日だけで十二万円稼いだらしく。そりゃ大人気ユーキューバーとは数字が違うだろうが新人Vキューバーとしてはかなりのもの。導線も引いているし、おっさん世代の視聴者がスーチャを投げるのも必然。生配信のアカペラも抜群の上手く、ぶっちゃけプロにもなれるレベル。その不動ミヨのイラストの権利を持っているママのコヲリはイラスト投稿サイトに不動ミヨのイラストも投下していた。それもまた人気を博し。実際に液タブも電動の机も重宝しているらしく「ありがとうございますアクヤ様」と言われた。金は俺のモノじゃないんだが。
問題があるとすれば人公アルシのことで。人公が追試を受けなければいかず。しかし、もし追試がクリアできればカホルとコヲリと映画デート。複雑な気持ちになりながら、一方で安堵も覚える。人公はヒロイン攻略のために動いているというのは確かに安心できて。これでカホルとコヲリの映画デートが成功すれば二人とも人公にキュンキュンするだろう。そうすれば俺に寝取られずに済んで、二人は人公と幸せに。
「ところでアルシの方は大丈夫ですか?」
一人関わっていないホムラがそう聞いてくる。不動ミヨとしての活動もあるし、あんまり学業にリソースを割けない。いや、勉強を怠らないのは俺の指示だが、思ったより不動ミヨが成功しているせいでホムラはストリーマーにのめり込んでいる。頑張れよというのが俺の意見。
「大丈夫かと言われると……」
あんまり大丈夫じゃないかもしれない。相当勉強していなかったのだろう。すでに二年生の範囲はちんぷんかんぷん。さすがに追試でテストより難しくはならないだろうから、基礎だけ集中して教えて、なんとか追試をクリアさせることがカホルとコヲリの使命らしい。俺は図書室で本を読んでいるばかりだったが。
「っていうかアルシって頭悪かったんですねー。あたしでも赤点はとらなかったのに」
「テスト勉強だけはホムラもしっかりしていたからな」
いい子いい子、と俺はホムラの頭を撫でる。ラリルトリオは俺に感化されて勉強をチョクチョクやっていた。俺が筋トレと勉強を日課にしていたため、それがラリルトリオにいい影響を与えたのだろう。
「はー、いいお湯」
で、今日は木曜日。明日はホムラが人公アルシを起こしに行く番。というわけでちょっと嫉妬している俺はホムラと一緒にお風呂に入っている。もちろん水着ありで。ホムラはちっぱいだが、それで女性としての魅力が目減りするわけでもない。俺としてはホムラはホムラで個性があると思っている。で、まぁ股間がマックスギンギンになっており。
「苦しそうですね……」
まぁそりゃな。ホムラの水着姿を前にすると、俺は活ホッキ全開だ。
「それでも抱きませんもんね。アクヤ様は」
一応お前らを考えてのことだぞ。
「それで稼いだお金ですけど……」
「好きに使ってくれ。豪遊するでも、親の借金を返すでも」
「もしかしてそのために?」
別にそういうわけでは。結果論。
「アクヤ様はあたしの歌を知っていらっしゃいましたよね?」
「歌って言うか。声の可能性は察していたな」
「ですよね。なんで……ですか」
「難しい話でもない。単に好きな声ってだけ」
「す……好きな声……」
顔を赤くしているとこ悪いが、褒めたのは声だけだぞ。
「もう。もう。アクヤ様はもう」
ポカポカと拳をぶつけてくる。それが俺の胸板に叩かれて。
「ホムラ」
そんな彼女を俺は抱きしめる。柔らかく。華奢で。可憐な彼女。俺が抱きしめる権利は有していないが、抱きしめる打算はある。
「あ、あの……アクヤ様?」
「ゴメン。でも、ホムラが愛おしい」
「大丈夫ですよ。あたしもアクヤ様が愛おしいので」
そうして二人で抱き合う。そのまま風呂をあがって、俺たちはパジャマ姿になってベッドに寝転んだ。そうして手折れそうなホムラを抱きしめたまま、俺は眠りにつく。
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【ホムラ視点】
「もう。愛おしい御方」
あたしは二條ホムラ。目の前で寝ていらっしゃる九王アクヤ様の性奴隷だ。だというのにアクヤ様はあたしを抱いてくれず。今日もあたしを悶々とさせながら眠りについている。でもちょっと思うところもある。明日は金曜日だ。つまりアルシの家に直接起こしに行く日。そのことをいいことだとアクヤ様は言うのだけど、同時にやるせなさも感じていらっしゃるのだろう。そうじゃないとあたしを添い寝相手に選ばないだろうし。
「アクヤ様……」
スースーと寝ているアクヤ様の頬にキスをして、それからちょっとだけ自分を弄る。正味な話、あたしにしろコヲリお姉ちゃんにしろカホルにしろアクヤ様に抱いて欲しいのだ。そうじゃないとこの高ぶるメスを抑制できない。だというのに釣るだけ釣ってエサを与えないアクヤ様は逆説的に鬼畜。まさに性奴隷を嘲る御方。
「アク……ヤ……様ぁ……♡」
あたしの指は止まらない。何をしているかなんて今更自覚するのもまさに今更で。息を荒らげてG行為が捗る。本当に罪な御方。あたしをこんなにも興奮させて、なのに一切手を出さずに眠ってしまわれるなんて。
「アクヤ様ぁ♡ 愛しております♡ この世の誰より……♡」
聞かれていないと知っている。けれど、だからこそあたしは大胆になる。きっと今のあたしは変態だ。誰かが見たらドスケベな女の子だと後ろ指を刺されるはずだ。でもしょうがない。アクヤ様の御寵愛を受けるためならば恥なんて幾らでもかく。アクヤ様の性奴隷であることをこんなに幸せに感じるなんて思ってもいなかった。それはお姉ちゃんもカホルも同じだろう。
「はぁ……はぁ……はぁ……♡」
息が荒くなる。最後が近いと体の感覚が教えてくれる。最後にギュッと指で大事な部分を押さえる。
「ぅ……ぁ……ッッッ♡」
何をしているかと言われると別に何もと答えるが、アクヤ様に問い詰められれば話は別だ。
「あたしはイヤしいメスですぅ。アクヤ様の性奴隷ですぅ。アクヤ様ぁ……♡」
卑しい奴隷の分際でアクヤ様に何かを求めるのは間違っている。けれど、あたしにも感情はあって、その感情が言っている。アクヤ様の寵愛が欲しいと。アクヤ様にとっては使って捨てるだけの存在でも、その使われて捨てられることをあたしは望んでいる。それも多分、あたしだけじゃなくてお姉ちゃんもカホルも。あるいはマキノも。
「アクヤ様ぁ♡」
明日は金曜日。アルシのところに出向かなければならない。それがあたしには非常に不本意だ。アルシの面倒を見るくらいならアクヤ様に奉仕したい。そうしてアクヤ様に味噌汁を飲んでもらって、美味しいよと言ってもらいたい。それが出来ないから、今のあたしは不満なのだ。
「ごめんなさいアクヤ様。あたしはアルシのことを放っておきたいのです」
ソレをダメだとアクヤ様は言うんだろうけど、あたしの本音はそこにある。アクヤ様の性奴隷というこの立場を永遠なモノにしたい。アクヤ様が飽きて捨てられるまでアクヤ様の性奴隷でありたいと、心からそう思っているから。




