第52話:光と闇が両方そなわり最強に見える
「ふぅ。食った」
そうしてテスト終了。打ち上げも無事終わり。聖職者である教員諸氏がサラリーの範疇にあるテストの点数評価を頑張っていることに哀悼の意を表明し。しばらくは授業が続いて。俺はマキノと一緒に学食で飯を食って、そのまま教室に帰る。テストの返却は行われたが、ケアレスミス程度の減点はあったものの、特にさしたる問題もなく。カホルと点数勝負をしたが、俺が勝っていた。まぁ偏差値八十だし。
「ウニイクラ丼美味しかったー」
「給料で食う飯は美味いだろ?」
「まぁそうなんだけどさ」
「母親には何と言ってるんだ?」
「グラビアについては話したよ。まぁこんなにおっぱい大きくなったし。男子にエロい目で見られるのは今更だし。納得しているなら言うことは無いって」
「っていうかアズキヤバいぞ。SNSでバズってる」
「お給料上がるかな?」
「まぁあんだけエロければな。ちょっと様子覗いたけど、青年誌の編集部でざわついてるらしくてな。いくらでも払うからアズキを連れて来いって言ってたと社長が言ってた」
プレプロは九王グループの傘下だし、俺に回ってくる情報も誤情報ではないだろう。
「ま、エロエロなあーしの写真が売れるならよかったよー。紹介してくれたアクヤにも恩返しできるみたいでさ」
「何を言う。全部お前の才能だ」
「あーしはおっぱい育ててないけど」
「まぁデカければデカいだけ有利ではあるな」
「こんなおっぱいでよければ揉んでみる?」
「それは家に帰ってからでな」
もう。もう。揉んでしまいてー。俺にその権利が無いと知りつつ。それでも揉んでみたい。まさにサル。俺もマキノのグラビアで抜いている他の男子と変わらねえ。で、二人でくだらない話をしながら教室に帰ると。
――――――――ザワワッ!
教室中がどよめいた。え? なに? 俺と、俺の隣にいるマキノに視線が集中して。
「おい九王! これはどういうことだ!」
「お前はそんなキャラじゃねーだろ! この万年赤点王!」
「キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ! レゾンデートルを考えろ!」
「お前の成績が六組にとっての良心だろうに!」
ああ。それで大体悟れた。
「ちなみに何位だった?」
「学年一位だよ! なんだ! 四百九十六点って! 四点しか間違えてないとかありえねーだろ!」
まぁ全国模試の結果の時も教師どもに問い詰められたし、アルケイデス学園の中間テストくらいで俺が一位にならないのもそれはそれでおかしな話。
「どんなイリーガルな手段を使ったんだ!」
「花崎さんが二位に転落とかある意味で殺人幇助だぞ」
「孤高の高嶺のバラを貶めるなんてお前は鬼畜か!」
そう言えばカホルは高嶺のバラと呼ばれていたな。ゲームではちょくちょく聞いていたが、さすがに生徒の二つ名が会話で出ることも珍しく、この転生世界では久方ぶりに聞いた。
「何をした!? 誰の答案を覗いた!?」
「六組の誰の点数をカンニングしても学年一位は無理だろ」
「ぐ……そうだが……」
少なくとも俺が百パーセントカンニングしたなら、俺と同じ点数がもう一人六組から出る必要がある。
「っていうかじゃあマジで九王が学年一位か!?」
「褒めてくれていいぞ」
「運動が出来て勉強ができるとか、六組にとっては宗教裁判の対象だぞ」
なんでそうなる?
「くそう! 天は九王に二物も三物も与えやがって!」
「九王が学年一位なら、俺らはもう誰を下に見て安心すればいいんだ!」
どうやら六組という成績コンプレックスの魔窟では俺の頭の悪さが一種の清涼剤だったらしい。下を見て安心したい気持ちはわかるが、だからって……なぁ?
「だから打ち上げ来なかったのか! どこで何をしていた! 俺たちを下に見て笑っていたのか!」
「いや、そんなつもりじゃないって。普通に勉強して頭良くなっただけだから。六組から学年一位が出たんだぞ? お前らの克己奮励しだいでは六組が学年上位を占めるのも夢物語では……」
「無理だ! 俺は教科書を見ると吐き気がして」
「俺はじいちゃんが死ぬときにインテリにはならないと約束して」
「実は俺、数字アレルギーでさ」
さすがは成績最底辺の六組だな。まぁそんな六組の、その中でも選ばれし赤点王が学年一位なんだから世の不条理は虚しいことだが。
「朽ちもせぬその名ばかりをとどめ置きて」
「枯野のすすき形見とぞ見る」
俺が上の句を読むとマキノが下の句を返してくれた。勉強は出来ないのにそういうことは知っているらしい。
「ま、でもさすがあーしのアクヤだね」
「「「「「あぁあああんんんッッッ!?」」」」」
ケラケラと笑って俺の背中をバンバンと叩くマキノ。その「あーしのアクヤ」発言にクラスの男子が目の色を変えた。
「九王。貴様。小比類巻さんと……」
「いや、別に」
「あなた……『覚悟して来てる人』……ですよね? 小比類巻さんを『誑か』そうとするって事は逆に『始末』されるかもしれないという危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね?」
んな覚悟があるなら世の中恐くないわい。
「宗教裁判。判決」
「水葬刑」
「ブタの皮で包もうぜ」
「俺は火刑の準備をするから誰か東南の風を起こしてくれ」
こいつらにはやると言ったらやる………『スゴ味』があるッ!
「じゃ、そゆわけでー」
ネタに付き合うのも煩わしく、俺は普通に席についた。
「くそう。これじゃ六組最下位の冠は誰の手に……」
「言っておくが俺は今回のテスト、赤点一つだけだからな!」
「俺だって二つだけだぞ」
「マジか! なんでそんなに勉強頑張ってんの!?」
そもそも赤点を取るなよって話だが、それを九王アクヤが言うわけにもいかないのだろう。
「マジで最強じゃん。アクヤ。あーしも鼻が高いっしょ」
「いや、それ言ったら」
俺はスマホで有名なSNSを見せる。グラビアアイドルのアズキのアカウントが既にフォロワー五万人を超えている。もはやそれだけで一種のインフルエンサーと言えるだろう。
「社会的な意義ではお前の方が上だぞ」
「ま、おっぱい大きいだけだし」
それも才能だと言ったのは俺だがな。
「でさー。ちょっと頼みがあって……」
「もちろん。何でもいいよ。アクヤの言うことは何でも聞いてあげる」
よしよし。ここまでの伏線は何も問題がない。マキノがグラビアアイドルとして人気を博すのも俺の計算の内だし、その後のことを考えている。「胸デカいね」とか「太ももペロペロ」とか世紀末なコメントが並んではいるが、男の性欲という意味では真っ当な世界で。




