第43話:ボイス系ASMR
「あー、どもっす。フリーランスの伊藤って言います」
で、日曜日の夕食。今日はヒロインたちとは取るわけでなく。アポを取ってもらってフリーの外注に顔合わせをしてもらっていた。
「動画の編集っすか? そりゃやってできんじゃないですけど。九王グループが、ねぇ」
俺の名刺を受け取って、どう思ったのか。金持ちの道楽とか思われると不本意ではあるが、あながち間違ってもいない。
「というわけで、伊藤さんに動画の編集を頼みたいんですけど」
「相応金は払ってもらいますけど……それとは別にこっちの琴線に触れる内容じゃないと仕事は受けらんないっていうか」
「動画の編集作業は、だいたい曲のPVです。歌い手系のVキューバーをプロデュースする予定でして。一応三曲ほどサンプル持ってきましたから。聞いてくれませんか? 仕事を受けるかはその後でってことで」
「歌い手系っすか。まぁ一枚絵でPV作るくらいは出来ますけど」
俺のタブレットに無線イヤホンを繋いで、ホムラの歌声を聞く。そうして眠そうにしていた伊藤さんは、曲を聞くだに目を覚ました。
「なん……なん……なん……ッッ?」
「いい声でしょ?」
俺のおすすめのエロゲ声優の声だ。男でこれをスルーするのはかなり無理がある。
「なんっすか。この愛らしい声。マジで神じゃないですか」
「気に入っていただけて光栄です。仕事は受けてくださるでしょうか?」
「むしろこっちからお願いします。はぁ。素敵。これはバズる予感ビンビンします」
「もちろん相応報酬は払いますから……」
「そのー。一個提案が……」
「ええ、忌憚なく言ってください」
「お金はいいっすから、この声の主に俺専用の目覚ましASMR囁いてもらえませんか? 名前入りで! むしろこっちが金払うんで!」
「あー、じゃあ持ち帰って検討してみます。外注さんのお願いなら不動もOKするとは思いますけどね」
「うっす。あざっす。動画の編集は任せてください。とりあえず二十曲ほどチャンネル開設前に編集するって話ですよね? 全部やらせてもらいます。っていうかマジで女子高生っすか?」
「俺と同じ学校なので」
「え? 九王さん、高校生っすか?」
「ええ」
高校生です。
「じゃメールでのやり取りも今後続けるということで。ASMRは出来次第お届けします。とりあえずは目覚ましとお出かけ、あとはおやすみの囁きでいいですか」
「三種も用意してくれるんですか!?」
「仕事次第ではリクエストも聞きますので」
「全力で当たらせてもらいます!」
良き方向に話が進んでよかった。動画編集は外注だと割り切っていたが、まさか外注代が浮くとは。これもホムラの声の力か。
「で、そういうわけでホムラにはボイス系ASMRを収録してもらいたいんだが」
我が家に帰って、日曜日の夜。俺は自主勉強をしながら同じく勉強をしているホムラに声をかけた。
「ASMRですか。たしかに出来ないことは無いんですけど。私の声でいいんですか?」
いいんです。
「あとカホルとコヲリもな」
「私たちもですか?」
三人ともエロゲ声優の声をしているので需要はあるはず。これで外注の伊藤さんがやる気マックスファイヤーになるなら安い買い物だ。
「ま、すぐどうこうじゃないし。明日は学校の球技大会だしな。カホルは人公にはどうするんだ?」
「鬼電で起こします」
まだ家まで行くほど割り切ってはいないか。
「ところで今日の添い寝相手は……」
ホムラが問うてくる。
「カホルだなー。一緒に寝てくれるか?」
「もちろんです。アクヤ様」
ニコッと微笑むカホル。ああ、可愛いなぁ。カホル。まったく彼女と恋仲になる人公アルシが羨ましいぜ。あ、でも喧嘩しているのか。ということは俺にもワンチャン……いやいや。女を金で買う最低最悪の男ではカホルは幸せに出来ない。落ち着け俺。カホルのためを思えばこそだ。
「っていうかホムラも勉強に理解は結構できるじゃないか。なんで六組にいるんだ?」
「いや、その、アクヤ様の教え方が抜群に上手いんですよ。学校の授業よりわかりやすいです」
そんなもんかね。
「言ってしまえば何でアクヤ様こそ六組に?」
「勉強始めたのが春休みだからなー。九王の実家の献金で留年免れただけだし」
「それだけで全国百位以内ってとれるものですか?」
「大器晩成だな」
高校生を晩成と言っていいのかは怪しいが。そうして五月末にある中間テストに向けて勉強をする。そうしてある程度やった後、就寝時間に。明日は校内球技大会。俺はテニスなので個人成績。スマッシュも教えて貰ったし、そこそこ出来るだろう。ツイストサーブも出来るしな!
「じゃあ寝ますか」
そうしてパジャマを着たまま俺の寝室でカホルがベッドに座る。俺はそのカホルを抱きしめてクラリとベッドに倒れ込む。で、ムギュッと彼女に抱き着いて、その爆乳に顔を埋める。うーん。最の高。
「その……アクヤ様」
「どうかしたかー」
「またキスしませんか。エッチは……その……しなくていいので」
俺の頭に人公アルシがよぎった。とはいえカホルのファーストキスは既に俺が貰っていて。カホルも俺とキスすることはまだコヲリにもホムラにも伝えていない様だった。
「いいけど。お前はいいのか?」
「アクヤ様と……その……したいです」
そっか。俺はおっぱいから顔を上げて、こっちをポーッと見つめるカホルを見る。熱に浮かされた……という表現が似合うメスの顔。
「すまん。そっちからしてくれ。俺はヘタレでな」
「では失礼しまして」
彼女は俺の唇に唇を重ねてくる。そうしてキス。同時にビクビクッとカホルが痙攣した。
「大丈夫か」
「ちょっと逝っただけです」
キスでか?
「キスで……です」
そっか。それはなんというか。
「好きです。アクヤ様。お慕い申し上げております」
そうして豊満な胸で俺の顔をかき抱き、ギュウッとおっぱいアイマスク。
「私やコヲリ、ホムラのために御尽力感謝しております」
「俺がやりたいからやっているだけだ。やっぱり美少女は幸せにならないと」
「私を幸せにしてくれるのですか?」
「当たり前だ。何で俺が手を出さないと思う?」
「ヘタレだから」
うん。まぁ。そうなんだけど。
性奴隷がご主人様に言っていい言葉選びか? それ。
「とにかく俺は処女厨だから。幸せな女の子は最高の男に抱かれるべきだと考えている」
「アクヤ様ぁぁ……」
さっきのキスの関係か。発情した声でカホルは俺を呼んだ。
そ、そんなこと言われても抱かないもんね!




