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ガリ勉の俺がエロゲーの竿役に転生したが童貞すぎてラブコメは無理  作者: 揚羽常時


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第41話:グラビア撮影、二度目


「アズキです。本日はよろしくお願いします」


 どもっす。うーっす。などなど。現場入りしたアズキこと小比類巻マキノに対する返事はおよそ気の抜けたもので。事務所所属とはいえ、新人のグラドルは舐められて当然というか。仕方ないことではあるのだが。


「アズキちゃーん!」


 で、今日の撮影現場には、別のグラドルも同時撮影で臨んでおり。人件費や場所代を出来るだけ削減しようという上からの指示が透けて見える。こういうところでは強く言えないのは俺も同じで。だが名を売るためには赤字覚悟の撮影にも臨まねばならない。そう説明はしたんだが、マキノの心意気は折れなかった。それでもお金が欲しいのだろう。大手事務所所属とはいえ、そこはやはり無銘のグラビアアイドルだし。


「うへへぇ。アズキちゃーん」


 で、俺が撮影スタッフに挨拶をして、感触を確かめ戻ってくると、一人のアイドルがアズキことマキノに抱き着いていた。


「あのー。え?」


「こちら信濃シイナさん、です」


「どもーっす! 信濃シイナです! 売れないグラドルやってます!」


「あ、これはどうも。アズキのマネージャーをしております鈴木というものです」


 ピシっとしたビジネススーツを着て、背を四十五度曲げる。アズキのマネージャーをしているのは俺がプロダクションに無理矢理所属させたからで、このままだとマネージャー担当のルーチンワークが崩れると言われ、仕方なく俺が買って出ているからだ。


「おー。マネージャーさん。若いですね。っていうかアズキちゃんどこの事務所?」


「えーと……」


 言ってもいいけど言っていいものか。そう悩んでいるらしい。


「プレアデスプロダクションですよ」


 代わりに俺が言った。


「うそ! プレプロ!? 超大手じゃん!」


「えーと。まぁ」


「とは言ってもアズキくらい無名だと仕事も無いんですけどね」


「だいじょぶだいじょぶ。アズキちゃんは売れるよ。プレプロもそれを見て投資してるんじゃない?」


「そうだと嬉しいのですが……」


「っていうかマネージャーさんカッコいいですね。プレプロ所属にしてもこんなに若いとよく採用されましたね?」


「あはは。大学中退して、職を探していたら偶然目をかけて貰えて」


 アイドルとか声優と違って、普通の仕事は高校生には御法度だ。まぁ九王アクヤなら大学中退くらいの年齢にも見えるだろう。


「いいなぁ。アズキちゃん。プレプロ所属で可愛くておっぱい大きくて。私そこそこ活動してるけど、アズキちゃんは本気で逸材だと思う」


「ありがとう……ございます?」


「あ、着替えないとね。私も撮影まだでさ。水着でしょ? 一緒に着替えよ? あとおっぱい揉ませて?」


「えーと。マネージャー……」


「可愛がってもらいなさい」


 俺はヒラヒラーと手を振る。


「よっしゃー! マネージャーの言質取った! アズキちゃんの胸揉むぞー!」


「マネ~……ジ~……ャ~……」


 信濃シイナさんに首根っこを掴まれて攫われていくアズキの悲鳴がドップラー効果で間延びしていた。こういう現場だと同業者との顔つなぎも大事な仕事だ。売れないグラドルとか言っていたけど、なんとなく端々から信濃さんが経験豊富なのは読み取れる。であれば頼りがいのある先輩としてアズキと仲良くしてほしいものだ。


 そうしてどれだけ胸を揉まれたのか。ホクホク顔の信濃さんを見るとちょっとだけ気になったり。二人は既に水着に着替えて、大きめのタオルで全身を隠している。さすがに現場を水着でうろつくわけにもいかないし、これはしょうがない。場合によっては業界人にナンパもされるが、マキノは人公のものだしなー。っていうかなんで竿役の俺がマキノのプロデュースをしているのか。既にエロゲーの展開とは違ってきているような。


「信濃さん。お願いします」


「あ、はーい。じゃあ行ってくるね! アズキちゃん!」


 グッとサムズアップ。


「頑張ってください。信濃さん」


 マキノもそう応援する。それにニッと笑って、撮影に臨む信濃さん。


「できれば被写体の信濃さんは見ておいてくれ。勉強になることもあると思う」


「うん。分かってる。緊張しながらリラックスするって、すごい技術だと思うっしょ」


 そこはマキノも分かっているらしい。信濃さんの被写体としての技術を盗むつもりで見届けていた。そうしてマキノの番が来る。ちょっと顔が強張っているが、まぁしょうがないだろう。メスの顔も忘れたのか。気負い過ぎているようにも思うが。最悪この前みたいに一度撮影を中断してアドバイスするべきか。と思ったが。


「いいねぇいいねぇ! 映えるよ! アズキちゃん!」


 カメラマンはノリノリだった。俺も驚いているが、マキノは爽やかな笑顔で写真に写っている。時にうっとりとした顔。照れくさい顔。リラックスしすぎず、かといって必要以上の緊張もしない。まさか信濃さんから盗んだのか?


「マネージャーさん。アズキちゃんと付き合ってたり?」


 撮影の終わった信濃さんがタオルを全身に巻いて、興味深そうに俺に聞く。


「当たらずとも遠からず。かな」


「自分とこの商品に手を出すってどうなの?」


「事情があってな」


「でもわかるよ。愛されてるでしょ」


「否定はしない。何か助言でも?」


「好きな男のことを考えて、その人に気に入られる顔をすればいいんじゃないって」


 好きな男ねぇ。


「で、さっきからマネージャーさんのことチラチラ見て、そのたびに表情がうつろうから、あーこれは……みたいな?」


「恋人ではないんですけどね」


 マキノはエロゲーヒロイン。相手をするのは人公アルシだ。


「そんなこと言ってー。気持ちいいでしょ。アズキちゃんのおっぱい」


「まぁそこそこ」


 一緒のお風呂に入ったりして、胸板に押し付けられたりはする。学校でも抱き着かれるけど、そっちはブラありきだしな。


「いいなぁ。アズキちゃん。私もああだったらよかったのに」


 そして、羨望するように、信濃さんはアズキを見る。


「限界を感じておいでで?」


「ま、行ってしまえばね。職歴に元グラビアアイドルですって書いていいものか悩んでる」


「俺は素敵だと思うんですけど」


「セックス相手としては、でしょ? どこの業界も同じだけど、ステータスで全部が決まるわけでもないし」


 まぁそれは確かに。


「流石に年収考えるとね。このままじゃいけないなとは思って」


「ほい」


 だから俺は名刺を差し出す。


「マネージャーさんの? 何だろ?」


「困ったら電話してくれ。融通してやる」


「出来るの? マネージャーさんが?」


「そこそこな。アズキに助言してくれたお礼くらいなら力になるから」


 助かった面も確かにあって。だからマキノがグラビアアイドルをする成果程度には俺も信濃さんに恩義を感じている。


「じゃ、その時は頼りにさせてもらうね」


 晴れやかな笑顔を見せる信濃さん。やはりそこはプロなのか。百点満点の笑顔だった。こういう顔をすることを現場で学んだのだろうけど、それがマキノの学にびなったのなら是非もない。


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