第39話:ホムラもホムラで
【二條ホムラ視点】
あたしの名前は二條ホムラ。二條コヲリお姉ちゃんを姉に持つ貧乳の女の子。誰にも見分けがつかないようにパッドを入れて同じ体系を維持しているけど、Aカップが大きくなるわけじゃ無い。でもそんなあたしの胸に頬を擦りつけて幸せそうにしてくれる男の子がいてくれた。そのことにあたしはどれだけ救われたか分からない。
「アルシ! 起きろコラ!」
そうして今日も面倒を見なければならない人公アルシのみぞおちに拳を打ち込んで、覚醒させる。こいつはまた夜中までゲームをして睡眠時間を無駄にしたのだろう。ゲームはアクヤ様もするけど、ここまでのめり込めるのは才能なのか疾患なのか。
「飯作ってるから。早く食え!」
ちなみにレンチンのご飯と冷凍食品の肉。あとコンビニで買ったフリーズドライの中華スープ。こいつのために米を研いで炊飯器を稼働させるのも面倒だ。
「相変わらずホムラはキツイなー」
「こっちとしては見捨ててもいいんだぞ。行くか? ヨーロッパ」
アルシの両親は欧州に派遣されている。何故アルシがついていかなかったのかは知らないけど。おかげでこっちが迷惑を被る羽目になっているわけで。
「飯食い終わったらシャワー浴びて。それから洗顔。歯磨き。制服は自分でアイロンかけること」
「えー、やってよ」
こいつ。どの口が。
「でもさ。こうやって助けてくれるじゃん」
「腐乱死体になられても困るだけだ。めんどいからサービスしているの」
「ボクが死んだら悲しい?」
「さぁね」
そもそもアルシが死ぬところを想像できないというか。なんやかやで生き残りそうな人間第一位。そうして溜まった洗濯物もまとめて天日干し。金曜日のアルシの担当はあたしなので、夜ご飯まで作らなくてはいけない。刺していいだろうか?
「じゃ、行こう」
そうして制服に着替えたアルシと隣り合って登校する。
「二條さんだ……」
「二條さん」
「どっちの二條さん?」
あたしとコヲリお姉ちゃんは似すぎていて、見分けるのは至難の業だ。アルシは経験で見分けられるみたいだけど、アクヤ様ってどうやって見分けているんだろう。なにかあたしとお姉ちゃんを見分けるポイントでもあるのかな?
は! 偽乳?
「ホムラも勉強頑張れよ。一緒の大学行きたいだろ?」
こいつ。上から目線でマウントを取ってきた。幼馴染としては第三位のくせに。カホルが一組でトップ。二位が二組のコヲリお姉ちゃん。アルシは三位で三組。で、ドベのあたしが六組。いいけどね。アクヤ様と一緒にクラスだし。あ、でもアクヤ様全国模試で偏差値八十って言ってたし。三年になったら一組に行くのかな……。なんかやだな。
「授業中寝たりするなよ? 授業態度が悪いと内申にも響くんだから」
「六組のホムラに心配されてもなー」
まぁ確かに。まぁいいや。ゲームのし過ぎで成績落してもあたしには何の関係もないし。そもそもあたしは大学に行く気がない。というか大学に行けるとも思っていない。成績が悪い以前に家に金が無い。膨大な借金を得た我が家は、今お姉ちゃんとあたしが身売りすることで利子を差し止めている状態だ。そもそも利子が機能すると返済額より利子の増加の方が上回って一生返済できない借金地獄になる。だからせめて元本だけで返せるように親はあたしたちをアクヤ様に売ったんだけど。
「思ったより紳士なんだよなー」
未だにアクヤ様はあたしたちを抱いていない。いくらでも犯せるはずなのに、命令の一つもしない。まぁ添い寝くらいはするけど、それでムラムラして自分を慰めるのも……ゴニョゴニョ。それをぶっちゃけるとカホルとお姉ちゃんからも同意が返った。
『アクヤ様の寝顔を見ながらするのって捗るよねー』
と三人で合意してしまった。そうして学校に登校すると、席に座る。窓際最後方がマキノで、その隣がアクヤ様。その隣があたしだ。
「おう。アルシとは仲良くやってるか?」
「そこそこですね」
アクヤ様の御機嫌を損ねるわけにはいかない。なのでアルシのことは何とも思っていませんよアピール。っていうかなんとも思っていないんだけど。
「幼馴染じゃん? 大事じゃないのー?」
隣の隣のマキノさんが聞いてくる。
「手のかかる産業廃棄生物だよ」
「すっごい表現だねー」
ケラケラと彼女が笑う。最近アクヤ様はマキノと一緒にいる。球技大会は来週の頭。それまでにテニスを理解したいとアクヤ様は仮入部しているらしい。まぁ運動に関しては天才だから。いや、待て。アクヤ様は全国模試の偏差値も高い。もしかして最強?
「じゃ、授業始めるぞー」
朝のホームルーム。それから授業。隣にアクヤ様がいるとドキドキする。アクヤ様に意識してほしい。そんな願いが不遜だと知りながら願わずにはいられない。
「…………ヒソヒソ(アクヤ、アクヤ)」
授業にも集中できず。チョロッとアクヤ様の方を見ると、アクヤ様を呼んでいるマキノが目に入った。それから彼女はスカートを持ち上げてレース付きのパンツをアクヤ様に見せていた。最近マキノは発情しているのか、こういうことをたまにする。ちょっとあたしとしても意見したいことがある。あたしだってしたいのだ。そうして後ろの席なのでグルリと教室を見回して、誰もこっちを見ていないことを確認する。
「…………ヒソヒソ(アクヤ様)」
「…………ヒソヒソ(何だ?)」
「…………ヒソヒソ(どうぞご覧ください)」
あたしも隣のアクヤ様にだけスカートの中身を見せる。アクヤ様に買ってもらった可愛らしいおパンツ。レース付きのちょっと高級志向。
「…………ヒソヒソ(見てくれていますか?)」
「…………ヒソヒソ(まぁ目は離せないな)」
勉強も大事だがあたしのパンツも大事。そういうアクヤ様にあたしは救われる。今あたしはイヤらしい女の子になっている。想い人のために恥をかいて、そのスリルを味わっている。バレたら後ろ指を刺されるのに、それ以上にアクヤ様に発情している。
「…………」
パタン、と教科書を閉じて、机に仕舞い、そのままアクヤ様は机をあたしの机に隣接させる。アクヤ様と繋がっている。その事に歓喜を覚えるあたしの、その太ももにアクヤ様の手が這う。冷たい感触が襲ってくるが、さすがにここで変な声を上げるわけにはいかない。アクヤ様に太ももを撫でられていることに幸せを感じながら、あたしの性欲は高ぶっていく。
「…………はぁ……はぁ」
アドレナリンが多幸感を与えてくれる。あたしの中のメスが心中で暴れ狂っている。アクヤ様は太ももをなぞったまま、その手があたしのスカートの中に潜っていく。大丈夫。誰にもバレていない。このままあたしはアクヤ様に嬲られるのだ。アクヤ様の手がスカートの中に入って、あたしの下半身をそっと撫でる。ダメだ。このままだとメスとして堕ちてしまう。アクヤ様に抱き着きたい。キスしたい。そのまま犯してほしい。けれどそれは叶わぬ願いで。
「アクヤ……くん……」
濡れた瞳でアクヤ様を見ると、彼はニヤリと笑ってあたしに蔑む目を向ける。ゾクゾクを脊髄が震えた。アクヤ様にメスだと自覚させられ、軽蔑されることがこんなにも快感だなんて。
「二條。二條?」
「あ、はい?」
「この数式を解いてみろ」
「えーと、ちょっと待ってください」
アクヤ様にメスに堕とされて、そのまま思考が停止していた。授業に集中するにはパラメータが足りない。
「じゃあ隣の九王。解けるか?」
あたしとアクヤ様の蜜月はバレていない。だがそこまでやっていながら、アクヤ様は授業も聞いていたらしい。あっさりと数学の正当を答えていた。




