第34話:既読スルー
【人公アルシ視点】
『今日のことはゴメン。でもあのお兄さんも悪気があったわけじゃ無くて』
『謝るから月曜日会えないか? っていうかカホルがボクを起こしてくれる日だろ?』
『謝罪する。だから話だけでも』
ボクは立て続けにSNSにメッセージを送る。けれどもそれは既読こそつくが、全部スルーされた。マズいマズいマズい。カホルが本気で怒ってる。でもしょうがないだろ。あのデートの時、カホルは手も繋いでくれなかったんだから。ボクがちょっと誘惑に負けるくらい許してくれよ。
『御免って。謝るからさ。この通り』
これも既読スルー。
『お詫びに今度のデートで何でも奢るって。だから機嫌直してくれ』
既読スルー。
クソ。このままじゃ埒が開かない。
『コヲリ。聞いてくれ。カホルがへそを曲げちまった』
『そうですか。何したんですか?』
『ちょっと揶揄われただけで怒ったんだよ。ボクも謝りたいのに、その機会も与えられなくて……』
『あー、カホルは怒ると怖いですからね』
『コヲリから言ってくれよ。ボクと話すようにって』
『ちなみに揶揄うって何したんですか?』
『ちょっとカラオケ行こうって言っただけ。な? 何も悪い事してないよな』
『わかりました。ちょっと話を聞いてみます。上手く行ったら報告しますので』
は~……。助かった。さすがコヲリ。理性的な彼女に任せればボクの誤解を解いてくれる。
「ホント。面倒くさいなぁ。カホルは。ジョークってことくらいわかるだろ。マジギレしないでほしいんだけど。今流行りのメンヘラって奴か?」
嫌われるのは困るが、それはそれとして思うところもある。幼馴染なんだぞ。もうちょっとボクへの対応ってものがあってもいいんじゃないか?
カホルだって態度に出さないだけでボクの事好きだろ? だったらさぁ。手を繋いで……その……キスとかしてくれてもよくね? 幼馴染同士で付き合うのが一番幸せなことだと俺なんかは思うわけで。
『話聞いたよー』
『どうだった?』
『激おこだった。今は顔も見たくないって。何したの?』
『何もしてねえよ』
『それ、素人がパソコン壊れた時に言う奴』
ぐ……。たしかに。だが誓って何もしていない。実際に何も起こらなかった。九王が俺の女だとか妄言を吐いたことはあったが、怒るならそっちにだろ?
『まぁ時間が解決してくれるんじゃない?』
『明日はどうすんだよ! カホルの番だろ!?』
『さあ? そこまでは責任を持てないというか』
『お願いします。コヲリ様。今度パフェ奢るので解決の糸口をですね』
『無理。あそこまで怒ってるカホルは結構レアだし』
役立たずがー……ッッ!
コヲリならわかってくれると思ったが、それもダメか。っていうかコヲリも薄情だな。ボクの頼みなら何でも聞けよ!
今度はホムラにメッセを打つ。
『ホムラ。聞いてくれ。ちょっとカホルを説得してくんない?』
『いくらで?』
『金とるの!?』
『いや、ジョークだけど。アルシが何かしたのかなって』
『ちょっとすれ違いが起きたんだよ。それでカホルが怒っちゃって』
『どうせロクでもない案件でしょ』
『そうとも言えないこともない』
『謝罪のコメントを投下すればいいんじゃない?』
『既読スルーでフィニッシュなんだよ! これじゃ謝り様がないだろ!?』
『どれだけ怒らせたの?』
『俺もアイツの逆鱗が何処にあるのか知りてぇよ!』
『逆ギレされても困るんだけど』
『とにかくお願いします! 俺が謝りたいって伝えて!』
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【花崎カホル視点】
「おおう。カホル。際どいね」
「ちょっとアクヤ様にサービスだよ」
私は御機嫌でニコニコしていた。さっきアクヤ様にお尻を叩かれて、土下座したところで頭を踏みにじられたのだ。これで興奮しない女子はいないって。ホムラが私のホルスタインの水着を着ていることにドン引きしていたけど、それさえも私の糧になる。いやー。やっぱり持つべきものはドSのご主人様だね。
「そのー。もしかしてだけど、アルシのこと怒ってたりする?」
ホムラがそんなことを聞いてきた。
「なんでそれを?」
「さっきからアルシがうるさいの。カホルに繋げって連コメしてる」
スマホを取り出して振る。そこには私に繋ぐように懇願するアルシのコメントが。
「気にしなくていいですよ。個人的な事情なので」
「何かあった?」
「チャラ男と共謀して私を犯そうとしました」
「ええ!?」
そりゃさすがに驚くよね。こっちも言っていて何言ってんだって話だし。
「大丈夫だったの?」
「アクヤ様が助けてくださいましたから。もうマジ無理。尊い。子宮がキュンキュンする」
「それは、でも、話したくないよね」
「なので無理に繋がなくていいよ。私も当分許す気ありませんし」
「そっかー。じゃあその件は良しとして」
「他に何か案件が?」
「これ」
ムスッとした表情でホムラは私のおっぱいを無遠慮に揉む。
「この……これが……このおっぱいが……あたしにもあれば」
「アクヤ様は胸の大きさで女性を評価しませんよ?」
「分かってるけど悔しいの!」
「まぁ育ち過ぎたかなーとは思いますけど」
「この脂肪が! 胸なんて飾りです! エロい人にはそれがわからんのです!」
「うん。まぁ。言っている意味は分かる」
『ホムラー。カホルどうしてる?』
「何て返せばいい?」
「激おこで近づくのも危ないから時間を置いた方がいいとでも」
「ま、そんなとこだよね」
「マジで許せないから。さすがにちょっとキレてます」
「あたしたちはアクヤ様の性奴隷だもんね」
「処女をアクヤ様に捧げます」
「ちょっと重い気もするぞ」
「ホムラはアクヤ様を敵視してるの?」
「いや? あんな真摯な男性、他にいないし」
「だよねー。なんなんだろ。アクヤ様って。不思議なお方だよ」
「もしかしてあたしたち魅力ない?」
「それは……無いとも言い難いけど」
アクヤ様は私たちを徹底的に抱かない。そこに何を見出せばいいのか分からないけど。とにかく紳士というレベルを超えている。私たちが何をしなくてもアクヤ様が手を出すことがない。ソレを寂しいと思いつつ、私の子宮は完全にアクヤ様に屈服しているので。




