第31話:最悪の選択
【人公アルシ視点】
四月最後の日曜日。今日はボクとカホルのデートの日。待ちに待った御褒美デートだ。これあればこそボクは今まで遅刻をせずに学校に通っていたのだから。朝起きれるか心配だったけど、最悪に最悪を考えて、スマホの目覚ましを何重にもかけていた。着ていく服は無難なモノを選ぶ。ボクとカホルは知った仲だ。気負ったファッションじゃなくてもいいだろう。今日は庵宿区でシネマに出向くことになっている。映画を見るためだ。アクション映画を所望して、その通りに要望が通ったのでその通りに。
「楽しみだな」
そのまま駅で電車を乗り継ぎ、庵宿区の駅へ。そうして待ち合せの場所に出向くと、天使がいた。春に合ったクリーム色のセーターと落ち着いた色合いのスカート。足は黒色のストッキングをはいており、ちょっと肌の露出が少ないのは残念だけど。ただ胸が大きいのでセーターはベスト。いや、しかしマジで大きいな。
「おはよ。カホル」
「ああ、おはようだね。遅刻しなかったのは偉い」
「だろ? ボクだってやるときはやるんだぜ?」
「私より先に来なかったのは減点だけど」
「辛口だなぁ。カホルは」
「じゃ、行きましょうか」
そう言ってシネマへと向かおうとするカホル。バスで二十分程度のところだ。今日はデート。じゃあ、ちょっと踏み込むのはありだよな?
「な、なぁ」
ボクはそうカホルに話しかけた。
「手、繋がないか?」
「……え?」
キョトンとするカホル。なんかちょっと嫌そうだ。
「ダメか?」
「ダメっていうか。そういうのは好きな女の子としなさいよ」
「あ、そうだよな。大切な人としないとな」
空気を読んで、まるでその通りだと頷くボク。ボクの好きな人はカホルなんだけど。今の反応を見るに、まだ彼女はボクを意識していないのだろうか? 幼馴染すぎて距離感バグってる?
「行くよ? それともキャンセルする?」
「いや。行くって。ちょっと待って」
そうしてボクとカホルはバスに乗った。そのバスの中でもカホルは輝いていた。何せ爆乳の美少女だ。男であれば股間が滾るだろう。ピンク色の髪のとても輝いている女の子であるから。その魅力はさらに倍プッシュ。やっぱりカホルと一緒にいると周りの視線が心地いいんだよな。
「映画楽しみだな」
さりげなく話題を提供する。
「そうね。監督も有名だし。出来については心配してないよ」
カホルも話に乗ってくる。そうして今日のカホルの相手がボクだと主張すると、周囲の視線が落胆のソレになった。恐れ多くもカホルを狙っていたのだろう。残念だったな。カホルは既にボクのモノだ。もうちょっとボクを意識してくれると嬉しいんだけど。手を繋ぐきっかけも無くなったし。
そうして映画を見に行ってシネマに入る。映画館ではアクション映画がバリバリのスケールで展開され、最後まで飽きない構成だった。
「はー。面白かった」
「そうね。面白かったわ」
「カホルは映画好きだもんな」
「嫌いな人が珍しいんじゃない?」
確かに。でも見に行きたいけど行くまでもないって人もいると思うぞ。
「どうする。このままモールでショッピングでもするか?」
「そうね。いいかもしれないね。服とか見たいかも……」
「あ、じゃあさ。買ってやろうか?」
舞台から飛び降りるつもりで言った。
「いえ。見るだけでいいわ。買う必要はないの」
「そ、そっか。でも買いたくなったら言えよな?」
「じゃあその時はプレゼントしてもらうわね」
モールでウィンドウショッピングをして、この服が可愛い、このアクセが素敵など、色々と冷やかしだけして。結局カホルは何も買わなかった。
「何か言ってくれれば買ったのに」
「いえ、然程でもないのよ」
最終的にスタブに落ち着き、ボクたちはコーヒーを頼んで一服していた。このまま解散も虚しいよなぁ、と思っていると。
「ちーっす。そこのお二人さん。デート中っすか?」
いかにもチャラい感じのとてもではないが好印象を抱きにくいお兄さんが俺たちにターゲットしていた。
「そうだぞ」
だから僕は決然として言った。この女はボクのモノだと。そう主張するように。だって実際にボクのだし。誰とも知らぬ男に触れてほしくない。
「ボクたちデート中なの。だからナンパは勘弁」
「そうね。不愉快だわ」
「まーまーそう言わず。ちょっとそっちのお兄さん? 危害なんて加えないからちょっとお話しねえ?」
「話しって……」
「まーまーいいから。暴力振るったら警察に通報すればいいだろ?」
「それは……まぁ」
で、馴れ馴れしくボクの肩に手を回して、そのままコーヒーを飲んでいるカホルから少し距離を取る。そうして痛烈な一言をチャラ男は言った。
「お前。童貞だろ?」
「…………」
否定する要素が見つからない。
「わかるぜ。あの女は上物だ。気位が高くて男を寄せ付けない。見ていないけどはっきり言ってやる。お前、今日のデートで手も繋いでないだろ?」
「そ……れは」
たしかにそうだけど。
「俺に任せてみねえ? あーいう女はちょっと隙をつけばコロッと落ちるんだよ。カラオケでも行こうぜ? そこでヤらせてやるからよ? 処女は俺が貰うが、お前にも抱かせてやるよ。だから知り合いのお前がカラオケに誘ってさ。乱交パーティと行こうぜ?」
「いや、でも」
「このままだとお前、手も繋げないまま奢られるだけ奢られてハイ解散で終わりだぞ? ここで童貞捨てときたくね?」
「…………」
たしかに今日はデートだってのに手も繋いでくれなかった。もしかしてカホルは童貞のボクをからかっているだけ? そう思ってもしょうがなかった。だったらチャラ男の助けを借りてあの身体を貪った方がまだしも得じゃないか?
「…………」
ボクがカホルを見ると、何か嫌そうな表情をする。何でそんな目でボクを見る。ボクはカホルの幼馴染なのに。その身体を抱いていいのはボクだけなのに。
「はい。決まり。任せとけって。童貞くんにもいい目にあわせてやるから」
そうしてチャラ男はパンパンとボクの肩を叩いて、全てが決まったと宣言した。
「なわけで俺たち友達になったわけだけど。君とも仲良くなりたいなぁって。これからカラオケ行かね?」
「嫌ですよ。嫌らしい。何されるかも分かんないのに」
「誓って何もしない。それこそ百十番でも準備していればいいんじゃね? 襲おうとしたら防犯グッズで撃退するとかさ」
カラオケで何をしたらカホルが抱けるんだろう? ボクには知らない世界だなぁ。




