第3話:ちょっとズレているご主人様
「うん。我ながら美味い。繊細な味なんてわからないバカ舌だけど」
「美味しいです。アクヤ様」
「花崎さんの湯がき方が良かったんだよ。きっと」
「いえ。そんな。それよりもアクヤ様」
「なに?」
ソバをすすりながら聞く。ダイニングのテーブル。俺の一人暮らしの部屋だ。四人掛けのダイニングテーブルがあるのは、ここまで展開することを読んでの事だろうか?
「私のことはカホルと呼んでください。ご主人様に謙遜されると私の立つ瀬がありません」
「え、ええ?」
困ったな。生きてきてこれまで女の子を呼び捨てとかしたことないし。九王アクヤはありそうだけど、転生前の只野ヒートは、そもそも女子と会話したことなど事務仕事以外では皆無だ。どんだけ高いハードルだよ。
「か、かかかかか……」
「ドモり過ぎです。アクヤ様」
「……カホル?」
「はい。アクヤ様のカホルです。奴隷なのですから。私たちの人権はアクヤ様は握っています。メスブタでも俺の女でも好きに呼んでください」
それは難易度高くないか?
「二條さんは……」
「……コヲリ……ですよ」
「あたしもホムラで。二條だとお姉ちゃんと区別がつきませんし」
「カホル。コヲリ。ホムラ。……でいいのかな?」
「奴隷一号とか二号とかでもいいですよ?」
「勘弁してください」
俺はぺコリと頭を下げる。そうしてざるソバをズゾーッとすすって。それから、食べ終える。皿洗いはコヲリとホムラがして。カホルがテーブルにHカップの爆乳を乗せて、俺にニコッと笑んできた。
「アクヤ様。気になるなら揉んでみますか?」
あかん。俺がおっぱいに視線を寄こしたことを気取られている。
「ええーと。まぁ。あとで」
「夜のお仕事ですものね。今日は誰をお相手されますか? それとも三人同時?」
「三人同時で。今から。明日の朝まで」
「……本気ですか?」
「どうせ春休みだし。明日も休みでしょ?」
「それは……そうですけど。いえ。私たちはアクヤ様の奴隷です。如何様なプレイにも応えてみせます」
「本当か?」
「もちろんです。アクヤ様はどういうプレイをお好みで?」
「えーと。じゃあ」
そんなわけでプレイをすることになった。
「あ、あ、あ。もうかれこれ十八時間……」
「……アクヤ様……寝かせて」
「あたし、体力の限界だぞ」
カホルもコヲリもホムラもだらしないなぁ。
「何でもするって言ったじゃん」
「言いましたけどぉ」
「……モボ鉄五十年プレイは想定外です」
モダンボーイ鉄道。通称モボ鉄。サイコロを振って電車を動かし、駅ごとにある会社を買収するゲームだ。家を掃除している時に発見して、これはプレイしたいと思い、どうせだから奴隷になったカホルとコヲリとホムラに相手してもらったのだが……予想より三人のコンセントレーションは維持できなかった。
「ね、寝かせて」
「……そもそも何をしているんでしたっけ?」
「あははー。お姉ちゃんが二人に見えるー」
もはや寝不足も過剰なので、とりあえずはセーブだけしてゲームを切る。俺もいったんゲームを終了すると眠気が襲ってきた。
「くあ。朝までモボ鉄はロマンだが、確かに眠いな」
「申し訳ありませんアクヤ様。お相手を務めたいところですが、今は脳が」
「……回ってないです」
「眠……」
「じゃあ今日は解散。プレイに続きは明日ね」
「えと。それは。隣の部屋に?」
「だってそっちに住んでるんでしょ?」
「いえ。添い寝くらいならできますけど……」
「……裸でアクヤ様の添い寝くらいは」
「あたしも……その……できるよ?」
「大丈夫です。はい。帰った帰った。俺も寝るから」
ドサッとベッドに寝転んでグースカ寝る。もはや徹夜も限界だった。
「ん」
そうして昼の十五時に起きて、そのまま腹が減ったことを認識すると、飯を探してキッチンへ。チキンカレーとレンチンライスがあったのでソレを食べる。
「うーん。美味い」
最近のレトルトカレーは電子レンジで調理可能なので便利なものだ。
「アクヤ様」
カホルもしっかり寝たのだろう。目のクマが消えて、可愛らしい御尊顔が眩しい彼女だった。
「えーと。それは?」
「カレー」
他のモノに見えるなら眼科に行った方がいい。
「アクヤ様」
「えと。はい?」
どこか責めるような瞳のカホルに、俺はちょっと引いていた。
「私たちはアクヤ様の奴隷です。いいように使われて当然の道具なんです」
「は、はぁ」
「ご食事の準備くらい、私たちに命令してください。一応言っておきますが私もコヲリもホムラもメシマズではありませんので」
「えーと。眠っているところを叩き起こすのも気が引けて」
「アクヤ様の前でなら裸になることも厭いません。おっぱいを揉みたいなら差し上げます。まして家事全般など私たちに任せればいいのです」
「じゃあ食事と掃除と洗濯も……してくれるってこと?」
「後、夜のお相手も……です」
「そ、そうですか」
思ったよりカホルの覚悟がガンギマリで引く。
「でもそういうのは好きな人と……」
「私の恋心など些細な問題です。アクヤ様は私の絶対の主なのですから。お求めならばここで脱ぎますよ」
「それは御遠慮めさって?」
「私の身体は下品ですか?」
「下品っていうか。おっぱい大きくて魅力的というか」
「そのおっぱいも全てアクヤ様のモノなんですよ」
「勘弁……してください」
「その。思ったんですけど。添い寝も断りましたし。徹夜でモボ鉄プレイしましたし。……私たちを女として見てない……とかですか?」
「いや。とっても可愛い女の子だとは思ってるけど。手に取るな。やはり野に置け蓮華草……って言うじゃん?」
「あの。わかっていますよね? 私たちはアクヤ様の性奴隷ですよ?」
だからって手を出せるほど俺の童貞は甘くないわけで。




