第27話:九王アクヤには近づくな
【人公アルシ視点】
「…………」
集中しすぎて疲れた。今日は学食にしよっかな。ボクこと人公アルシがそう思って学食に向かう。どうせだからカホルと一緒にでも。
「カホル。一緒に飯食わねぇ?」
「いいけど」
「じゃあ決まり。学食行こう」
そんなわけで一緒に学食へ。そうしてメニュー券売機で買って、ボクはカレーを、カホルはソバを頼んだ。そうして二人でご飯を食べる。ああ、いいなぁ。この時間がボクは好きだ。特にカホルを侍らせて一緒していると男からの視線が熱い。ぶっちゃけボクのモノっていう実感が湧いてくる。
「カホル。今度の映画の事なんだけど……」
「映画だよ?」
おいおい。ボクとの映画の約束を忘れたのか? カレーを食べながらボクは言う。
「全国模試までに一回も遅刻しなかったら映画デートするって約束だったろ?」
「遅刻しなかったんですか?」
「なんなら生徒指導の先生に聞いてもいい」
辛かったけど遅刻はしていない。ほら、やっぱりボクってできる子だから。
「だから映画デート。カホルも嬉しいだろ?」
「えーと。まぁ」
だよなー。やっぱこういうのって幼馴染のイベントみたいで楽しいよな。
「…………ボソボソ(まぁここで断って遅刻魔になられても困りますし。映画くらいなら付き合っても損は……でもなぁ)」
なにか聞こえない声でボソボソと呟くカホル。テーブルに乗っている爆乳がボクの目には眩しい。マジでどこまで大きくなるんだ。このおっぱいは。
「いいだろ? 映画デート。御褒美だと思ってさ」
お願い、と手を合わせる。最近ちょっと幼馴染三人と距離が出来ている。一人暮らしを始めたのだからご近所付き合いが出来ないとのことだが、それでも一言欲しかった。いや、一言は説明したらしいが。
「なぁ。なんで一人暮らしなんて……」
「特に意味はありませんね」
「帰ってこないか? ボクが寂しい」
「そっか」
え? それだけ? ボクが寂しいって言ったんだぞ?
「そろそろアルシには独り立ちしてもらいたかったし」
「だからソレはカホルたちがいれば解決する問題で」
「でも無理だと言ったでしょう?」
「そこを何とか」
「こっちにも事情がありまして」
「事情ってなんだ?」
「黙秘」
黙秘って……。ボクがカレーを食べながら、最近の幼馴染について考えていると。学食の端が目に映った。そこにいたのは二條ホムラ。それから最近転校してきて話題をかっさらっている小比類巻さんだ。それら二人が九王アクヤと食事を一緒にしている。同時に嫉妬がメラメラと燃え盛る。ホムラはボクのモノだぞ。あんな可愛い幼馴染をボクが譲るとでも思っているのか。
「アルシ。どうしたの?」
「いや、ほら、あそこ」
とボクはホムラを指す。
「ああ、ホムラだね」
「九王アクヤと一緒に飯食ってるよ。趣味が悪いというか」
「趣味、悪いですか?」
そこでカホルがキョトンとする。
「いやいや。だって九王アクヤだぜ? 黒い噂とかも聞いてるし」
「具体的には?」
「夜遊びが激しくて。チャラい見た目で女を釣ってるとか」
「九王さんが……ですか」
「だからホムラが危うくて見てられないんだよ。ここはボクが心を鬼にして忠告すべきだろ?」
「…………ボソボソ(アクヤ様がそんな人物なら話は早いんだけどね)」
またカホルが何かつぶやいている。
「カホルも気を付けろよ。なんか九王ってチャラいイメージ強いからさ。アレはきっとロクでもないぜ?」
「ああ、はい」
ホント。カホルもコヲリもホムラもボクのモノだから誰にも触って欲しくないんだよなぁ。幼馴染として恋をするのは必然だろ。特にカホルなんて胸が潤沢に実っているからボクのG行為も捗るってもんで。
「映画デート。忘れるなよ?」
「ええ。分かっていますよ。ですからアルシも遅刻は無しだからね?」
「もちろんだ」
いやー参っちゃうね。カホルとデート。こんなことができるのはこの学校でもボクだけ。ボクだけの特権なんだ。
「じゃあ私は行くから」
「あ、あぁ。付き合ってくれてありがとね」
そうしてカホルを見送って、それからボクは視線のポイントをホムラに向けた。相も変わらず九王と小比類巻さんと楽しそうにお喋りしている。ボクはそっちに向かった。
「ホムラ……話があるんだけど。いいかな?」
既にホムラは食事を食べ終えていて。小比類巻さんと九王と談笑していた。ボクはそこに割り込む形。でもしょうがないだろう。危機意識が低いホムラには一言言わないと。
「あー。なんだぞ?」
「ちょっとここでは。言いにくいことだ」
九王の前で九王のことを言うわけにも。
「…………」
ホムラは九王に確認を取る。なんでだよ。そいつの機嫌を窺う必要ねーだろ。
「じゃ、付き合うぞ。ごめんね。アクヤくん。マキノさん」
「俺は構わんよ」
「あーしも別にって感じ」
で、ボクとホムラは少し離れた場所に行って。正確には特別棟と教育棟を繋ぐ渡り廊下だ。人がいないわけじゃ無いけど、九王に聞かれなければそれでいい。
「何考えてんだ!」
だから一言目からボクは怒鳴る。
「あたし、何かした?」
「九王と飯食っていただろ?」
「それが何か?」
「マジで分かってねーのか? あんなチャラ男。ホムラを狙っているに決まっているだろう? ホイホイついていくと強姦されるぞ」
「結構強力な言葉を使うんだね」
「それだけホムラの危機意識が低いってことだよ。もうちょっと自分を大事にしてくれ」
「でもアクヤくんは紳士だぞ?」
「だからソレもお前を狙っているからに他ならなくてな」
「つまりアルシくんは嫉妬していると?」
「いや、だから。そういう話じゃなくて」
「じゃあ関係ないじゃん。あたしが誰と会話していようと」
「バカかって言ってんだよ! あんなチャラ男に優しい言葉かけられてその気になってんじゃねーぞ!」
まったくホムラは馬鹿だ。九王が優しい? そんなわけあるか。アイツはホムラを狙っているんだ。それもゲスな感情込みで。ボクが守らないと。ボクの女なんだから。




