第25話:父親との議論
「むぎゅ」
今日は日曜日。昨夜はホムラと一緒に寝た。だからなのだが起きたら傍にホムラがいて。俺はその胸に頬を擦りつける。寝室のベッド。その上で、俺はホムラと添い寝されている。
「あの。この洗濯板の胸で大丈夫なのでしょうか?」
「ちっぱいも十分興奮する」
「襲ってくださってもよろしいんですよ?」
「それは勘弁」
「でもアクヤ様……あたしたちはアクヤ様の性奴隷で」
「だから俺の命令は聞いてくれ」
「あ、はい」
とりあえずはゴロゴロするか。俺はホムラを抱きしめたままベッドで寝転がったまま微睡の中でフニャーッとする。
「はぁ。素敵」
「何がでしょう?」
「ホムラは抱き心地が良くて最適」
「抱き心地……ですか」
「可愛いうえに細いから手折れそうで怖いともいう」
「アクヤ様になら手折られてもいいですよ?」
「要熟考だな」
「ですからあたしたちはアクヤ様の性奴隷なので遠慮は不要でしょう」
「ああ、俺の問題だから」
そうして今日の日曜日はホムラとダラダラしようと決意したのだが。スマホが鳴る。
「はいはーい?」
「家まで出頭しろ。一時間後に車を回す」
つまり日曜日の寝起き。一時間で外出の準備をして外で待てと。
「アクヤ様?」
「ちょっと野暮用が出来た。ホムラとゴロゴロするのはまた今度な」
そうして寝室を出ると味噌の香り。
「……あ、……アクヤ様」
下着エプロンで俺に朝飯を振る舞うのはコヲリ。Dカップのおっぱいが眩しい御仁。ついでに下着エプロンがエロすぎて、マジで襲いかねん。仕方ない。あとで発散するか。
「……はい。……朝食です」
「ありがとな」
「……いえいえ。……アクヤ様の奴隷ですから」
そういうことを言っているつもりもないのだが。それは今更か。で、歯磨きしたり髪をセットしたり。それらを終えて、適当に見繕った服を着て、そのままマンションの外へ。一時間後と言ったが五十分後に車は来た。俺はそれに乗る。運ばれたのは九王コンツェルンの本社ビル。日曜日も働いているのかというとそんなわけではなく。このビルには親父の生活空間があるのだ。屋敷も持ってはいるが、ここに住めば出勤時間が二分で済む。
「どうもです」
で、俺が呼ばれたわけをうすうす感じとっていながら「なにかやっちゃいました?」みたいな態度で臨むと。
「全国模試で百位以内に入ったらしいな」
「九十八位、だったかな?」
「平凡な高校で赤点常連だったお前がか? それは異な話だな」
「事実は小説より奇だよなー」
「で、聞くが。お前は何だ? 九王アクヤだとか、見てわかるだろうとか、そういうことは聞いていない。お前の根幹を教えろ」
刺すような瞳。この九王グループのトップである父親は俺のことを疑っているらしい。適当に弁舌して誤魔化してもいいのだが。どうせネタバレしたところで俺には関係ない話だし、いいか。
「えーと、転生です」
「転生?」
「この世界を構築している認識に対して入り込んだ異物というか」
「胡乱な表現を使うな」
「言ってしまえば、この世界はエロゲーの世界なんです」
「エロゲー……とは……アレか?」
「アレです」
指示語だけの馬鹿な会話だが、俺も父親も真面目くさっている。
「俺は一度死んで、この世界で目を覚ましました。つまりエロゲー世界の竿役として」
「竿役。お前が」
「エロゲーの主人公はちゃんと他にいるんで。俺はいわばモブですな」
そうしてペチャクチャとこの世界が『真実のラブは金でも体でもなくハートじゃないか』……略称ラブハートの世界だと教えた。もちろんこの世界にも地球はあるし、地球の反対側にはブラジルもあるだろう。そういう意味では地球と何ら遜色はない。単純にテレビのチャンネルの問題だ。どんな番組にも固有のルールはあるが、重力定数も粒子の質量比も大気の酸素濃度も変わらないという意味で。
「ブレーン宇宙。エヴェレット解釈。人間原理。世界五分前仮説。何で説明すればいいのか分からないですが、とにかく九王アクヤの肉体に別の人間がインストールされたというか。俺に馴染み深いエロゲー世界ですが、そっちからしてみれば狐憑きかDIDみたいなものになるんでしょうか?」
「分からないということがわかっただけだな」
俺の説明の不足も加味しての話だろう。
「だがそれで愚息が覚醒してくれるなら構わん。貴様は転生前も好成績だったのか?」
「偏差値は八十の前後くらいだったかな?」
勉強だけを見るなら成績優良者ではあった。
「よろしい。そのまま励め。学校はどうする? 進学校に行きたいなら手配するが?」
「いや、エロゲー世界を堪能したいので学校はこのままで」
「お前が竿役か」
「俺のアレがデカいのって遺伝か?」
「さぁな。あまり他人と比べたことがない」
まぁゲームの設定上、大きくないと竿役を担えないという都合はあるのだが。
「だが幸運でもあった。愚息が一夜で全国トップ。運が回ってきたな」
「あのーそれで。父者」
「どうかしたか?」
「厚かましいことを承知で、模試を頑張った御褒美が欲しいんだが」
「それは妥当だな。いいだろう。何が欲しい?」
「九王グループの名刺切っていいか?」
「構わんが。何をするかだけ教えて貰っても?」
「女子を二人、プロデュースする」
つまり芸能関係へ名刺を切りたいという意見だ。
「お前がそうしたいなら止めはせんが、女子のプロデュースだと?」
「ちなみに一人は二條ホムラな」
「お前の奴隷か。抱き心地はどうだ?」
「最の高」
嘘は言っていない。方便ではあるが。
「アイドルとしてデビューさせる……ということか?」
「いや、どっちかってーとストリーマーだな。ちょっと考えがあって」
「まぁ好きにすればいいとは思うが」
「稼げるようになったら借金を返せると思うんだが」
「それは期待しないでおく」
実を言うと俺も期待していない。ただホムラが楽しければそれでいいかなと。アイドルになりたいという夢については聞かせてもらったが、ストリーマーでも承認欲求は満たされるだろうし。問題はないだろう。実際にイラストを描ける人間もいるし、ユーキューブで活動するのは珍しくもない。あとは九王グループの名刺を切って、俺がプロデュースするだけ。マキノの方はグラビアアイドルで行けるだろう。おっぱい大きいし目を見張る美人だし。人気が出るのも運否天賦ではあるが負ける勝負とは俺は思っていなかった。




