第21話:朝起きるとコヲリがいなく
「…………」
朝、目が覚めると、俺の視界にホムラがいた。パジャマ姿で俺を抱きしめている。
「おはようございます。アクヤ様」
「おはよ」
「こんな洗濯板の胸でごめんなさい」
「別にそれは関係ないかな? ホムラも俺のアレを見て可否しないでしょ?」
「アクヤ様のは大きすぎると思います」
「何で知ってる?」
「お先にお休みになられるのはアクヤ様ですから」
パンパンされたのか。地球育ちのヤサイ人でもあるまいに。
「その、本当にあたしたちは何時でもいいですからね?」
「考慮しよう」
そうしてホムラの胸にグリグリと顔を擦りつけて。
「あん♡」
思ったより敏感なホムラの喘ぎ声を聞いて、それに満足。そうして俺は起き上がる。そのままヒュプノスの誘いを受けながらうつらうつらとダイニングに。
「あ、おはようございます。アクヤ様」
そこには下着エプロンで朝食を作っているカホルが。
「油の跳ねに気を付けてな。その肌が火傷すると勿体ない」
「あまねくアクヤ様がご所有なされるものですしね」
「そういうこと」
とはいえだ。カホルの料理は何時ものごとく美味しかった。そうして食事を終えると食後のコーヒーが振る舞われ、今日が水曜日であることを思い出す。
「ああ、コヲリは」
「ご主人様の寛容の下にアルシのお世話に」
「いいんだけどさ」
それについてはこっちから言えることはない。幼馴染の人公アルシであるし。このエロゲー世界の主人公。真実の愛を伝えて、ヒロインを盲目から救う一条の光。こんな寝取り男よりよほどラリルトリオを幸せにしてくれるだろう。
「ご不満なら取りやめますが……」
「いいのいいの。幼馴染とは仲良くね」
「何とも思っていらっしゃらないと?」
「フラグ建築には必要なことだし」
「フラグ?」
まぁこの世界がエロゲーを模倣しているとはいえ、フラグがあるのかもよくわからないのだが。俺としては只野ヒートであるより九王アクヤであることが楽しいので得をしていると言えなくもない。
「アクヤ様。御髪を整えさせていただきます」
「制服はアイロンをかけておきましたので」
金髪に染めているアクヤの髪に何とも思っていないのか。丁寧に櫛を入れてくる。それからカホルとホムラの手を借りて制服姿に。そのあと俺は車を出してもらう。駅まで送ってもらうのだ。もちろんカホルとホムラとは別に。一緒に登校すると噂が立つし、あまり人目を気にしないわけにもいかず。登校して、教室へ。出迎えてくれたのは小比類巻マキノ。俺を見て花が咲くように笑い、そうして俺に抱き着く。
「アクヤ♡」
そんな語尾にハートマークを付けんでもとは思うが、マキノが俺に好意的なのも事実っぽい。まぁどうせ人公が寝取るんだろうけど。
「…………ヒソヒソ(今日のパンツ何色だと思う?)」
「黒」
「ひゃん」
驚いたようにマキノが跳ね上がる。えーと。当たりか?
「当たりです。証明しようか?」
「また今度な」
そんなわけで、教室に入って、隣にマキノとホムラ。授業が始まる。なんとなく思ったのはコヲリが今日は人公の担当だということだ。やっぱりこういう時はモニョルのが童貞の俺。ほら、性奴隷として人権を握っていると、人公に取られているような気になる。取られて……というか寝取られか? 思ったより脳に来るな。
「アクヤ。ア・ク・ヤ?」
俺が授業に集中して参考書と睨めっこをしていると、ムニッと頬を引っ張られた。
「なにほふる」
何をする、と言いたかったのだが。
「授業終わったよ。学食行こ」
「マキノはいいのか? 友達と一緒しなくて」
「お断り申し上げました」
ここで何故とか聞いたら空気が読めないんだろうなぁ。マキノも俺を少しは意識してくれているのか。でもエロゲーヒロインなんだよな。金髪の白ギャルで、すっげーチャラいけど実は愛に飢えているという。
「愛が見つかるといいな」
「…………ボソボソ(もう見つけてるけどね)」
「じゃあ学食行くか。奢ろうか?」
「バイト代は貰っているので大丈夫でーす」
別に俺の金じゃないから出し惜しみはしないんだが。親が稼いだ金だ。ソレを使えと言われている。
「…………ヒソヒソ(それよりグラドルの件だけど)」
「もうちょっと待ってくれ。全国模試があるから」
「受けるの? 六組が? 二年生の時点で? 全国模試を?」
「まぁ。だな」
まぁキャラじゃないのは分かっているけど。あの九王アクヤが全国模試を受ける。記念受験ですらないのは誰しも認めるところ。なにせ担当の教師が俺に書類間違いじゃないかと尋ねに来たくらいだ。九王アクヤの赤点連続の成績で全国模試を受けるなんて言語道断。参加料が無駄になるというのが教師陣の総意だったが、俺はちょっと違う。というのも意識の底の底に九王アクヤとしての意識と把握があるものの、表層意識は只野ヒートだ。勉強をしていてわかった。今の俺の学力は只野ヒートに準拠している。なので、そこそこの成績は残せるはずで。アクヤの肉体とヒートの頭脳。光と闇が両方そなわり最強に見える。
「この学校学食メニュー豊富だよねー」
だよなー。で、いくら丼を頼んでモシャモシャと食べる俺。その対面でマキノが焼きサバ定食を食べていた。チラリと学食の一席を見る。コヲリとアルシが飯を食っていた。
「……ほら、アルシ。……ちゃんと最後まで食べなさい」
米粒を残しているアルシに説教するようにコヲリが言う。そのコヲリにSNSでメッセージを送る。ちょっとしたことだ。それから食べ終えると、俺はマキノと別れて屋上へ。そのまま十分ほど待って。ガチャリと扉を開ける音。二條コヲリが来た。というか俺が呼びだしたのだ。
「……あの……アクヤ様?」
俺に呼び出されたことを何かの問題だと思ったのか。恐れるように声をかけてくるコヲリ。そのコヲリを俺は抱きしめた。ギュッと。強いハグ。分かっている。コヲリは苦言を呈しながらも人公を見捨てられない。だからきっと俺の事なんて迷惑に思っているはず。でも、ソレで俺のコヲリへの好意が消えるわけではない。俺の性奴隷だという立場を利用して、俺はコヲリを抱きしめる。
「……あ……の? ……アクヤ様?」
「ごめん。ただのワガママ。ただちょっとだけ、コヲリを抱きしめたかった」
「……そんなことなら幾らでもどうぞ。……私はアクヤ様の御所有なされるモノですので」
「ありがとう。だからソレを言い訳に俺はコヲリに甘える」
「ご主人様ぁ♡」
不本意なはずだろう。金で人権を買った最低の男に抱きしめられて。でも俺だってヒロインであるコヲリを可愛いと思っていて手に入るのなら手放したくもないのだ。俺の性奴隷として慰み者になって欲しい。俺の傍を離れないでほしい。俺にだけ股を開いてほしい。それらの異様なまでの独占欲を俺はコヲリに願っていた。それでも抱き返してもらってさ。




