第126話:狸の皮算用
【人公アルシ視点】
「今度小比類巻さんの写真集出るらしいぜ」
「超エロイ奴だろ?」
「写真集! 買わずにはいられない!」
そんなわけでクラスの男子は小比類巻さんの写真集について議論していた。あんな九王に媚びる女の何がいいんだか。ホムラも九王に媚びているのは借金の関係上だろう。ほんと。自分で稼いだ金じゃないのに、金チラつかせて女を買うなんて最低だよな。九王。
「……アクヤさん」
「アクヤくん♡」
「アクヤぁ♡」
今日はコヲリとホムラと小比類巻さんが九王と一緒に学食で飯を食っていた。借金まみれの負け組女どもには相応しい末路だ。九王も九王で自分の金でもないのに金持ち気分で偉そうにしているのが気に食わない。どうせ使用人がいないと何もできないポンコツ男だっていうのに。
「最近九王目障りじゃね?」
三組のクラスでボクがそう言うと、男子からリアクションが返ってきた。
「目障りだよなー」
「二條さんとか小比類巻さんとか趣味悪くね?」
「わかるわ。ちょっと信じられないっていうか」
「だよなー。ちょっと思い知らせる?」
「っていうか暴行事件の犯人だろ? なんで退学になってねーの?」
よし。いい感じだ。
「ちょっとだけ教育しねぇ?」
「いいかも」
「ちょっとハイスペックだからって調子乗られると面白くないよなー」
後はバカどもにボコられるだけだ。九王の情けない姿を見たらカホルもコヲリもホムラも目を覚ますだろう。真に信じるべきが誰なのか。
「じゃ、話通しとくわ」
「こっちも」
「さすがに最近の九王って調子乗り過ぎだしなー」
そんなわけで九王襲撃の話がトントン拍子で進んだ。
「さて、じゃあ特等席で見物と行きますか」
ニヤニヤと笑いながらボクはその時を待つ。ボクは進学希望なので無茶をするわけにはいかないけど、男子どもが暴走するだけなら問題ないだろう。ざまぁ。マジざまぁ。ボクの計画通りに事は進んでいる。
「じゃあ呼び出そうぜ」
「ああ、それでボコるんだろ? どっちが上か決めるいい機会だもんな」
「っていうか九王ってそこまでイケメンじゃなくね?」
「わかるわー。そもそも暴行犯だしな」
「女子どもも見る目がねーよな。あんな奴の何がいいんだか」
「あの証拠を信じないとか頭悪いにもほどがあるよなー」
ふひひ。男子どもは俺が用意した九王が暴行した動画を信じているらしい。ニワトリより頭悪いんじゃないか? まぁ騙されてくれた方がこっちとしても都合はいいんだけど。
「じゃ、決まりな。九王はボコる」
「さんせーい」
「俺も」
「適当に女子のラブレターでも偽造して呼び出そうぜ」
「で、フルボッコにすると」
「立場を分からせないといけないよなー」
ま、こんなところだろう。これで九王がボコられればよし。反撃したら、それを暴行現場としてボクが抑える。どっちにしろ九王には都合の悪い展開だ。ひはは。ボクのコヲリとホムラに手を出すからこうなるんだよ。どうせ借金をチラつかせて近づいたんだろ? 九王グループの金を使ってコヲリとホムラを篭絡したんだ。そんなことで女の子の心が買えると思っている精神が度し難い。極刑に値する。
「小比類巻さんも趣味悪いよなー」
「九王なんかにデレデレしてさ」
「あのエロい身体は九王なんかには勿体ないよな」
「分かるわ。ちょっと上下関係を分からせないと」
「っていうかグラドルとして最高すぎるだろ。あのおっぱいが拝めるんだぜ?」
「エロイよなー。九王には勿体ない」
「九王を分からせた後俺たちで頂くか?」
「いいねぇ。さすがにボコられれば小比類巻さんも目を覚ますだろ」
「じゃあそういうことで。九王はボコる。決定な」
そうしてトントン拍子で話は進んだ。このバカどもの悪意についてはボクは何も言わない。別に暴行事件で男子どもが退学になろうと関係ないし。逆に九王がボコられても関係ないし。九王がザマァされればボクとしてもそれ以上はない。きっとこれでコヲリもホムラも小比類巻さんも目を覚ますだろう。ボクの方がオスとして優れていると。っていうかそもそも九王なんて取り扱うほど大層な存在でもないだろ。
「くく。調子に乗ったツケだぞ。九王」
ボクとしては九王がボコられても、反撃して暴行事件を起こしても、どっちもでいい。どっちにしろボクにとっては有利な状況だ。
「さて、どうなるかな」
そうして授業を受ける。分からないことだらけだけど、授業なんてそもそもわかる方がおかしいんだ。ボクは悪くない。
「あとはカホルとコヲリとホムラが九王に失望すればそれでいいんだよね」
そうしてニコニコしながら午後の授業を受けた。マジで数学とか何言ってるか分かんないけど、それもじきに解決する。ホムラが九王に失望すればボクに丁寧にカホルが教えてくれるだろう。それで同じ大学に通って恋仲になるとか。なーんちゃって! なんちゃって! カホルだってボクと同じ大学に行きたいだろうし。ちょっとくらい偏差値を妥協してくれると嬉しいな。
「カホル……」
カホルの親の会社は今順調らしい。ということは儲けているということで。その金で二條の家の借金を返せば、僕らはまたいつもの四人に戻れる。その時はボクがカホルの親の会社に頭を下げて、誠心誠意金銭の融通をすることを約束する。そうすれば二條の家もボクを見直さざるを得ないだろう。完璧な作戦だ。カホルと恋仲になって、コヲリとホムラを救う。そうして三人とハーレムを築いてボクの将来は安寧だということだ。
「じゃ、後は九王を失望させるだけだな」
特等席で九王がボコられるところを見学しよう。それで九王が反撃すればボクがソレを生徒指導教諭に問題提起する。完璧だ。頭良すぎて冴えわたっている。金で学年一位を買っている九王とは頭の出来が違うんだろうな。
「ボコられてくださいねー」
ニヤニヤと笑ってしまう。九王の無様な姿か。あるいは九王が暴力に訴える姿か。どちらを撮影してもコヲリもホムラも失望するだろう。あるいはカホルも。そして小比類巻さんも。小比類巻さんもそうしたらボクのことを意識せざるを得ないだろう。あんな暴力しか出来ない男より、ボクを選ぶはずだ。そもそも九王に媚びているその姿勢が間違っているんだよな。小比類巻さんだって事実を知ればボクの事を好きになってくれるはず。まぁボクも鬼じゃないないし? 小比類巻さんがどうしてもって言うなら? 抱いてあげてもいいんだけど?
「あのカホルに匹敵するおっぱいはボクにこそ相応しい」
九王なんかにくれてやるのはもったいない。
「じゃ、あとは九王の無様を眺めるだけだな」
男子どもは九王をどうボコるか相談している。それで内申点がどうなるかまでは考えが及んでいないのだろう。ま、バカどもは自業自得ということで。ボクのために利用されてお疲れ様でーす。
「さて、後は九王が乗ってくるかだな」
女子のラブレターを偽装すれば乗ってくるだろう。どうせ童貞だろうし。
「もうお前に未来なんてないんだよ。九王」
ああ、笑いが止まらない。自分の知恵の冴えわたりが凄すぎてとてもじゃないが笑いを堪えきれない。もう終わりなんだよ九王。ボクに逆らったことを後悔しろ。




