第124話:変わる日常
「…………コヲリ?」
「……はい。……アクヤ様のコヲリです」
俺がおっぱいアイマスクが好きという情報はもう既にヒロインの共有するところで。今日はコヲリのおっぱいにうずもれていた。
「……あの、……アクヤ様。……朝の件ですけど」
朝三暮四の朝の方な。
「……今日は私がお手伝いしますね♡」
「ああ、はい」
もはやヒロインの俺への好き好きオーラは隠せていないらしく。もう四人とも俺が全員を抱いたことは共有しているらしい。しかもその全員が、俺がG行為だけで獣を抑えて自律神経失調症になったことも知っているので、俺の身体が女を欲していることも把握しており。朝三暮四も全部ヒロインの担当になっていた。レディとレディファイト。
「今日のご飯は焼き鮭とお味噌汁です」
後サラダ。そうしてカホルの飯を食べ終えた後、制服に着替えて、学校に登校する。今日は月曜でカホルは人公を起こしに行く日のはずだが、普通に家で朝食を作り、四人で飯を食っている。ちなみにマキノは昨日、飯だけ食って家に帰ったので、朝はいない。社宅の住み心地もいいらしく、俺としても一応安堵。っていうかミキノさんにはこれから幸せになって欲しい。ミキノさん美人だし、九王本社ビルの社内コンビニで働いていればエリートサラリーマンと恋仲に落ちる可能性もワンチャン。そうしたらマキノも幸せな家庭を築けるだろう。
そうして制服に着替え、四人とも家を出て。車で駅まで。それから四人仲良く登校し、そこに駅で待っていたマキノも加わり、五人で仲良く登校する。
「うわー」
「さすが九王くん」
「選り取り見取りじゃん」
「やっぱ持ってるなぁ」
色々と言われていた。不本意も極まるが事実の指摘に誤謬はない。
「っていうかこの前のアニメさぁ」
「闇騎士転生ジャンヌは本当にトレンドでして」
「……女子が見ても面白いですよね」
「あたしなんてクライマックスで泣いちゃった」
「あーしも見たよー。面白かったー」
ニコニコと微笑みながら、五人で歩く。男子からはヘイトの視線が。女子からは憧憬の視線が。それぞれ刺さる。そうして残酷なことにカホルとコヲリとは別のクラスで、ニコニコ笑顔のホムラとマキノが俺に抱き着いてクラスまで。もちろん風紀的にどうなのかという話もあるが。まぁそんなこと言ったら既に抱いているし。口外さえしなければ大丈夫だろ。ソレを大丈夫じゃないと、生徒指導は言うのだろうが。
「九王。ちょっと時間あるか?」
いつもの独身生徒指導教諭が俺に声をかけてきた。まぁ用件はわかるというか自明というか。
「いま生徒の間で、ちょっと噂になっているんだが」
デスヨネー。
「九王と花崎、二條姉妹と小比類巻。付き合ってんのか?」
「いいえ」
ノーと言える日本人。
「にしては生徒から上がる報告がだな」
「仲がいいのは確かですけどね」
「本当に付き合ってないんだな?」
「仲良くしているだけでーす」
「せめてそのモテる秘訣を教えてくれ! いや! 教えてください!」
「トラックに轢かれそうな女子を助けるとラブストーリーが始まるそうですよ?」
「トラックだな!? わかった!」
まぁ毎度毎度ソースは無いんですけど。さすがにいい年して独身を案じる生徒指導教諭の気持ちもわからんじゃないが。
そうして昼休み。
「アクヤくん!」
「アクヤさん!」
六組にカホルとコヲリが飛び込んできていた。既に九王呼びも止めたらしい。さすがにアクヤ様と呼ばれるのは支障が出るので、アクヤくん呼びが定着している。コヲリはアクヤさんと呼んでいるが、丁寧な姿勢のコヲリっぽくて加点対象。
「じゃあ行くか」
そうして五人で学食へ。こういう時は人公が出張るかとも思ったが、今日はまだ登校していないらしい。俺の心の負担も減っていた。さて、ラブハートの主人公に何と物申せばいいものか。全員寝取りましたとか、彼にしてみればどんな地獄。けど本来のゲームの趣旨とは合致してんだよなー。こっから人公が俺からヒロインを寝取るのか? うーん。それもモヤモヤするなー。もう四人とも俺の女だし。手を出されると俺も不機嫌になるぞ?
そうして五人で学食に行き、俺はブリの焼き魚定食を頼んだ。ブリとかどっから持ってくるんだ。港と繋がっているのか? ここの学食。
「うーん。美味い」
で焼きブリを食べながら、俺は幸せに浸っていた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
ヘイトを集めている集めている。苦笑するしかないが。俺としてもヒロインたちを独占できるならそれ以上は無いわけで。
「九王アクヤぁ!」
で、俺がブリを食べていると。我慢ならんとばかりに男子生徒の一人が、俺にビシッと指差した。ほら。あれ。有名な裁判ゲームのアレだ。
「貴様は紳士同盟を侵している! よって極刑に処す」
「…………」←カホル
「…………」←コヲリ
「…………」←ホムラ
「…………」←マキノ
その一言に、四人のヒロインが一気に不機嫌になる。怒ってる怒ってる。
「貴様の蛮行は万死に値する! 天が許してもこの二階堂善一が許さん!」
名前だけは大仰だな。きっとご両親は彼の幸せを願って名付けたのだろう。
「勝負だ!」
「ちなみに種目は? 殴り合いはせんぞ」
「剣道でどうだ!?」
やったことないけど。剣道。
「アクヤくん」
「……アクヤさん」
「アクヤくん……」
「アクヤ」
何かを期待するヒロインの目。しゃーない。じゃあやりますか。
「…………」
で、私立アルケイデス学園の剣道場に行き、防具を纏って、竹刀を握る。うーん。この違和感。竹刀って結構重いんだな。戦国時代のサムライって当たり前のように鋼の刀握っていたっていうけど、もしかして超筋トレしていたのか?
「先に一本取った方の勝利だ!」
二階堂善一がそう言うが。
「負けた時のペナルティは?」
「花崎さん、二條さん、小比類巻さんを解放しろ」
「無理だと思うぞ」
「何故だ!」
「四人とも俺にベタ惚れだし」
「それが許せんと言っているのだ!」
そうして竹刀を振るってくる。経験者なのだろう。竹刀の軌道にブレがない。俺はそれを受けて、そのまま力で押す。鍔迫り合いだ。筋力だけで押し通して、そのまま胴薙ぎ。
「胴!」
パシィンと竹刀が音を鳴らす。
「一本!」
公平性を担保するために剣道部の顧問を審判に呼んでいた。
「これでいいか?」
「良くない! これは何かの間違いだ! 剣道部の私が素人に後れを取るなど!」
「じゃ、失礼しまーす」
「アクヤくんカッコよかったよ」
「……さすがアクヤさん」
「最高♡」
「あーしも濡れる♡」
そうしてヒロインたちとイチャイチャしながら剣道場を去る。絶望に打ちひしがれた二階堂善一の顔はちょっと可哀想だったが、まぁ勝負の世界と思ってもらって。南無。




