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ガリ勉の俺がエロゲーの竿役に転生したが童貞すぎてラブコメは無理  作者: 揚羽常時


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第110話:冤罪


「すまん。あまり大仰にはしたくなかったが、場合が場合でな」


 呼び出された生徒指導室。そこでは困った表情の生徒指導の先生がいた。独身に悩まされている男性教諭だ。


「何か不手際がありましたか?」


「その様子じゃ話は把握していない……でいいのか?」


「まぁ心当たりはありませんが」


 実際に俺が何をした。ここ最近は大人しくしているぞ。一年時の九王アクヤについてはさすがにフォロー不可だが。


「今、生徒たちの間でこういう動画が出回っている」


 と、学校が支給しているノートパソコンで、教師が俺にデータを見せた。動画だ。


「…………あー」


 そこには俺が映っていて、誰か知らない人間を殴っていた。


「これは真実か?」


「あー、いえ、心当たりが無いんですけど」


 俺は最近、人を殴ったことは無いし、こんな暴行事件を起こすほど大仰なこともしていない。


「信じていいんだな?」


「まぁ。無罪を主張します。ただこの動画は……」


「最近はAIで何でも作れる時代だからな」


「ソーシャルカメラは無かったんですか?」


「どこで起こったのかも把握は無理だな。そもそもこの動画が正当性のあるものかも教師陣は疑っている」


 つまり教師は慎重になっているわけだ。気持ちはわからんじゃないが。


「ちなみに出どころは……」


「名は伏せるがとある生徒だ。パソコン室で放置されたメモリを発見して、中身を見るとこの動画があった、と。面白がってSNSで触れ回ったら教師の耳にも入った。事情としてはそんな感じだ」


「きな臭いですね」


「ああ、メモリをパソコン室に放置した人間の悪意を感じるな」


 自ら問題の動画を噂にしたら情報の出元を遡行してバレる。だからメモリに俺の暴行動画を保存して、誰かが開示することを狙った。


「もう一度聞くが心当たりはないんだな?」


「証人は……あー」


 ヒロインたちはいるけど、まさか半同棲しているとか言えないし。そうするとアリバイは成立しないのか。


「いや、誰かの陰謀だとは思うが、九王から無罪だという証言を聞きたかっただけだ。すまなかったな。面倒なことに付き合わせて」


「それはいいんですけど」


 俺の評判を落としたい人間がいるということに。


「警察の介入はありますか?」


「そうなると最悪の事態だな。法人とはいえ、やはり教育機関に警察は」


 ですよねー。


 それは俺も納得する。


「なわけで学内だけで調査することになる。九王がこんな馬鹿な真似をしないというのは教師陣の見解が一致している。安心してくれ。究極的な証拠がない限り生徒指導にはならない」


 それは有難いお話ですが。問題はそこじゃないような。


「ただちょっと生徒間では軋轢が発生することは加味してくれ。既に暴行動画は出回っているらしい」


「でしょうね」


「教師側の不手際だ。申し訳ない」


「いえ、まぁ、ヘイトの対象にはなっているかなと思いますし。ちょっと環境的に」


「なぁ、本当にどうやったらモテるんだ? 二條さんと小比類巻さんを落としたお前ならコツを知っているんじゃないか?」


「貯金をしてください。老後の安寧を求めた女性が群がってきますよ」


「貯金だな! わかった!」


 ちなみにソースは無い。あくまでネットの情報だ。そもそも俺は九王グループの御曹司だし。


「さてそうすると」


 生徒指導室から帰ると、クラスメイトの視線が刺さった。俺を疑っているのだろう。暴行事件を起こした凶悪犯。人間が最も嫌悪するのはヒットラーではなく迷惑な隣人だ。


「ま、いいか」


「良くないんだぞ……」


「良くないね」


 で、俺が生徒指導室に行っている間には情報を把握したのだろう。ホムラとマキノが怒っていた。


「こういうのはリアクションすると燃料になるぞ。論破しようとすればするほど相手を楽しませる。ほっときゃいいんだよ」


「アクヤくんはそれでいいの?」


「あーしは許せないんだけど」


「別に今更だしなー」


「え? 暴行事件が?」


 いやいや。


「相手を殴ったことはないが、そんなことしそうな感じじゃん? 九王アクヤって」


「ううん。超紳士だぞ?」


「アクヤより理性的な男子ってこの学校にいなくない?」


 お前らのその信頼が重い。


「とにかく。放っておけばいいんだよ」


「うー」


「むー」


 それでも納得がいかない。そんな様子らしい。


「じゃあホムラとマキノはどうしたいのよ」


「ギロチン刑」


「火刑かなー」


 そっちの方が恐ろしいだろ。


「アクヤくんは優しすぎるよー」


「別に全員に優しくする義理も無いんだが」


 ヒロインたちだけで十分だ。


「警察に連絡しようよ」


「スーパーハカーを雇って真相を究明するとか」


「学校の立場としては難しいだろうな」


 警察の介入も難しいし。まさか全校生徒の家のパソコンをあら捜しするわけにもいかないし。そんなことになったら大問題だ。


「でもアクヤくんがー」


「アクヤがっしょ」


「お前らが味方であるだけで俺は救われているんだよ」


 別にそれ以上は求めてないし。


「うー」


「むー」


 結局それかよ。


「大丈夫だから。人類の進歩には犠牲が付き物デース」


「じゃあ、アクヤくん…………ボソボソ(今日はあたしと)」


「生憎とコヲリの番だ」


「えー」


 まぁ既にもうコヲリ以外は抱いているんだが。なんだろう。もしかしてこの世界はコヲリルート? それもありえないか。そもそも俺が九王アクヤに転生してからエロゲーとは展開が変わっているんだよな。人公アルシもあんなヘタレじゃなかったし。


「とするとどこに向かってんだか」


 人間原理。世界五分前仮説。ブレーン宇宙。エヴェレット解釈。何と言ってもいいんだが、この世界は、もうラブハートの世界じゃないのかもしれない。しかし人公はなー。


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