第四十一話 決着(エドガー視点)
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――まるで巨人の一撃が地震を起こしたかのようだった。
俺は身の危険を感じ、土埃で視界が悪いなか、一旦距離を置こうと後方へジャンプした。すると、奴は俺の前に突然飛び出してきた。
(空中からの回し蹴り!!!)
俺は、間髪入れずに、蹴る側の太ももに自分の左足をかけ、それを踏み台にして勢いよくジャンプした。回転しながら、奴の背中を越えて、回避する。これは、【八の型 極炎覚醒】を行ったからできたこと。通常モードでは死んでいた。
「お前、人間のくせに反射神経がいいな。俺の蹴り足を利用して回避するとは!!」
足場が悪くなった牧草地に着地すると、ベルゼブブは、すぐに怒涛の百連キックを仕掛けてきた。風を切り裂く音を立てながら、蹴る力に強烈な風圧を感じる。一瞬でも目が離せない。目を逸らしただけで、俺はやられる。
連続で蹴る奴の足は八本にも十六本にもあるように見えた。よく見ると奴の足元は地面から少しだけ浮いていた。
「足場が悪いのに、自分だけ足元を浮かせるなんて、悪魔ってのはズルい生き物だな」
「じゃあ、お前も浮いてみな。人間じゃあ無理だろうがな」
息つく間もない攻撃の連続に押されつつ、俺は目を見開き、二本の剣で相手にする。地割れで足場が悪い中、後ずさりをし、倒れた木を気にしつつ、戦うのは神経が削がれる。
やりにくい。奴の足が掠るだけでも出血をしてしまう。しかし、こっちだって負けてはいない。
俺の業火の剣にもひるまずに、ベルゼブブの攻撃は止まらなかった。奴の足には鱗のような固い皮膚でおおわれている。
(こうして剣に触れるだけでも約六百度以上の高温だ。どんなに固い鱗だろうが、長期戦で戦えば、足は黒く焼け焦げ、大やけどを負ってやがてボロボロになるはずだ)
「考え事するなんて、余裕だな」
ほんの0.01秒。一段階ギアを上げ、フェイントの後ろ廻し蹴りが俺の脇腹を捉えた。咄嗟に二つの剣で防御するが、勢い余って数メートル飛ばされ、牧場の外にあるもみの木に激しくぶつかり、左腕を強打した。
すると、もみの木にメキメキと亀裂が入り、ゆっくりと木が後ろへ倒れた。
(痛てて……、リミッターを外したことで、ほとんどが攻撃力に充てて防御率はゼロに近いはず。それなのに外傷がないのは、今朝かけてもらったセレーナの防御魔法のおかげか……ふぅ~~)
すると、奴は空中に静止していた。
「これで、とどめを刺してやる」
ベルゼブブが、自ら縦回転を始めると、黒い鉄球のように高速回転して俺に襲いかかってきた。
俺は素早く起き上がると、急いで牧草地へ戻る。回転しながら執拗に迫ってくるベルゼブブ。逃げても無駄だと、覚悟を決めた俺は、振り返り、腰を低く落とすと、剣を上にクロスして奴を迎え撃つことに決めた。
《ドゴォォォォーーーーン!!!》
ベルゼブブから繰り出した右足の踵落としはとても重く、その攻撃はまるで巨人族の巨大な鉄槌で一気に釘を打ちこまれたような強烈な圧と衝撃が全身に走った。
「……ぐぐっ!!」
地割れのせいで土が柔らかくなり、足元の地面が大きく陥没した。先の衝撃波で近くの地下水が決壊したのか、両足がずぶずぶと水気の含んだ土に足が膝まで飲み込まれていく。
奴の踵を二つの剣身で受け止め、グリップを持つ手は小刻みに震える。両腕の血管が全部ぶち切れそうだ。
「……ぐっ、くそ、……このやろぅぅう!!!」
グリップを握る指をほんの少し動かす。刃の向きを上向きに変えて、圧し掛かる衝撃に耐えた。諦めない闘志を燃やし、【命の剣】は、ほんのわずか肉の焼ける匂いをさせた。
俺の【命の剣】がベルゼブブのアキレス腱にごくわずかな斬り込みを入れた。俺はそれを起点にメリメリと剣を深く入れていく。埋没した足を抜きながら、立ち上がる勢いで、クロスした剣を力の限り空へ突き上げた。
奴の足が完全に切れた。奴の足より俺の剣が勝った瞬間でもあった。
「だぎゃあああぁぁーーーー!!!」
ベルゼブブの右足が燃えている。斬り口から炎が噴き出した。
――猛攻撃の時
燃え盛る双剣で俺は、剣舞のように無駄な動きをせず、攻めていく。
首、肩、胸、腹、背中、両腕、太もも。次々と斬り刻んでいき、血しぶきと炎が噴水のように噴き出した。しかし、切り口から吹きあがる炎を黒いオーラがかばうように包み込み、炎を消そうしている。
「そうくるなら、もっと早いスピードで斬りつけていくだけだ」
俺はもう一段階速度を上げた。息つく間もない攻撃を何度も繰りかえした。炎と黒いオーラの攻防が続いたが、やがて黒いオーラはベルゼブブの全身を包みこんでしまった。
「隠すな、黒いオーラ!!!」
願いが届いたのか、希望の光が俺の背中を駆け抜けた。
疾風と共に強烈な光が走ると、ベルゼブブに巻き付いた黒いオーラが一気に剥ぎ取られた。その瞬間を俺は見逃さなかった。
「神に感謝を!!!」
俺は、真正面から双剣で切りかかった。
「うぎゃぁぁぁぁぁーーーー!!!!」
胸から胴まわりにかけて深く斬りつけ、赤い血と炎が爆発するようにほどばしった。
ついにベルゼブブは後頭部から勢いよくバタンと地面に倒れた。赤い炎につつまれたベルゼブブはもう動く気配すらなかった。
「はぁ、はぁ、はあぁ……終わったか」
空を見上げると、イスに座っていた男はどこかへ消えていた。
後ろの方からセレーナの声が聞こえた。
俺は振り返り、気力で大きく手を振った。
また、10分後に投稿します。




