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幼い精霊使いは大人になることをあきらめない〜孤独な転生少女は、風の精霊に愛される〜  作者: 古晴
第二章 セレーナ・クレメント

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第十三話 水の精霊との出会い

 温泉から、小さな女の子が現れた。半透明だが、かわいらしい顔をしている。


「あなたが、助けてと声をかけても、あの子、意地悪でちっとも助けてはくれなかったじゃない? 私達ちゃんと見てたんだから」


「この子は、ウンディーネ。水の下級精霊よ」


「ウンディーネ、はじめまして。私セレーナ・クレメントです」


 エール様は私を真正面に座らせると、どうして川へ落ちたのか理由を聞かれた。私は、事の顛末を一部始終説明した。


「シルフリードって道理で変わった名前をしてると思ったら、名付けの儀式をしていたのね。貴方が強制したの?」


「まさか! シルフリード自身が名付けてほしいと言ったの。でもシルフリードは、名付けの儀式のデメリットを知らなくて、うっかり私に名付けられたの」


「呆れた!! 風の精霊はおバカさんが多いのかしら。このぐらい精霊界の常識なんだけどな」


 ウンディーネは、エール様の周りを飛び跳ねた。


「どうする? ウンディーネ。私と契約する? もちろん名付けの儀式はしないけど」


 それを聞いてウンディーネは、私の顔を見つめた。


「あなた、まだ小さいのに契約するの?」


「うん、プロテウス様は早いほうがいいって」


「ところで、セレーナは風の精霊に命令したことある?」


「ない。だって、契約する前から使役されたくないとか、自由でいたいとか言ってたから、用がない限り呼ばないでおこうと思って。それでね、今日は助けが必要だったから、初めて呼んでみたのに、手を貸さずに自分でやってみろとそればっかり」


「ははっ、だからか。だからアイツは、契約者の命令を無視したのね」

 

 ウィンディーネが、クスクス笑って、私の周りをぐるりと回る。少し、高飛車な感じを受けた。


「ねぇ、『だから』というのは、どういうこと? 無視した理由知ってるみたいな言い方だけど」


「そりゃあ、ただの僻みよ。自分の事を呼んでくれないから、拗ねてるの」


(シルフリードが私に拗ねているの?)


「それ、本当なの?」


「気になるんだったら、本人に聞いてみな?」


(私が水死したら、シルフリードも消滅するのに、そのことを忘れたのかな?)


「でもね〜、あなたには、やっぱり私が必要だと思うよ? だって、ガキみたいに仕事放棄する精霊より、あたしみたいなしっかり者の精霊が必要だわ」


 さっきから、このウィンディーネの態度がやたらデカい。


「ねぇ、ウィンディーネ。私と【命の契約】できますか?」


 私は、わざと下手に出る。


「しょうがない子ね。いいわよ。契約の儀式をするわ」


 ウンディーネが、姉御気質な精霊でよかった。私は、ウンディーネの小さな手に触れ、額にキスをした。


「ウンディーネ。私と契約してください。よろしくお願いします」


 すると、ゆらゆらと水が揺らぎ、やがて渦を巻いた。まばゆい光に包まれたウンディーネは、見る見るうちに体が大きくなった。


 身長は155センチぐらいになり、体は美しい曲線のあるボディースタイルへ変化していった。揺れるポニーテールに貝殻のピアス、マリンブルーの髪と瞳、顔立ちはにっこりと快活な表情を浮かべていた。彼女の臍の横には水の紋章がついている。


「うっそ!! マジ? 中級精霊に昇格してるわ。私、フルーランになっちゃった!!」

フルーランは、自分の体を見つめては、唖然としている。


「水の精霊はね、ウンディーネから始まり、中級精霊フルーランになって、上級精霊カロスロエーに名前が変化していくの。昇格すればするほど、水を扱う量が増える訳」


 エール様はニコニコして説明してくれた。


「ねぇ、裸だから、せめて服を着けてちょうだい」


 私は、ちらりと、プロテウス様を横目で見た。


「ごほん、我は小者とは相手にせんから、安心しろ。それにしても、そなたの背中に風と水の紋章が付いたな。よしよし、残りはあと六つ。精進するがいい」


「契約者同士しかみえないはずなのに、プロテウス様は見えるんですか?」


「無論、儂レベルの神なら見えてるはずだが?」


(そういえば、アトロポスもこの紋章が見えていたっけ……)


「私、せっかくだから、動きやすい服にようにしちゃおうかな!!」


フルーランは、胸に赤いスカーフ、青い襟の白いセーラーに白のショートパンツ。白いサンダルを作りだし変身した。かわいい水兵さんスタイルだ。


「かわいい~!!」


 私は、思わず声を上げた。


「へへ、こんなことができるなんて、夢にも思わなかったわ!!」


 フルーランも満足そうだ。


 これを横で見ていたプロテウス様は、満足そうに顎を撫でた。


 「いいか、セレーナ。精霊使いの特徴は、圧倒的な自然親和率の高さだ。精霊を使うということは、自然を使うのと同じ。魔法使いは自然の一部を借りているに過ぎない。そして、もうひとつ。精霊使いになれるのはハイエルフがほとんどだ。しかし、ハイエルフは数が少なく、ほとんど絶滅寸前だ。そんな中、クウォーターエルフで精霊使いはそなただけだ。特別の中の特別だな」


 プロテウス様は指先に小さな水の竜巻を作った。


「水の精霊と契約しているお前なら、マナさえ分け与えれば、海を荒らし、竜巻や津波をひきおこすことができる」


「津波なんて、そんな恐ろしいこと――」


「それにな、そなたが氷の大精霊の直系にあたる子孫なら、精霊と契約しなくとも、力があれば、雪を降らせられるかもしれないな」


「雪? まさか、そんなのできるわけないよ」


 話の内容に現実味がなくて、否定してくる私にプロテウス様は続けて話をした。


「一方、魔法使いの強さの本質が『欲望』だ。欲とは生きる上で必要なエネルギー。しかし、過剰な欲は身を亡ぼす。その過剰な欲のエネルギーを魔力で昇華する。それが、魔法使いだ」


「精霊使いと魔法使いって違うのですね……」


「上級魔法使いは情けないほど、欲深い奴が多い。一番多いのは出世欲、知識欲、物欲、食欲、性欲など様々だ。強い魔法使いほど、癖が強いということを覚えておけ」


「この世界でハイエルフ精霊使いはどのぐらいいるんですか?」


「う~ん、昔は三人の精霊使いがおったのだが、そのうちの一人は魂が汚れてしまい、精霊が現れなくなってしまった。この星の精霊使いは、レン・セルシウスと、パウロ・ガルシアの二人だけだ」


(うちの家系から二人も精霊使いがいるのか)


「おっと、言い忘れていた。セレーナ、精霊たちにあまり気を使わないことだ。彼女らは使われることで、生き甲斐とやる気を起こすんだ。使われなかったら、シルフリードみたいに言うことを聞かなくなる」


 私は、それを聞いて、ドキッとした。それを見たフルーランは私のおでこにデコピンをした。


「あいつは拗ねてあなたの言うことを聞かなかったでしょ?」


 私は黙って頷いた。


「う~ん、シルフリードの件もそうだけど、あなたはすこし気を使いすぎるところがあるみたいね」

 

 エール様は心配してくれた。


 フルーランは私を見るなり首を振り、ため息をついた。


「セレーナ!! だめよ! あなた契約者なんだから、もっと気合を入れて、堂々と命令しなければいけないわ。本来ならシルフリードを、叱らないといけないの!! そこらへん理解してる?」


「分かっているよ。今もシルフリードに怒っているから!!」

 

「とりあえず、もう日は沈みかけているし、そなたもすでに回復しただろう。暗くならないうちに、家に帰りなさい」


 プロテウス様はそういうと、湯けむりの向こうへと、姿を消してしまった。


「今、この洞窟温泉に結界を張りめぐらせているの、今解除するわね」


エール様が指を鳴らした。


 すると、透明なモヤのようなものがクリアになり、周りがよく見えるようになった。


 「セレーナ、セレーナ!! どこにいるんだ?」

 

シルフリードの声が洞窟内で響いた。


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― 新着の感想 ―
フルーラン? 初めて聞いたや。 水の精霊の高位の奴ですかな? 二人目契約、かなりパワーアップなのかな?? どきどき。 ( ・∇・)土岐峠
やっぱりシルフリードは拗ねていたのですね。 しかし、命令をしていないと聞かなくなるのか……割と面倒なシステム。 (^~^;)ゞ 魔法使いは欲深い……。確かに! 真理かも! 30歳でDTだったら魔法使…
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