仕事探し
レオンの目と口を布で塞ぎ、両腕を紐で後ろに縛った。
錆のクソみたいな臭いを上書きした辺り一面の血と、側頭部を撃ち抜かれた少年2人が、だらんと倒れている。
ギャングとはいえ、まだガキの奴らがこんな死に方をしなきゃならないなんて、あんまりだ。
ぶるぶる震えているレオンを担ぎ、乗用車の後ろに投げ入れる。
「んんんー!」
怖いだろうよ、ただクスリを買いに来たはずが、銃撃戦に巻き込まれる。可哀想に思えてくるが、そもそもクスリを買うんじゃねぇよ、バカ息子がっ。
しかし、こいつが乗ってきた車、今まで見たことがねぇ。新車特有の香りが漂う。
引きこもりのこいつがどうして車を持ってるのかも気になる。
生活用の口座は妻が管理しているはず、新車を買っちまえばあとのやりくりが大変だろう。
山ほど言いたいことや訊きたいことがある、だが、今じゃない。
とにかくレオンを安全な場所まで運んで、さっさと合流することだけ考えろ、俺。
呼吸を整えて車に乗り込み、キーを回すと静かな音でエンジンが始動した。
助手席のシートに散らばる何枚か紙が視界の隅に映り込んだ。
ったく、ちゃんと片付けろってんだ。
『不採用通知』
無慈悲な文字が見えた。
不採用通知が重なっている。
一番底のくしゃくしゃのメモに書いてある文字は、『ごめん、母さん』と震えている。
「……クソっ」
町へと車を走らせる。道中、普段より声を低くさせてレオンに話しかけた。
「おいガキ、こんなちいせぇ町じゃ就職先なんか限られる。コネがなきゃ入り辛いもんだ。ニール印刷所にダメもとで申し込んでみろ。あそこは年中人手不足で若い奴を募集してるらしい、過酷だが、福利厚生は割とホワイトって噂だ」
口も目も塞いじまってるから、レオンは「んー」としか返事ができないでいる。
今さらランゲ一家がどうなろうが知ったこっちゃない……——。
――町の入り口近くにある営業時間外のカフェに車を停めた。
幸い街灯がなく、後部座席を開けて、レオンの側頭部に銃口を突きつける。
「ガキ、いいか。ここは町の入り口だ。命まで奪いやしないが、俺の姿を見たら容赦なく撃ち殺す、30秒カウントしてから紐を外せ、いいな?」
レオンは必死に震えながら頷く。
両腕の紐だけ解放させて、ゆっくり数歩後退ったあと、俺は猛ダッシュで暗闇の中へ逃げた。
というかこのまま町の中に入っていいものか悩む。
深夜とはいえ、誰かしらはうろついているもんだ。
一旦便利屋に行くべきか……祈りを込めてバトラー法人事務所に突っ込むべきか。
悩みながら歩き回っていると、町の外へと走る小さな人影を捉えた。
パーカーにジャージパンツ姿の少年だ。
コインランドリーの時に見かけた時と同じ服装、間違いない、呪いの宝石を横取りしたガキだ!
続く。




