パーティ結成!?①
言われた通りに日曜日の昼の鐘が鳴ったあとにファルじいさんの店に訪れた。
「ようきた、ようきた。今日はこっちじゃ」
店の奥のリビングに通される。そこにはパンに焼いた肉、サラダといった昼ごはんが用意されていて、知らない女の子も2人、席についていた。
1人は茶色の肌に筋肉質でガッチリした体型。髪は少し赤みががっていて1本の三つ編みにまとめてある。間違いなくドワーフだろう。
もう1人は灰色の長い髪をそのまま下ろしている不健康そうな白い肌。
「そいつが、おじさんが言ってたルックか。細いなぁ。まぁいいや、とりあえずメシ、メシにしようぜ!」
「これ、リノ、行儀が悪いぞい。やれやれまったく。ルックも席についてくれ。まずは昼飯にしようぞ」
ファルじいさんがドワーフの子をたしなめながら席に着くように促してくる。
いいのかなっても戸惑いつつも、いつも空腹で過ごしている僕は、ごちそうの前に抗えるわけもなく席に着いた。
「よし、いただきます!!」
リノと呼ばれた子が勢いよくご飯を食べだす。
ファルじいさんもそれに続いて小さくいただきますとすると、ご飯を食べ出した。僕もそれに続いてご飯を食べる。
ちらっと灰色の髪の女の子の方をみると、パンを少しとサラダが少しだけ用意されていて、それを無言で少しずつ食べている。
「ふぅ〜。久しぶりに食った、食った」
「リノ、たくさん食べるのは良いが少しは行儀良くせんと次は用意してやらんぞ」
「はーい」
ファルじいさんの言葉に素直に従うリノ。同じドワーフ族だし親戚なんだろうか。一緒に住んでいる人は居なかったはず。
「さぁさて、それぞれに紹介していこうかの。まずは姪っ子のリノククじゃ。市民街の方で鍛冶屋をしとる わしの兄の娘での。今年が10歳の年でクラスは重戦士を授かった」
紹介されてリノは左腕で力こぶを作ってアピールする。すごい筋肉なのはドワーフってだけじゃなくて戦士系クラスだったからか。特に重戦士は戦士系の中でもパワーが凄い。
「そして、この子は、リュネット。リュネと呼んでおる。リノと幼馴染の子での。この子のクラスは魔法使い。しかも風と火、光の3属性なんじゃそうじゃ。2人とも町の方の冒険者学校に通っておる。1年生じゃ」
ファルじいさんの紹介にもリュネは特にリアクションしない。なるほど、魔法使いか。確かにそんな雰囲気。しかも3つの属性持ち。2つでもすごくレアなのに。でも確か属性が多いと大変だって聞いたような。
「ルックも気づいたようじゃな。使える属性が多いとその分、体内の魔力操作が難しく暴走したら失敗やすくなる。それに体も病弱になることも多い。リュネは元々、そんなに体は強くなかったからの。なおさら体が弱くなってしもうた。
リノ、リュネ。この子がルック。クラスは付与魔術師。2人の問題を解決してくれるはずじゃ」
リノは期待の目で見てきて、リュネは、ちらっとだかこちらを見た。
2人の問題ってなに?
ファルじいさんの僕の紹介に対して疑いのの眼差しを向ける2人。
「2人とも、そう怪訝な顔をせんでも。まぁいくら口で言うより実際にやってみたが早かろう。
ルックや、このゴーグルに視力強化。こっちのメガネに視力強化と魔力操作を付与してくれんか?」
机の上の食器類が片付けられて、代わりに青色のゴーグルと赤いのメガネが置かれる。
視力強化の付与は問題ない。重ね掛けも1つなら大丈夫。魔力操作の付与は、対象の魔法を使う際などの魔力操作を補助する付与魔法だ。魔力操作を付与された状態で魔力を消費する技や魔法の感覚を掴むという練習方法があり、実戦よりも練習中によく使われる付与魔法だ。メガネに筋力強化の付与をした際に装備者に効果があったし、魔力操作も装備者に効果が出るだろう。
まずはゴーグルとメガネの両方まとめて視力強化を付与する。
「2つ同時ね。それに付与も成功してる。底辺付与魔術師って噂じゃ聞いてたけど」
それをみたリュネがつぶやく。底辺付与魔術師の噂って街の冒険者学校でも広まってたんだ。しかももうすぐ2年経とうとしてるのに。
「う、うん。成功したのはこれが初めてだけど練習はしてたから」
何をやっても効果が出ない状態だったが付与魔法の練習もずっと続けていた。勉強も忘れていない。
「この前は、2つ同時の重ね掛けも難なくこなしておったぞい」
ファルじいさんが嬉しそうに語るが、リュネは、ふうんといった感じでほぼ無反応。
『付与・魔力操作』
重ね掛けもうまくいった。いまだに自分の付与魔法が成功することが信じらない。
「さぁさぁ、2人ともかけておくれ」
ファルじいさんはウキウキした様子で2人にゴーグルとメガネを掛けるように指示する。ゴーグルはリノ、メガネはリュネのものだったらしい。2人は半信半疑の様子でゴーグルとメガネをそれぞれ掛ける。