メガネ限定付与魔法の検証①
ファルじいさんに言われた3日後の朝、雑貨屋ファルガガに僕は来ていた。
「ファルじいさーん」
扉は開いていたので中に入る。ファルじいさんは椅子に腰掛けて待っていたようだ。椅子の前のテーブルには色々と置いてある。
「おぉ、ルック。ようきたな。来てもらって早速じゃが、まずは視力強化をお願いしてもいいか?」
ファルじいさんがこの前のメガネを手渡してくる。
ようきたなって追い出してこの日にまた来いって行ったのはそっちのくせにと思いつつも、視力強化を付与する。手応えがちゃんとある。よかった。
「おぉ、これじゃこれ。よう見える。うん、今日はあのツルのメガネはしておらんのか?」
「付与の効果が切れたらすぐに氷が溶けてしまったんだよ。それにあんなの付けてうろついてたら流石におかしなやつって思われるちゃうし。だから外したんだ」
実際にツルのメガネをみた冒険者や通りすがりの人に何やってんだコイツという視線を向けられまくった。まぁおかしく思われるのが普通だと思う。
「で、なんで3日後にまた来てくれなんて言ったんですか?」
「あぁ、それはな。しっかり見えるようになったからの。久しぶりに鍛治をしてたんじゃ。おかげで良い剣が出来てな。しかもすぐにいい値段で売れたんじゃよ。これからもルックが付与してくれたら鍛治もし放題じゃて。ほっほっほっ」
その間に僕は魔力枯渇しかけながらお金を稼いでたわけだ。じとっとした目つきで静かな抗議をする。
「そんな目で睨むな、睨むな。ちゃんと報酬は弾むし、剣を叩き上げる以外にも色々と準備をしとったんじゃ」
ファルじいさんがテーブルの上のものを示す。
「これが準備したもの?」
綺麗なうっすらと光を浴びている手のひらよりも小さくて白い金属板や石ころ、筒状のもの、メガネらしきものなどが置かれてある。
「そうじゃよ。おまえさんのメガネ限定付与魔法の実験のためじゃ。まずはこのミスリルの板から付与を試してくれんか? 付与するものは、なんでも良いぞ」
「ミ、ミスリル、あの!ミスリル?」
うっすらと光を放つ白っぽい板は、あのミスリルだったらしい。
ミスリルは貴重な金属で魔法との相性も非常にいい。確かにこれなら僕の付与魔法でもかかるかも。
『付与魔法・強化』
これは付与魔術師が最初から使える付与魔法で、人にも物にも掛けれる強化系の基本付与魔法。人にかけたら筋力、物の場合は硬さがほんの少し上がる。
が、手応えが全くない。魔力が馴染まずに弾かれている。いつもの失敗続きの時と同じ感覚。
「ミスリルは魔力と非常に相性が良い素材なんじゃがの。次はこれじゃ」
次に渡されたのは白っぽい石。これも付与はダメだった。
「ファルじいさん、この石は?」
「それはのぅ。石灰石というガラスの元じゃ。
これもダメじゃったか。ならお次はこれじゃな」
30cmくらいの筒状のものを渡してくる。これにも、とりあえず強化の付与を掛けてみる。
お? 手応えがしっかりと。
「なんの付与をしたんじゃ?」
「強化だけど?」
筒を回収される。ファルじいさんは机を軽く叩いてみたりして強化されたかを確認する。
「間違いなく強化されておるの。視覚強化も重ねがけしてくれんかの?」
筒を返しながらそう言ってくる。重ねがけはやったことがないし、視力強化の意味も分からないけどやってみた。これも手応えがしっかりある。
「どれどれ?」
ファルじいさんが筒を持ち上げて、底の方を目に向ける。よく見たら筒の先端と底にはガラスがついていて覗き込めるようになっていた。
「成功しとるようじゃが、これではよくわからんのぅ」
と言ってファルじぃさんは筒を手に外に出ていく。訳がわからないまま、とりあえずついていった。
「おおおぉぉ〜!! 成功じゃ」
何やら興奮してる。
「何が成功なんですか? それにこの筒は?」
「すまん、すまん。これは船乗りなどが使う望遠鏡という遠くを見る道具を、わしが形だけ似せて作ったもんじゃ。この前のメガネと同じじゃな。形だけで遠くどころかガラスの透明度がなくて全く見えん。それがしゃ、ほれ」
筒を手渡してくる。
さっきのファルじいさんの真似をして覗き込む。
何も見えない、、、?
「近くをみようとしても近すぎて何も見えんぞい。遠くをみるんじゃよ。そうじゃの。あの城壁はどうじゃ?」
貧困街と市民街を隔てる大きな城壁。
ずいぶん遠いけど、大きさゆえにここからでも見えるし、僕の目でもわかる。
「え!!?」
筒越しだと、城壁の煉瓦の一つ一つまで確認できる。上にいる見張りの兵士が、退屈そうにあくびをしてる顔まではっきりわかる。
「さぁ、店に戻るぞい。検証したいことはまだまだあるからのぅ」




