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貧民街の冒険者ギルド

 ファルじいさんから店を追い出されてしまった。

ツルのメガネはとりあえずまだ使えたので掛けている。冷たくもないし、氷が溶ける様子はない。付与魔法の効果がある間は大丈夫なんだろうか?



付与:視力強化

効果時間:あと30分



 ファルじいさんのメガネより効果時間が短いのは素材のせいだろう。さすがに木の枝、ツル、水たまりの氷だもんな。


 ファルじいさんに追い出されてしまったので貧民街の冒険者ギルドに僕は向かった。朝が遅い貧民街の中で冒険者ギルドだけは活気が溢れている。


 いつものように中に入り、隅っこに立つ。

そして隅っこの壁に置いておいた板を持ち上げる。



-------

魔力、生命力、体力譲渡します

10につき1000ヨーク


体力、生命力譲渡は10まで 

魔力は最大50 譲渡します。

------


 冒険者学校を退学になって冒険者ランクFの認定を受けた僕はダンジョンに潜ることは出来ない。Fランクでも受けれる採取系のクエストは目が良くないせいで思うように成果が伸ばせなかった。結果、稼ぐために思いついたのがこの譲渡だ。

 

 魔力譲渡のスキルは付与魔術師なら誰でも最初からできる基礎のスキルで、付与魔法が成功できなかった僕にもできた。

 

 渡した分は上限を超えても大丈夫なため、ダンジョンにいく前に譲渡を利用してくれる冒険者は増えていった。魔力譲渡を繰り返すうちに体力、生命力の譲渡も可能となった。魔力ほど渡す余裕はないから10までだけど。


 ダンジョンに潜れない僕はレベルが上がらないけど、魔力譲渡を続けていたら魔力量だけは増えていき、元々は12だった(かなり低いと冒険者学校では言われた)のが今は180もある。体力と生命力も増えたらいいのだけどこちらは全く伸びていない。



「え、ほんとに魔力譲渡やってる子がいるんだ」


「だからそう言っただろ? しかも10につきたったの1000ヨーク」


「ほんとね。普通、3000とかもっとするよ?


ねぇ、ぼく、本当に10につき1000ヨークでいいの?」


 赤髪ショートのお姉さんが頭を低くして聞いてくる。瞳も髪と同じで赤い。黒の帽子、黒のローブをまとっており1mほどの杖を持っていることから魔法使いで間違いないだろう。


 連れの男性は前に見たことがある。

金髪に水色の瞳。顔立ちも整っていてイケメン。

172cmくらいで軽そうな装備に腰にはロングソード。剣士と思う。


 2人とも身なりも品もいいからきっと市民街の冒険者ギルドの人たちなのだろう。魔力譲渡の価格について色々と試した結果、これくらいの額ならと利用してくれる人も多い、この金額に落ち着いた。


「は、は、はい、、せ、、1000ヨークでいいですよ。いくら譲渡したらいいですか?」


「なら50で」


 お姉さんが、元気よく手を差し出してくる。

譲渡はお互いの体が接しておく必要がある。少し恥ずかしいと思いつつ手を握って譲渡を開始する。



魔力譲渡50 マナ・アサイメントフィフティ



 魔力が一気に消費されていく。譲渡分50。消費魔力50の合計100。1、譲渡するために魔力を1、消費する。


 始めた当初はかなりきつかったけど今は慣れたしこれくらい大丈夫。



「わぁ! ありがとうね、ぼうや」


「お兄さんはどうしますか?」


「ううん、そうだな。なら体力5と生命力を10お願いできるか?」


「もちろんです」


 手を握って同じ要領で渡す。

ふぅ。かなりきついけど体力が5余ってるから使い切った時より楽だ。



「じゃあこれで」


 お兄さんがそう言って1000ヨーク札を7枚渡してくれる。



「あ、すいません。お釣りがないので待っていてくれますか?」


 受付で両替をしてくれるため、受付に向かおうとするがお兄さんがそれを制する。



「いいっていいって500ヨークくらいチップだと思って貰っておいてくれよ」


「ぼうや、じゃあね! 頑張ってね!」


 2人はそう言って冒険者ギルドを後にした。

いい人たちだなぁ。



「ふん、お前はまだ乞食みたいなことをやってるのか」



 突然、吐き捨てるように言ってきたのは、リックだ。リックは同い年の11歳。同じ村の出身で、村が無くなってしまった後は、貧困街の孤児院で一緒に育った。

 今は冒険者学校2年生で既にDランク冒険者。

クラスは戦士。戦士は一般的な戦闘系クラスだ。


 オールバック風に逆立てた黒髪に黒い瞳、身長は11歳では長身の163cm。昔から筋肉質だったがさらにムキムキになっている。黒い鉄の鎧、背中にはハンマー、腰にはロングソードと小さめのポーチを身につけている。



「底辺のクズは冒険者ギルドから出ていけ」


「ちゃんとギルドマスターにも、許可はもらってる」


 圧を強く感じるが引く気はない。



「まぁまぁリック兄さん、騒いだらまた怒られるよ?」


 間に入ってきたのは、サムだ。

一個年下で、この子も出身は違うけど同じ孤児院だった。いつもひょうひょうとしていて笑顔なんだけどなんというか作り笑いな気がする。


 リックと同じ黒髪に、瞳の色は金色。

クラスは盗賊で、軽装に短剣を腰に差している。背中には大きめのリュック。



「ふんっ。いいか。ここはダンジョンに挑むやつがくるところだ。俺様もこれからダンジョンに潜る。初心者用のままごとダンジョンじゃない。本物のダンジョンだ。それもDランクのな。孤児院の恥晒しが」


 不満を露わにしながらリックは冒険者ギルドを出ていく。

 サムと弓を背負った緑髪の女の子がそれに続く。パーティは4人編成が基本だ。ここには来ていないもう1人は、噂では貴族出身の魔法使いだとか。


 リックをリーダーとするDランクパーティ【黒鉄(クロガネ)の鴉】。冒険者学校2年生がリーダーでDランクパーティまで昇格しているのは珍しいらしい。しかもリックは戦士という一般的なクラスでそれを成し遂げている。それに対して僕は進級試験で付与魔法の実力が不合格だったため退学させれてFランク。リックほどじゃないにしろ、冒険者に不向きなクラスを授かった子達もそれぞれのクラスの特性を活かして頑張ってる。たしかに僕は孤児院の恥晒しかもしれない。



 けどそれでも僕は僕のやり方で頑張るしかない。



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