初心者ダンジョン⑤
1mほどの大きさのスライムは、ぽよんぽよんとその場で飛び跳ねる。槍を構えたままその様子を油断せずに見ていたつもりだった。
ぎゅるんと回転が加わったと思うとその巨大で体当たりしてきた。反応できずに槍を弾かれて体当たりを食らう。
「ガハッ」
あまりの衝撃に息が詰まる。スライムは距離をとって再びポヨンポヨンと跳ねている。次の攻撃が来るまでに槍を杖代わりに立ち上がる。今はリノが倒れているし、リュネにはこの攻撃は耐えれない。
再びスライムの体当たりが飛んでくる。
「火球」
それに合わせたかのようにリュネの火球が放たれてスライムに直撃する。火球はジュッという音共に消滅した。体当たりの勢いは変わらず僕に向かってくる。槍の棒部分を縦にしてかろうじて受け止めた。火球のせいで熱気がすごい。たださっきと違ってそれほどスライムの体は硬くない。槍に当たった部分のスライムの体が、裂けて水飛沫のように四散する。そして僕の足元に球体にスライムの体が水溜まりのように広がっている。球体に戻ろうとしている。
「核を見つけて」
リュネの指示。スライムは体内に手のひらサイズの丸い核が存在する。それを傷つけられると体が維持できなくなり消滅する。
コアはどこだ? 水溜まりが縮まっていき、小さいが球体状な部分も出来上がってきてる。球体部分をまず確認するがコアはなさそう。水溜まり部分は、、、あった! 半透明の丸いコアが見える。
槍を逆さまに持ってコア目掛けて振り下ろすがコアは思った以上に俊敏に動き、槍を回避する。そしてスライムの体次第も僕の足元から移動を始めて離れようとしてる。また球体に戻られても面倒だ。どうにかしないと。
「そうだ、、、付与魔法・硬化!!」
僕はメガネをスライムの水溜まり部分に落として硬化の付与魔法を素早く唱える。さっき僕をコピーした姿のスライムがした同じやり方だ。硬化で硬くなり、スライムの動きが緩慢になる。成功だ。たたメガネをなくした僕はコアを見つけることができない。さっきまでと同じ場所にあるはずと槍を何度も振り下ろす。硬化されたスライムの表面は硬くなっていてザクっと槍を刺すたびに音が鳴る。しっかり振り下ろさないとスライムの表面だけ削って終わってしまう。
「ルック、リノのメガネに付与された硬化を解いて」
リュネからそう言われたので、振り向くとリノがリュネに介抱されながら起きあがろうとしていた。付与の硬化のせいで関節が曲がりにくいのだろう両手両足の動きがぎこちない。
「わかった」
僕はスライムの様子を確認しつつ探知の付与をリノのメガネに重ねがけしていく。3つ目で付与が消えた感覚が訪れた。
「お? 動くぞ。イタタッ。全身が痛え」
リノがよっこいしょと立ち上がる。そしてしっかりした足取りで僕の隣までやってきて、、、そのまま僕に当たる。
「あ、そうか。ごめんこめん。付与魔法・視力強化」
付与が全部消えてたからリノは極度の近眼のままだった。
「よし、これでバッチリ見える。どれどれ〜、これがコアか・・・おりゃあああ!!!」
リノが勢いよく棍棒を振り下ろし、コアを叩き潰した。コアが消滅すると宝箱が3つ並んで現れる。そしてその奥に帰りのためだろう魔法陣も。
「ふぅ〜。よかった。クリアできたんだ」
左から順に僕、リノ、リュネの宝箱の前に立つ。特に話し合ったわけでなく自然とそうなった。
「これって普通の宝箱より中身が凄いんだよな!?」
「そうね。初心者ダンジョンの報酬は高価なもの、珍しいものが多いわ。武器防具、アイテム、スキルブックに珍しいのだと使い魔やその卵ってのもあるかしら」
リノの質問にリュネが答える。リュネの言うとおり、初心者ダンジョンのクリア報酬として現れる宝箱の中身は他では手に入らない役立つものばかりだ。しかも1回しか貰えないから凄くレアだ。冒険者にならないのに初心者ダンジョンをクリアしてこの報酬を手に入れようとする人も多い。この報酬を売って、一生、楽に暮らしてる人もいるそうだ。
「じゃあ空けるぞー!!」
リノは言うなり宝箱を豪快に開ける。僕とリュネは、ゆっくりと開けた。僕の宝箱の中身は、、、メガネだ!
水色のフチのメガネ。今かけているメガネを外して、このメガネをかけてみる。
「視力強化を付与しなくてもちゃんと見える!!」
やった! 本物のメガネだ。
「私のは本。・・・これ、魔法大全だわ」
魔法大全。さまざまな魔法が載っている本。読めば技や呪文を一瞬で覚えれるスキルブックと違い、魔法を覚えれるわけではないけど、魔法の知識はあればあるほどいいし、知識があれば使えるようになる可能性もある。複数の属性を使えるリュネに合った報酬だ。
そういえばリノが大人しい。リノの方を見ると、手にボール?が握られていた。
「リノ、それが報酬?」
「ボール1個、、、あたしはスライムにやられたから、これっぽちしか貰えなかったんだ、、、」
涙声のリノ。
「そんなわけないでしょ。きっと凄い効果があるはずよ。帰ったらファルじいさんに鑑定してもらいましょ」
「ファルじいさんって鑑定できるの?」
「物品鑑定のスキルは持ってるわよ。それに解析も得意だし。多分これも何かわかるはずよ」
「へぇ〜」
ファルじいさんってそんなことも出来るんだ。凄いな。
「ルックのおかげよ。視力が戻ったから、鍛冶も含めてまた出来るようになったのよ」
「ぼ、ぼく?」
「そうよ。本人は元気なふりして誤魔化してたけど、目が悪くなってからずっと落ち込んでいたもの。それをあなたの付与魔法が救ってくれたのよ」
「ルックは、すごいもんな! あたしもこのゴーグルがあったから思いっきりぶん殴ったり出来るようになった!!」
「そうね、私もルックの付与魔法がなかったら、まともに魔法も放てない魔法使いだったわ。ありがとう」
リノを励ましてたはずが、なんだか僕が感謝される流れになっていた。照れくさいけど、僕の付与魔法が人の役に立ってるのは嬉しい
「リノの機嫌も治ったし、帰ろうか」
こうして僕たちの最初の冒険は終わりを告げだ。




