第5話「カラオケで親交度UP大作戦(後編)」
「あう〜・・・」
ヤバイ、マジで眠い・・・・
「おいミィ、寝るな。さっさとカウンターに戻れ!!」
あ〜社長が帰って来た・・・
「ったく、俺が部屋にジュース持って行ってやったら信良の奴、知らん顔しながら“さっさと帰れ”だとよ。腹立つな〜」
社長はお怒り気味のご様子。
最近の社長は愚痴ばっかり。
この間だって、“国語って普通毎日あるだろ”とかずーっと言ってたし。
こっちだっていろいろ愚痴りたいっつーの!!
「それよりミィ、さっさとカウンターに戻れ」
「・・・はぁ」
仕方ない、カウンターに戻るか。
ウィーン!!
店の入口の自動ドアが開き、客が入って来た。
「いらっしゃいませ〜・・・」
ヤバ、眠すぎて語尾がかすれた。
「あの、今日は五人何ですけど・・・」
う〜・・・客は五人・・・
「はい、当店の会員カードか何か持ってますか」
すると、五人の客は何やらこそこそと小話を開始。
「あの〜・・・」
数秒後、客の中の一人、中年のおばちゃんが懐から何かを取り出した。
スッ・・・
「動かないで」
小声で話し掛けてくるおばちゃん、その手元には一本の小刀。
は!?
「いい?今すぐここの客と店員をここに集めて」
何ぶっこいてんだこのババァ!?
「は?何?あんたら・・・」
その時、おばちゃんが一瞬の内にカウンターを乗り越え、私の首もとに小刀を突き付ける。
「いいから従え!!」
おばちゃん絶叫、そして残りの四人が一斉にポケットから黒い何かを取り出した。
ん・・・なんだっけアレ?何かで見たことあるような・・・確かテレビで・・・・・
「うごくなぁ〜」
パァン!!
うわっ!!客の中の一人、細っちい髭づら男が黒い何かから何か撃った!!
撃った何かは天井を直撃して、穴があいた・・・
微かに火薬の臭い。
あ、思い出した!あれ、確か拳銃ってやつだ!!
「動くなよ〜!」
細っちい髭づら男がニヤリと笑う。キモッ!
「キャァ〜!!」
たまたま近くにいた他の客の一人が叫んだ。
「♪日だまりに照らされ輝き続ける僕らの命♪」
現在、秀勝が熱唱中。
次はいよいよ俺の番!
あの有名なラブソングで真理子さんを絶対に落とすぜ!!
「ねぇ信良、何か焦げ臭くない?」
最初に異変に気付いたのは千姫。
「ん?そうか?」
くんくん、ん?何の臭いもしないが・・・
「う〜ん・・・なんか花火の臭いがする」
「花火?・・・もしやあの半獣どもが何かしたんじゃ・・・」
「ん?どうしたの?」
「あ、いや、何でもない。ちょ、ちょっとトイレに行ってくるわ」
「いってら〜!」
秀勝の歌がサビに入った!!早く行ってこないと俺の番が飛ばされる!!
「じゃ」
俺はいそいそと立ち上がり、部屋を出る。
「んのヤロー、また何かしたのか?」
数歩歩いて俺は気が付いた。
・・・カウンターの方から悲鳴が聞こえるんですけど。
よ〜く耳を澄ませてみよう。
「キャー誰か、誰か」
「助けて〜!!」
「ど、ドアが開かない・・・」
「止めて、撃たないで・・・」
「動くなぁ〜!!」
パァン!!
『キャー!!』
・・・何か、凄く嫌な予感がするんですけど。
火薬臭いんですけど。
・・・悲鳴がすごいんですけど。
「・・・部屋、帰るか・・・」
回れ右してUターン。
その時!
カチャっ!!
「動くな」
「ほへっ!!」
後頭部に何やら冷たい感触あり。
「振り返るな。両手を上げてカウンターへ行け」
・・・これ、ヤバイパターンかな?
「早くしろ。抵抗するなら撃つぞ」
「あ〜・・・ハイ」
これは完璧にヤバイパターンだね。
下手したら頭が吹っ飛ぶパターンだ。
「ほら、歩け」
・・・どうしよ
俺、川口信良は考える
よくテレビや新聞で目にする銃乱射事件や立て篭もり事件などは、俺とは一切関係ない所で起こっているものだ、と、今までは考えていた。
そんな非日常的なものは俺の脳内にはなく、いざという時のシュミレーションなど頭にはこれっぽっちもなかった。
しかし今、俺はその事をとても後悔している。
もし、俺がテロ対策で少林寺拳法や空手を習得していたならば、きっと状況はこれほどまでには行かなかっただろう。
これほどまでには・・・・・
「いいから早く詰めろ!!」
犯人グループ五人の一人が銃を俺に向けながら叫んだ。
最悪だよ・・・
俺はしみじみそう思う。
・・・今の状況を簡単に説明しよう。
カウンターではミィがだるそうに袋に金を詰めている。
ミィの首もとにはおばさんが持っている小刀。
そして、他の客は全員アイマスク、口にはガムテ、両手は後ろで縛られ中。
で、何故か俺だけはアイマスク、ガムテ無し。
しかし・・・ロビーのど真ん中で俯せ状態、しかも後頭部には拳銃。
アカンやろ、これ。
「いいか店員、テメェがちょっとでも反抗したら、コイツの頭が飛ぶぜ」
拳銃がぐいっと後頭部に押し付けられる。
「・・・別にソイツならいいし・・・」
ボソッと呟くミィ・・・っつーか何言ってんのこの猫!?
「・・・え?いいの」
は、犯人さん、ニヤニヤしないで・・・マジ怖い・・・。
「いいわよ別に。好きなだけ撃てば?」
ギャ〜!!犯人さんを煽らないでぇ!!
「・・・え、マジでいいの?本当に撃っちゃいますよ俺!?」
「どうぞ御自由に」
アカ〜ン!!
「・・・・・」
カチ!!
な、何!?今の音!
まさか・・・安全装置ってやつ、解除した!?
「へへ、いくぜ」
・・・アカン、俺死んだなコレ。
「うりゃ!!」
さようならみんな・・・・・・父さん母さん、悪いけど、先に天国に行ってるわ。
そして真理子さん・・・俺、ずっと君の事、愛しているから・・・
パァン!!
ヒュウ・・・!!
ズサッ!!
カキ〜ン!!!
スッ!!
「なっ・・・!!」
ズシャっ!!
「・・・ん?」
な、何だ、今の効果音の嵐は・・・
あれ、つーか俺、生きてる!?
「起きろ信良」
この声・・・もしや
俺は0.01秒で起き上がり、その場で振り返る。
そこには・・・見覚えのある烏と猫がいた。
「なっ・・・」
俺、絶句。
二匹の足元には、犯人のおばさんと、俺に銃を突き付けていた細身の髭づら男が俯せで倒れている。
「あんたらが・・・倒したのか?」
俺は恐る恐る質問。
「ああ。俺らが倒した。ま、他の客が全員アイマスクしてたから変化出来たが、もしアイマスクをしていなかったら・・・今頃お前は・・・」
「恐ろしい事小声で言うな!!」
他の客は皆、動きが止まっている。
恐らく気絶でもしてんのかな?
「なぁ、信良」
「あ?」
「お前の友達、この捕まっている奴らの中にいるか?」
「え?」
・・・あ、いない!!
「・・・いない!!」
「本当か!?・・・コレはまずい事になった」
「え?何で・・・」
「・・・初め、ここに来た時、犯人は五人いた。だが今は・・・」
ブラックが伸びている二人をちらっと見た。
「え?じゃあ他の三人は・・・」
「・・・恐らく、まだ個室にいる客の所へ・・・」
「・・・っ!!」
ま、真理子さんが危ない!!
「・・・しかも、さらにまずいのは・・・」
「ま、まずいのは?」
ブラックは腕を組んだ。
「この二人は人間だが・・・残りの三人は多分、半獣だ」
「は、半獣!?」
それ、やばくない!?
「さっき監視カメラで確認したんだが・・・三人には尻尾らしき物が」
「・・・・・」
俺、絶句。
「仕方ない、おいミィ!!」
「ん?」
「事務所へ連絡、フコンとポチ太郎をこっちに呼んでくれ。山田にはこっちからカメラの映像を送るから、解析を頼んでくれ」
「分かった」
ミィはポケットから携帯を取り出し、電話を掛けた。
「よし、じゃあ信良、俺らは先に寄居救出にでも行くか」
「は!?」
何言ってんだ!?
「ほら、かっこよく寄居を助ければ、モテるぞ」
「今、そう言う問題じゃないだろ!つーか人間が半獣に勝てるか普通!?」
「バカヤロー、せっかくのチャンスなんだ。いいとこ見せなくてどうする」
「無理でしょ!!」
さすがに今はコメディーパートじゃねぇよ、シリアス的なバトルパートだろこの状況は!!
「大丈夫だよ。多分」
「多分ん!?」
「ほら、行くぞ」
「え、マジで行くの!?え〜!!」
ヤバイんじゃない?この状況!?
今回はちょっと内容や設定をはしょり過ぎちゃった気が・・・。
何かよく分からない事があったらどんどん質問して来ちゃって下さい。ちゃんと答えますから。
次回、事件の全貌が明らかに!!