第2話「国語の教科書貸してあげる作戦」
ピピピっピピピっピピピっピピピ!!!
あ・・・これは・・・目覚まし時計の音・・・
もう朝か・・・今日も寒ぃ〜
よし、あと5分だけ寝よう。寒くて布団から出たくない。
ピピピっピピピっピピピっピピピっ!!!
とりあえず目覚まし止めるか・・・
カチっ!
アラーム止まった。さあ寝よう・・・って今日学校じゃん。
やっぱ起きようかな・・・どうしようかな・・・寒いなぁ・・・。
もう1月だし・・・寒気のバカヤロー。
カアカァ!カァァ!!
あれ、目覚まし止めてなかったっけ?
布団から手だけを出し、時計を探る。あった。
カチっ!
これでよし。
カァァ!カアァ!!
あれ、今確かにアラームのスイッチ押したハズなのに・・・ってカァ?
カァァァァァ!!
さっきまでの躊躇いを忘れ、ガバッと布団から飛び起きる。
目覚まし確認、アラームは止まってる。
カァァァァァァ!!
・・・何か外から聞こえる。
カーテンオープン。
「・・・え?」
窓の外にはでっかい烏が一匹。
「よお、起きたか」
・・・烏が日本語を喋った。
多分、これは夢だ。
「川口君、彼女の情報入ったぜ」
「あの・・・」
「さっさと下りてこいよ、みんな待ってるぜ!あ、山田はいないけどな」
あー・・・一気に眠気が覚めた。
これ、現実だ。
俺の家はアパートの2階。
とりあえずジャンパーを羽織って外へ。
寒い・・・
アパートの裏側・・・先程烏がいた場所へ行くと・・・
にゃ〜おん!!
ワンっ!!
コン!!
カァァ!!
みーんな動物の姿だ。
・・・昨日のアレは夢じゃなかったんだと改めて実感。
「やっと来たか・・・遅いぞ客!!」
ポチ太郎・・・やっぱりパピヨンだ。小さいな。
「ポチ太郎声でかい。近所迷惑だ」
ブラック・・・あんたも十分声でけぇぞ。
「社長、ここであんまり日本語喋ると・・・周りの人に半獣だとバレます。一旦、相談所に戻りましょう」
フコン・・・キタキツネかな?ごもっともな判断
「え〜!せっかく来たのにもう帰るの?」
ミィ・・・お前の目的は何なんだ。
「・・・帰れお前ら」
本音が漏れる。
「んだよ、人がせっかく情報持ってきてやったのによ」
あんたは人じゃない、烏だろ。
「ま、いーや。とりあえず今は一つだけ教えて帰るか」
「何が一つだ?」
「んなの決まってんだろ、寄居真理子の情報だよ」
「えっ!!」
な、何を言ってるんだこの烏!?
「じゃ、今から教えるぞ・・・寄居ってやつ、今日国語の教科書忘れて学校に行った」
「は!?」
な、何を言ってるんだこの烏!
「だから、国語の教科書を寄居は忘れたんだよ」
・・・つまり?
「・・・お前、今日国語の時間に教科書見せてやれよ」
「はっ!?」
「はっ!?じゃねーよ、お前と寄居が隣の席だって事分かってんだよ」
「何故知ってる!?てか、今日・・・」
「いいから、お前まで教科書忘れるなよ」
「今日・・・元々国語ない」
「・・・・・」
烏がフリーズ
「確かに教科書見せてやるって事自体、話のきっかけを作る事は出来るけど、それだけだろ?」
「あ・・・あっそう。じゃ、帰る」
烏はお空に飛んでいきましたとさ。
「・・・・・」
何しに来たんだ?あの烏は。
「おい客!」
「・・・信良だ」
「じゃ信良、おいらも帰るから。DSやりたいし」
「あっそう・・・」
・・・パピヨン来た意味ねぇ〜・・・
「・・・で、お前らも帰るのか?」
目の前にいる猫と狐はさっきから黙ったまま。
「・・・どうした?」
何か・・・震えているように見えるが・・・
「お邪魔するわよ」
「は!?」
次の瞬間、猫と狐は一気に走り出し、俺の横をすり抜け、アパートの外階段を登り、ウチの前まで行くとポンッと人間の姿に変化、この間わずか3秒。
そして・・・
ガチャ!
家の中に入っていきました。
「・・・は?」
フリーズor俺
約5秒後、理解完了。
「何しとんじゃ〜!」
俺も家へダッシュ!!
俺の家族は両親に弟(小六)と妹(小五)の五人家族。
アパートの部屋はキッチンやトイレ等を除いて3部屋。
両親の部屋、妹の部屋、俺+弟の部屋(兼居間)。
悲しいでしょ?中三で今だに自分だけの部屋がないんだよ?
「・・・おい」
居間。
いつもあるテーブルは隅に立てており、布団が二枚、そのうち片方ではまだ弟が熟睡中。
しかし、その隣の俺の布団には今、猫と狐が潜っている。
「・・・おい!」
あまり大きな声を出しては弟が起きる。
声は小さめ・・・
「・・・・・」
強行手段に出よう。
布団の裾を両手で掴み、一気に引っ張る。
えいっ!!
スッ!!
「っ!!」
布団をめくり取るとそこには二匹の獣。
「何してんだよ」
今この家にはMyFamilyがいるんだぞ!
「だって・・・さ、寒いんだもん・・・」
あ?
「知らないの?猫は寒さに弱いの!!」
知るかっ!!
「猫はこたつで丸くなりたいの!!」
こたつじゃねーよ、それ布団!!
「・・・・・・・」
猫は生意気、狐は無言、面倒臭ぇ〜!!!
つーかなんで狐のフコンまでここにいるんだよ!
「・・・帰れ」
「寒いの嫌!!」
「・・・帰りなさい」
「嫌」
「・・・帰りんしゃい」
「あー暖かい」
「・・・帰って下さい」
「ふぁ〜眠い」
「・・・・・」
はい、強制退場のお時間です。
まずは右手で猫を掴み・・・
「うわっちょっ!!」
左手て狐を確保
「うっ・・・」
そして玄関へ直行、器用に足でドアを開け・・・
「お帰りはこちら」
ポイッ!!
「あ〜!!」
猫と狐は見事に着地。
「じゃ」
ガチャン!ドア閉めた
ガチャ!!カギ閉めた
「・・・レッツ、二度寝タイ〜ム!!」
学校遅刻してもいいや
はい、学校遅刻。
学校に登校したのは2時間目の授業中。
「川口、後で職員室」
担任に怒られる事間違いなし。
「眠い」
二度寝したのにまだ眠い俺。
いつも通りに窓際の前から二番目、自分の席に着く。
「・・・・・」
無言で席に着く。
そして、隣には・・・
はいども〜!!
私ミィ、ここからの語りは私がやります!!
で、今私は松山中学校の桜の木の下にいます!
え?何でかって?
そりゃ、もちろんアイツ―――信良の観察のため。
ちょうどこの桜の木の枝に登ると三年三組がまる見え、しかも信良は窓際の列だからさらに観察しやすい!!
ひょいっ!!
見事、桜の木登頂完了!!!
「さ〜て、信良は?」
う〜ん、カーテンが閉まってて確認出来ない・・・・・
「あ〜あ・・・」
つまんない。
「仕方ない、今日は撤退するかな・・・」
「もう少しねばれ」
「にゃ!?」
どこからか声が・・・
「上」
「ん?・・・ってうわ、社長!!」
そこにいたのはウチの社長。
もちろん烏の状態。
「何してんの社長?」
「信良観察」
「あ、私と一緒だ!」
「そうなのか・・・で、何か信良に変化は?」
「それがね、カーテンが閉まってて観察出来ないの!」
「・・・・・」
「全く、冬なのにカーテン閉めるってどんだけよ!!」
「・・・・・」
「あ〜あ・・・まだ私、寄居って子見たことないんだよねぇ〜。見たかったなぁ〜」
「・・・おいミィ」
「ん?」
「前見ろ」
「前?」
私は前を向いた。
そこに見えるのは松山中三年三組の教室、もちろんカーテン閉めき・・・ってえ!?
「あ・・・」
あ!カーテンが一カ所開いている!!・・・しかもそこから信良がこっち見てる・・・
「帰れ」
と、言ってるんだと思う。口がぱくぱく動いてる・・・。
「・・・一旦帰るか」
「・・・はい」
「どうした川口?」
教師が俺にそう言ってきた。
「いや、なんでもないです」
そう言って俺は前を向く。
・・・今、あっちの桜の木に見たことある猫と烏がいたような・・・
きっと気のせいだ。
なんなら、見なかった事にしよう。
「何してんだよ」
「ん?」
前の席の男子がこっちに向いてくる。
「なんでもない」
何事も穏便にいこう。
その日の昼休み。
いつも通り給食を食べ終え、いつも通り机に伏せて昼寝。
あ〜・・・
眠い・・・
「おい、そこの寝てる子!」
「ん!?
どこからか昼寝を邪魔する声が。
「明後日暇?」
「・・・なんだ、お前かよ」
今、俺に話し掛けてきたこの男子は深谷。
深谷秀勝、俺の数少ない友人の一人だ。
「で、信良明後日暇?」
「・・・一応暇」
「じゃあさ、カラオケ行かねぇか?」
「はぁ!?」
この受験勉強シーズンにカラオケ!?
「ほら、もう俺ら中学卒業したら別々の高校じゃん、ならさ、勉強の息抜き&思い出作りと言う事でさ、どう?」
・・・断る理由なし
「ああ、いいよ。で、他のメンバーは?」
「えーっと、男子は俺、お前、幸也、孝明で、女子は新座に越生。女子の方が少ないから、あと一人二人誘おうかと」
はい、俺の人物紹介コーナー!!
超簡単に紹介します!
深谷秀勝
マイベストフレンド
日高幸也
体育系イケメンボーイ
草加孝明
インテリ君
新座葵
あんまり親しくない
越生千姫
ぶっちゃけ幼なじみ
「・・・でさ、結局あと誰誘うの?」
「どうしようかな・・・・・寄居でも誘う?」
ドッキューン!!
い、今コイツ何て・・・
「別にいいよな?」
「あ、ああ」
いかん、声がかすれた
「じぁ、聞いてくる」
そう言って秀勝は教室の後ろで友達と話をしている寄居さんの元へ・・・
つーかこの展開、奇跡だ!!
俺はこの時、まだ知らなかった。
教室の後ろにある水槽の中、クラスで飼っているグッピーに混じって一匹、クリオネがいた事を。
そして、そのクリオネが今の話を聞いていた事を・・・
「社長に報告しなくちゃ!!」
もう気付いている人はいると思いますが、作中の登場人物(人間)の名字は全て埼玉県の市町村から取っていたりしています。
以上、どうでもいい話でした。