星屑の咆哮 15
姿見の前で、ひとりの男が身なりを整えていた。
夏の星空を連想させる深い青の羽織は、この日のために献上されたもので、とても美しい刺繍が施されている。
「星辰、準備はできたかい? もうみんな揃ってるよ」
「今行くよ」
男に返事をして、星辰は姿見に布をかける。
戸を引くと、緊張した面持ちの男が必死に呼吸を整えていた。
「おれより緊張してるじゃん」
「星辰が落ち着きすぎなんだよ……ようやく三つの村がひとつになったんだ。今日から里長になる気分はどう?」
「全然実感が湧かない」
兄の少し意地悪な質問に、星辰は落ち着いた表情のまま首を横に振る。
星辰はキサナから力を与えられた唯一の人間として、常に民を護り、常に民から敬意を払われる生き方をするために、仲間と共に奔走し続けていた。
手始めに、山を下りたその足で、星辰は仲間と共に、三人の長老への挨拶に向かった。
織の譲位はスムーズに行われたものの、天狼と鼓の説得には時間がかかった。
正直なところ、このふたりが星辰への協力を渋るのは想定内だったが、仲間たちが説得に尽力してくれたおかげで、星辰はどうにかふたりの長老を譲位させるまでに至った。
その後は三つの村を隔てる森を整地し、それぞれの村に舞い込む魔物や動物絡みの厄介ごとの処理をすることで、新たな里長とその従者として、信頼を獲得していった。
そうして瞬く間に魔猪との戦いから三年が経ち、星辰は新たな里の長として、今日を迎える。
兄と並んで星辰が玄関を出ると、待ちくたびれた表情の仲間たちが星辰を出迎える。
「おせーぞバカ」
「里長になんて口の利き方してんだ」
「おはようございます!」
「準備は済んだか?」
白に染まってしまった星辰の髪と、赤みがかった仲間たちの髪は、少し冷たい風に吹かれて穏やかになびく。温かな日差しが降り注ぐ、気持ちのいい朝だ。
「おはよう、お待たせみんな。行こうか」
星辰は仲間の顔を見ながら、桜の木に視線を移す。
花を咲かせる季節は過ぎて、緑の葉っぱだけになってしまった桜の木は、風の名残か、微かに揺れている。
桜の木に背中を預けている少し白のかかった赤髪の男を見つけた星辰は、彼を驚かしてしまわないように、優しく肩に触れてから、顔を覗き込む。
完結です!!
この作品、二週間でゼロから作って提出した物なので、かなり読みにくくなってしまっていますが、最後まで読んでいただいてありがとうございます!
今は時間をかけてゆっくり別のものを作っているので、何時になるかはわかりませんが、また時期が来たら流れは変えずに、読みやすくなるように書き直そうと思っていますので、その際は是非^^
それとこの物語は派生作品なので、本編もゆっくり再構築して書き直していますので、そちらもよろしくお願いします!
いつ投稿開始できるかわかりませんが!笑




