表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧(あお)のスカラベオ 僕は世界を呪ってない!  作者: 霞ヶ浦巡
第3章 碧いスカラベオと遺跡の秘密
65/117

スサインとの会話①

 その声は、耳ではなく直接脳裏に響いた。聞こえているのに聞こえてはいない。奇妙な感覚だった。

「あなたは、そこにいる(スフィア)ですか?」

「そう考えればよい。その方は、我のことを知らず、サナザーラに聞いてもおらぬまま、ここに来たのか?」

 サナザーラの言っていることからすれば、ここは覚醒した者が来る場所のはずだ。覚醒した死霊術師(ネクロマンサー)なら、この人、いや、この(スフィア)のことを知っていて当然なのだろう。

「あ、はい。僕はまだ覚醒していません。覚醒したら思い出すかもしれません。サナザーラには、遺跡(ルーインズ)、いえ大聖堂(カテドラル)に入って良いとは言われましたが、ここに来ることは話さずに来ました」

 勝手に入ったので、ダリオはどうにもばつが悪かった。

「待ち人……か」

「待ち人?」

 この(スフィア)が、ダリオを待っていたということだろうか。

「まあ良い。この部屋まで来られたのなら良いのだ」

 どうやら、咎められることはなさそうだ。話ができるなら、まずは名乗っておかなければならない。

「僕はダリオ、十三歳です。生まれは東部のキトカ村ですが、もう村自体がありません。白死病で僕以外全ての人が亡くなり、その後はウルリス……ポルターシュに育てられました。大聖堂(カテドラル)に来たのも、彼女に言われたからです」

 この人も、ウルリスと言っても分からなそうだ。

「そうか。我はスサイン。ここではない別の場所にいる。目の前の宝玉(オーブ)(スフィア)を映しているのだ」

「魔王スザインと呼ばれている人ですか?」

「そう呼ばれているらしいな」

 サナザーラにスサイン、吟遊詩で歌われるような伝説の人物に立て続けに出会っていることが奇妙に思えた。ただ、考えてみればダリオ自身も不死王の転生者らしい。

「あの、僕は不死王の転生者なのでしょうか?」

「分からぬ。覚醒しなければ、その者が誰の転生者なのかなど誰にも分からぬのだ……が、その可能性は高いだろう。覚醒前にも拘わらず、ここまで到達できるのだからな」

 やはり、この部屋まで来る途中に居たアンデッドは、(スフィア)を掲げ続けなければ襲ってくるものなのだろう。

 サナザーラが「今は会わせられぬ」と言っていた人物は、魔王スザインならぬ、目の前にある(スフィア)だけのスサインなのだろう。ダリオが問いを発しようとすると、逆に尋ねられた。

「何故に、ここまで来た?」

「ポルターシュは、僕が不死王の転生者だと言いました。あなたもその可能性が高いと言う。でも、僕は世界を呪いたいなんて思っていません。白死病もアンデッドも、人々を苦しめるものはなくなった方がいいと思ってます」

 そこまで話して言葉を切る。ここまではダリオの気持ちだ。スサインに告げるべき理由はここからだ。

「野山のアンデッドをいなくするための手がかりは持っていませんが、白死病の原因は分かったかもしれない。ポルターシュは、原因について誰かに話すつもりだったようです。あなたではないですか? だから、僕も分かったことを話し、どうしたら良いのか教えてもらおうと思ったのです」

「聞こうか、その原因とやらを」

 (スフィア)の輝きが、心持ち強くなったように感じた。ダリオは深呼吸をしてから話し始める

「ポルターシュは、白死病の原因にスカラベオが関係しているかもしれないと言っていました。そして、今白死病が発生しているチルベスの街で治療にあたっている人が、患者の耳から碧く光るスカラベオが出てきたように見えたと言っていました。その碧い光りは、治癒(ヒール)をかける時の光にも似ていたそうです。そして、その患者は、その後回復したようです。見かけたのはその一例だけですが、スカラベオが白死病の原因かもしれません。それと、腐肉を漁るスカラベオもいるそうです。置いてあった遺体の近くでもスカラベオを見つけました」

「遺体の近くにいた腐肉を漁るスカラベオというのは、恐らく関係無い」

 ダリオは唇を噛んだ。

「だが、患者の耳から出てきたスカラベオは興味深い。その患者、そしてスカラベオ、発見した時の状況を詳しく話しなさい」

 タイトナは、魔王スザインが学者のような人物だったと言っていた。スサインの話しぶりからは、確かに研究者のような感じがする。ダリオは、マナテアから聞いた話を、なるべく細かく伝えた。

「生命のない物体には魔力を込めることができる」

 それはダリオも知っている。

「ポルターシュも、薬草に治癒(ヒール)の魔法を込めていました」

「あれは我の弟子だ。魔力の付与を教えたのも我だ」

 当然初耳だったが、ダリオは肯くだけにしておいた。話の腰を折ってしまった。続きがあるはずだ。

「そして、物体に過剰な魔力を込めると、それが漏れ出すことがある。その時には、魔法を行使する時のような光が見えることがある。スカラベオの光は、それに近い現象かもしれぬ」

治癒(ヒール)の魔法が、スカラベオに吸われたということですか?」

「魔法ではなく、生命力そのものだろう。治癒(ヒール)の魔法は、対象に生命力を与えるものだ。そのスカラベオは、スカラベオに見えても本当はスカラベオではなく、生命力を吸い取るように作られた魔導具かもしれぬ。七日で回復に向かうということから考えれば、生命力を七日間にわたって吸い取るように作られた魔導具かもしれない」

「魔導具……」

 ダリオは、魔道具については、そう呼ばれる物があるという程度にしか聞いたことがない。やはりスサインは、魔王とも呼ばれるだけあって詳しいようだ。スサインに相談したことは正解だったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ