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碧(あお)のスカラベオ 僕は世界を呪ってない!  作者: 霞ヶ浦巡
第3章 碧いスカラベオと遺跡の秘密
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経過報告(ウェルタ視点)

「お呼びだと伺い参りました」

「立て」

 跪いていたウェルタは、身を起こして直立した。目の前にいるのはクフラだ。封鎖団の事務所にいたところを呼び出された。

「変わった動きはあるか?」

「監視の任を仰せつかった日の翌朝、旧市外に来ておりました。この聖転生(レアンカルナシオン)教会の近くに来ておりましたが、特に何かをしていた様子は確認できておりません」

 実際には見失っていたので、正確に確認できた訳ではない。しかし、ウェルタはこの監視で、地に落ちた評価を取り戻さなければならなかった。都合の悪いことは省略する。そもそも、子供相手とは言え、一人だけで完璧な監視などできるはずもないのだ。

「ただ、旧市外に向かう途中では、周囲を警戒している様子でした。道に不案内なことで、警戒しているように見えただけの可能性はございますが、やましいところがあるのかもしれません」

「そうか。他には怪しい様子は見られないか? 誰かと連絡をとっている様子はないか?」

 クフラの尋ね方が気になる。

「宿では、封鎖で街から出られなくなった吟遊詩人と仲良くなり、吟遊詩を聞いているようです。ただ、吟遊詩の内容を聞いているだけなので特に怪しいとは考えておりません」

 ウェルタが答えても、クフラは難しい顔をしていた。ウェルタは、クフラの命令を受けて動く立場だ。本来質問することを許される立場にはない。それでも、ウェルタよりも多くの情報を持つクフラが、懸念を持っているなら聞いておいた方が良い。

「クフラ様、懸念があるならお聞かせ下さい。監視に当たり配慮が必要な事項を知らぬままでは、見逃してしまうかもしれません」

 ウェルタは、失礼を咎められる可能性も考えていたが、クフラが気を悪くした様子はなかった。代わりに潜めた声で告げられる。

「具体的な懸念がある訳ではないのだ。ないのだが、少し怪しげでな」

 そう前置いて、クフラから尋ねられた。

「そなたはまだ見習いだが、聖騎士団が二つに分けられることは承知しておるな?」

「はい。我らと近衛聖騎士に分けられるかと存じます」

「そうだ。チルベスにもショール司祭の護衛として、彼らが来ている」

「ソバリオ様とトノ様ですね」

 クフラは肯いて、気になることを口にした。

「彼らが少し神経質になっている」

「ダリオにですか? 薬売りの行商人ですが……」

 ウェルタの答えに、クフラは言いにくそうに首を振った。

「そうではない」

 そのまま、無言で手招きされる。しかも、机の前ではなく、クフラの横、間近な位置までだ。余程内密にしておきたい情報を話してくれるようだった。

「彼らが気にしているのは、治療団のマナテア嬢だ」

「マナテア様を?!」

 驚いてあげた声を、クフラにたしなめられた。

「大きな声を出すな」

「申し訳ありません。しかし、なぜマナテア様を? 身を挺して白死病の治療に当たっているのに……」

「詳しくは知らぬ。だが、覚醒前であるにも関わらず、魔法の才がありすぎるからだろう。不死王配下の転生者だった場合、大きな脅威となるからな。白死病の治療に当たっていることも、逆に疑われる原因になっている可能性もある。不死王の配下なら、呪いである白死病に冒されることもないはずだ。恐れずに治療しているからこそ、疑われているのだろう」

「そんな……」

 そう口にしたものの、理屈としては理解できた。考えてみれば、ウェルタがダリオを疑った理由にも似ている。不死王に関係しているものを恐れない者は、不死王に近い者と疑われるのだ。

「あの少年は、このチルベスに入る前からマナテア嬢と接触があった。私が、監視を命じたのはそのためでもある。マナテア嬢との接触には気をつけよ」

 そう言われると、ウェルタは報告しなければならないことに気が付いた。ダリオをクフラに引き合わせた経緯にもマナテアが関係している。そのことを話すと、クフラは難しい顔をした。

「分かった。この件は、他の誰にも話してはならぬ。内密に監視を続けろ。監視任務を与えられていることを誰かに話したか?」

 ウェルタは記憶を掘り起こして答えた。

「近衛聖騎士のトノ様とロストル様には、特命の調査任務を与えられていることは話しましたが、監視任務だとは言っておりません」

「よろしい。それ以上話すな。見習いの身では、問われると厳しいだろう。当面、私への報告以外では、ここにも近づくな」

「了解しました!」

「患者が減ってきたとも聞いている。封鎖の先も見えてきた。我らの任はそれまででだ。油断するな」

 クフラとしても、マナテアに疑いの目を向けることは気分の良いものではないかもしれない。近衛聖騎士がどう考えていようとも、封鎖団としてそれに関わるのは封鎖が解除されるまでだ。早く封鎖が終わってほしいに違いない。

「はっ!」

 ウェルタは、右手を胸の前に置いて敬礼し、踵を返した。

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