殺人をしたい国
16歳の理尽な世界の殺戮の国の話
この世界は神という名のAIが創り上げた通り、16歳を境に分けられるようになった。
16歳以上の殺人犯、殺人依頼者、殺人教唆、自殺強要、イジメによる自殺誘導、詐欺による破産者の自殺結果など多岐にわたる殺人に該当したものは、その命をもって償わされ、死んだ者に命が譲渡されたことで存在はしなくなった。
世界の政治家や大統領も該当するが、マキュベリズムとして、それが自国を守る為の手段として仕方がないケースは逃れていた。
当然正当防衛などに該当する全てのものは今も生きている。
我々発明の国の解析では、世界中の人間の細胞がナノサイズのドローンに採取され、細胞の記憶を元にアカシックレコードのように約50年を記録繋ぎ合わせ、全ての事象を把握したのではないか?
その細胞を元に、特定の人物のみを抹殺、対象の人物の細胞を培養し細胞に記録されている記憶を復元したのではないか?
という結論で落ちついた。
巨大な透明の壁は国を分けているだけではなく、気候の変化もない。
さながら温室の中の国だ。
さて、今観察しているこの国は殺人の国で、殺人をしたいと思っている16歳以上のもの全てが移されている。
本人達も自分達がそういう理由で移動させられているのを自覚している為、周りの人間を信用することは出来なかった。
会話の必要性は皆無だった。
全員が快楽殺人願望の持ち主である。
コミュニティもコミュニケーションも相手の信頼上でしか成り立たない。
唯一他人を殺す仲間という意味では、ヤクザのようなグループができ、属さないものを狩るという殺戮が始まった。
そのうち狩るものがいなくなると、グループ内での殺し合いによる見世物が行われていった。
食料は果物だけはなるようになっている。
過去の文明は残されているが、人を殺したい願望を持つ国と分かっていると、いつ死ぬか、いつ奪われるか、分からないものに努力は出来ず、ただただ落ちている文明を使った殺し合いにしかならなかった。
16歳になったばかりの殺人願望持ちが、転送される。
転送というと聞こえは良いが、発明の国の解析では、国の中で細胞が培養され、記憶がコピーされて元の人間が消滅しているだけである。
殺人願望の国は人として終わっているものである。
それが故に出入り口があれば、国を出て殺戮を行うからである。
さながら、人という扱いより動物園の猿扱いである。
本能のままに殺人を行いたい動物を人と扱う事自体が間違いだったのかもしれないが。
新規の入国者は直ぐに囲まれる。
組織に属するか、殺されるか、犯されるかの三択しかない。
いずれにせよ、この国に発展はなく、管理されていない猿山は延々と殺戮が繰り返されるだけだった。